「群衆」と「群集」の違いとは?

18041801

先日「ぐんしゅう」という言葉を漢字に変換しようとした際、「群衆」と「群集」の二つの候補があるということに気が付きました。

両者の違いは何なのでしょう?

さっそく辞書で調べてみました。

ぐんしゅう[群衆](名)

たまたま一か所に居あわせた、大ぜいの人々。

「三省堂国語辞典 第七版」

ぐんしゅう[群集](名・自サ)

大ぜいの人があつまること。また、その人々。

ーしんり[群集心理](名)

〘心〙個人が、群集の中では興奮しやすく、他人の行動にひきずられやすくなる心理。

「三省堂国語辞典 第七版」

三国の語釈でキーワードになりそうなのは群衆の方にある「たまたま」という言葉でしょうか。

このとおりに考えると、火事見物の野次馬は「群衆」であっても、国会議事堂前に集まったデモ隊は「群衆」ではないということになります。

他の辞書はどうでしょう?

ぐんしゅう

一【群集】

㊀ーする(自サ)多くの人・動物が、一か所に集まること。また、その集まり。

㊁群衆。〔古くは「くんじゅ」〕

ーしんり【ー心理】

ふだんは理性の有る行動をする個人が群集の中に置かれると、他人の行動にひきずられて、一人の時には出来ないような過激な事をしやすくなる心理。

二【群衆】

一か所に群がり集まった人びと。

「新明解国語辞典 第七版」

新明解には三国にない「動物」というキーワードが出てきました。

このとおりに考えると、アザラシの群集はあくまでも「群集」であって「群衆」ではないということになります。

ここまでの情報を整理してみましょう。

群衆 群集
三国 偶然集まる
新明解 人・動物

 

全体としては「群衆」よりも「群集」の方が幅広い文脈で使えそうな感じ。

群衆 vs 群集というよりは、一定の条件を満たした群集を群衆と呼んでいる感じでしょうか。

ただ一点気になるのはどちらの辞書も「ぐんしゅうしんり」に「群集心理」という漢字を当てていること。

「群衆心理」という表記は間違いなのでしょうか?

念のため Google 検索でそれぞれのヒット数を調べてみました。

  • 群集心理 = 56,000件
  • 群衆心理 = 66,600件

?? 辞書に出ていない「群衆心理」の方が多くなってしまいました。

「群衆心理」という学術書もあるようです。

群衆心理 (講談社学術文庫)

実際の使用においては、そこまで厳密に「ぐんしゅうしんり=群集心理」と決まっている訳ではないのかもしれません。

簡単なように見えて、なかなか奥深い「群衆」と「群集」の使い分けです。

 
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