字幕なしで映画を楽しむという語学の目標について

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語学の目標としてよく挙げられるのが「字幕なしで映画を楽しめるようになりたい」というもの。

個人的にはこの「字幕なしで映画」という目標はなかなか曲者だと感じています。率直に言って、ネイティブスピーカーと普通に日常会話ができるようになるという目標より、難易度は高いのではないでしょうか。

なぜそのようなことになるのか、少し考えてみました。

 

相手に合わせて話してくれないという問題

あなたがある言語を学習していて、その言語のネイティブスピーカーと1対1の会話をする場合、相手はこちらのペース・理解度に合わせてくれます。

時にはネイティブスピーカー自身がそのことを自覚していないこともあるのですが、壁に向かって話しているのではない限り、そこには必ず何らかの二者間調整が働いています。

そこであなたが話の内容を理解していなければ、表向きには理解しているようなそぶりを見せても、どこかで相手に伝わってしまうものです。

またそれが伝わっているのに、それを配慮せず相手が一方的に話し続けるということも普通はないでしょう。しかし映画の中の登場人物は、当然ながら観客と会話をしている訳ではないので、そのような二者間調整はいっさい働きません。

 

訛りとバリエーションの問題

もう一つの要因は、多くの映画で話されている言語の多くはいわゆる「標準語」ではないということです。

英語の例で考えてみても、多くのリスニング教材で使われている英語と映画の登場人物が話す英語はかなり異なります。

現在のTOEICテストではアメリカ英語だけではなく、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド英語も使われていますが、それでも映画の中で使われる生の英語と比べれば、ずいぶん標準的な英語と言えるでしょう。

昔、ニュージーランドの映画館でスコットランドの映画を観たとき、なんとそこでは字幕が使われていました。ニュージーランダーには、Scottish English は少々難易度が高いという訳です。

英語一つを取ってみても、それほどのバリエーションがあるのだということを、ノンネイティブの私たちも頭の片隅に置いておくべきでしょう。

 

そんな訳で、字幕なしで映画を楽しむというのはかなり高い目標なのだと思います。しかし、だからと言って諦めた方がよいなどと言うつもりはありません。

高い目標なんだということを自覚した上で、学習をすすめていけば必ず達成できるはずです。

ここで注意したいのは完璧主義になってはいけないということ。というのも映画の場合は、たとえ8割程度の理解でも十分に楽しむことができるからです。

(私の経験では『スター・ウォーズ』なら、英語は5割くらいの理解でも何とかなりました。)

好きな作品を原語で理解したいという目標は何より学習のモチベーションになりますし、ある程度学習を積み重ねたらぜひ積極的にチャレンジしていきましょう。