フィンランド語学習記 vol.714 − suuruudeltaan

きのう取り上げたノーベル文学賞に関するニュース記事にこんな一文が出てきました。

Kirjallisuuden Nobel-palkinto on suuruudeltaan noin miljoona euroa.

ノーベル文学賞の賞金は約100万ユーロである。

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文中の suuruudeltaan は「大きさ」を意味する名詞 suuruus の離格[-ltA]の形 suuruudelta に三人称の所有接尾辞[-Vn]が付いた形。

主格 suuruus
離格 suuruudelta
+三人称
所有接尾辞
suuruudeltaan

 

ここはなぜ離格の形になるのでしょう?

そしてなぜ所有接尾辞が付くのでしょう?

そんな疑問の答えを求めて『フィンランド語文法ハンドブック』をめくっていたら、この文法をずばり説明したページを見つけました。

人や物の特徴を表わすために出格や奪格を使う表現があります。代表的なのは外面的な特徴や性質などを述べる際に使われる奪格で、「〜の点からすれば」といった意味を表します。

Hän on luonteeltaan iloinen.
彼は性格(luonne)からすると朗らかだ(iloinen)。

ここでは luonne「性格」の奪格が「性格の点からすれば」といった意味を表します。例文にあるように所有接尾辞がつきます。

氏名、職業、学歴、年齢などを表現するときにも奪格が使われます。

Mies on oikealta nimeltään Timo.
その男の本当の名前(oikea nimi)はティモだ。

Äiti on ammatiltaan insinööri.
母は職業(ammatti)は技師(insinööri)である。

「フィンランド語文法ハンドブック」P.187

【注】奪格と離格は同じものを指しています。

冒頭の文をもう一度見てみましょう。

Kirjallisuuden Nobel-palkinto on suuruudeltaan noin miljoona euroa.

ノーベル文学賞の賞金は約100万ユーロである。

これはつまりノーベル文学賞というのは、大きさの点からすれば約100万ユーロであるという形の表現なんですね。

自分で作文するとしたら絶対に思いつかない形です。

フィンランド語には多くの格があり、一つの格の中にも多くの用法があります。

その学びの中で日本語や英語とは感覚が似ても似つかない文型に出会うことは語学の難しさであり、同時に面白さでもあると思います。

 

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