ことばの理解を深めるということ − enjoy の場合

昨日紹介した金出武雄先生の著書『独創はひらめかない ー「素人発想、玄人実行」の法則』より、もう一つ特に印象に残った箇所があったので紹介してみます。

ほめて伸ばすというのは、世界に共通する良薬だそうである。

アメリカ人のほめ上手には感心してしまう。例えば、テニスコーチが教えているのを見ていると、「おお、ナイスショット!」「ビューティフル」とすぐにほめる。横から見ていると、「あれがナイスショットかね」と思うのだが、平気で連発する。

彼らは、何事であれ、「Enjoy」とよく言う。この言葉は、日本語の「楽しむ」以上に、いいことも悪いことも全部をひっくるめた体験を「味わう」というような意味があるようだ。

P.165

「enjoy = いいことも悪いことも全部をひっくるめた体験を味わう」という解釈は、実際にその言葉が使われる世界に身を置いて初めて得られる洞察なのだと思います。

そのような点にまで踏み込んで、enjoy を記述している英和辞書はあるだろうか?と思い、手持ちの辞書とオンライン辞書をいくつか調べてみたものの、ほとんどの辞書は「enjoy = 楽しむ」というレベルの解説に留まっていました。

その中で『ウィズダム英和辞典』の語釈が、少し目を引きました。

日本語の「楽しむ」よりも意味の幅が広く、趣味(の道具)・仕事・時間・人生・人(との交際)・料理など幅広い目的語を取りうる

あることばを「知る」ということは、一義的な意味を知るだけでなく、そのことばが使われている世界(コンテクスト)を通して理解を深めていくということでもあります。

そうだとすれば、語学に終わりがないように、ことばを知るということにも明確な終わりはないと言えるでしょう。

自分がよく知っていると思っていた人(ことば)の意外な面を見つけるということは、日常においても語学においても案外よくあることなのかもしれません。

 

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