「予言」と「預言」の違いとは?

阿刀田高さんの『旧約聖書を知っていますか』という本を読んでいたら、次のような記述が目に止まりました。

こまかいことではあるけれど、聖書の世界では “預言者”と書き、けっして”予言者”とは書かない。易者のように未来に起きることを “予め言う者”ではなく、これは神の言葉を”預って言う者”なのだから……。つまり神の代言者である。やっていることは似ていても、本質がちがう。

阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』P.209

「よげんしゃ」という日本語には「予言者」と「預言者」という二通りの書き方があるんですね。

調べてみると国語辞書でもこの違いはきちんと説明されていました。

よげん[予言](名・他サ)

未来を予測して言う〈こと/ことば〉。

「ー者」

「三省堂国語辞典 第七版」

よげん[預言](名・他サ)

〘宗〙キリスト教などで、神の霊感に打たれた者が神託としてのべることば。

「ー者」

「三省堂国語辞典 第七版」

日本語にこのような書き分けがあるのなら、他の言語にも同様の書き分けがあるのでしょうか?

試しに「予言者、預言者」を Google 翻訳で英訳してみると、

予言者 → Prophet
預言者 → Prophet

どちらも同じ prophet になってしまいました。

さらに調べてみると予言者(予言する人)を意味する英単語には predictor, prognosticator などもあります。

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教などの預言者は prophet、単に未来を予言する人という意味ではもう少し幅広い単語を使えるということなのでしょう。

音が同じ日本語の「予言/預言」に比べればわかりやすいでしょうか。

 

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