メラビアンの法則と外国語のコミュニケーション

最近書店に行くと、人の印象は見た目が9割を占めるというようなタイトルの本が増えているように思います。

この考え方は、アメリカの心理学者アルバート・メラビアンという人が提唱した「メラビアンの法則」と呼ばれる次のような研究結果に基づいています。

感情や態度について矛盾したメッセージが発せられたときの人の受けとめ方について、人の行動が他人にどのように影響を及ぼすかというと、話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合であった。この割合から「7-38-55のルール」とも言われる。「言語情報=Verbal」「聴覚情報=Vocal」「視覚情報=Visual」の頭文字を取って「3Vの法則」ともいわれている。

Wikipedia「メラビアンの法則」より

この法則は、もともと上記のように、言語・聴覚・視覚の情報が矛盾している状況(口では嬉しいと言いつつ、浮かない表情をするなど)においては、聴覚や視覚を重視するという内容なのですが、この文脈を離れてコミュニケーション一般に当てはめる例も多く見られます。

そのように拡大解釈されることが多い「7-38-55のルール」ですが、語学に取り組んでいる人にとっては、この法則が非常に納得できる文脈が一つあります。

それは電話での会話。

ある言語にかなり熟達し、対面での日常会話は問題ないという人でも、電話となるとどうも難しいと感じることが多いのではないでしょうか。

メラビアンの法則に照らし合わせてみると、電話の会話では、55%に当たる視覚情報が失われてしまいますので、難しいのも当然ということになるでしょう。

ここで言う視覚情報にはボディーランゲージもありますが、それ以上に相手の表情というのが大きいような気がします。

対面の会話では、お互いに相手の話を理解できていなければ、そのことが表情や雰囲気から自然に伝わります。その結果、無意識のうちにもう一度言い直したり、別の言い方を考えたり、自然な調整が働きます。

電話の会話ではこの調整が働きづらいので、どうしても会話に置いていかれることが多くなるのだと思います。

逆に電話で自信をもってコミュニケーションができることができるようになれば、その言語にかなり熟練したということになるのでしょう。