外国語の単語を効率的に覚える方法② − 語彙学習ストラテジー

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私たちが外国語の単語を学習するとき、意識的であれ、無意識的であれ、様々な方略(ストラテジー)を用いています。
例えば「ノートにひたすら書く」というのも立派な学習ストラテジーと言えるでしょう。
あるいは単語を10個覚えるごとに、ご褒美としてどら焼きを1つ食べるというのも立派な学習ストラテジーです。(ただし太ってしまいますので、生活ストラテジーとしてはよくないかもしれません。)
語彙指導の専門書 Vocabulary in Language Teaching を読んでいると、Vocabulary Learning Strategies(語彙学習ストラテジー)という小チャプターがあり、なるほどと思えるものから、それは当然と思えるものまで、多くのストラテジーが紹介されています。
一部にコメントを添えつつ、そのリストをシェアしてみたいと思います。
Strategies for discovering the meaning of a new word(新出単語の意味を見つけるためのストラテジー)
Determination Strategies(決定ストラテジー)
新出単語に出会ったときは、可能な範囲で意味を推測してみましょう。その気になれば意外に手がかりはあるものです。
(品詞を分析する)
(接辞と語幹を分析する)
(母語の中から同じ語源の単語を探す)
これは日本語を母語とする私たちには難しいですが、英語の母語話者がヨーロッパ系言語を学習するような状況では役に立つのかもしれませんね。
(手がかりとなる写真やジェスチャーを分析する)
(テキストの文脈から意味を推測する)
(辞書を使う)
Social Strategies(社会的ストラテジー)
言語は社会的コミュニケーションのための道具です。だとすれば、わからないことは周囲にどんどん聞いてしまいましょう。
(先生に新出単語の同意語、言い換え、訳を聞いてみる)
(クラスメイトに意味を聞いてみる)
Strategies for consolidating a word once it has been encountered(出会った単語の記憶を強化するためのストラテジー)
Social Strategies(社会的ストラテジー)
(グループで学び、練習する)
(ネイティブスピーカーと交流する)
Memory Strategies(記憶ストラテジー)
大人になってから外国語を学ぶ最大のメリットは、この世界や言語というものについて既に一定の知識を持っているということではないでしょうか。
単語を記憶する際には、それらの知識を最大限活用することができるはずです。
(単語を以前に起こった個人的な体験と結びつける)
文脈なしで覚えた単語の定着率はあまりよくないと感じています。一方、教室で習った単語の定着率がよいのはここで言う「個人的な体験」との結びつきがあるからなのかもしれません。
[参考]語学教室に通うメリットを改めて考えてみる | Fragments
いずれにせよ、単語を単語以外の何かと結びつけて覚えることは定着率向上の鍵だと思います。
(同位語と関連付ける)
white という単語を覚えるためには、他の色の名前(black, blue, red など)と合わせて覚えた方が効率的です。
(同意語や対義語と結びつける)
(意味マップを使う)
例えば、lullaby という単語を覚えたいとき、紙の中央に lullaby と書き、そこから線を引いて song, child, sleep など関連のありそうな単語をつなげていきます。実際のマップはこんなイメージです。これは自宅ではなく、教室で行うアクティビティだと思います。
(語形をイメージする)
(単語の意味をイメージする)
(キーワードメソッドを用いる)
キーワードメソッドについては昨日のエントリーで先行紹介していますので、そちらをご覧になってみてください。
[参考]外国語の単語を効率的に覚える方法① − Keyword Method | Fragments
(単語をグループ化して学習する)
テーマごとに単語をグループ化して覚えるのは有効だと感じています。このブログのフィンランド語学習記でも、テーマごとの単語をときどき取り上げています。
[参考]フィンランド語学習記 vol.53 − 衣類の名前 | Fragments
(単語のスペルを覚える)
(新出単語を声に出して学習する)
声を出すことは記憶を定着させるために重要な役割を果たしているようです。
[参考]外国語学習における音読の効用 | Fragments
(体の動きを使って単語を覚える)
Cognitive Strategies(認知ストラテジー)
単語を記憶する際には、脳内の作業だけではなく、反復やまとめノートの作成など外的な作業も欠かせません。
(口頭で繰り返す)
(書いて繰り返す)
(単語リストの作成)
(英語のラベルを対象物に貼ってみる)
以前、身の回りのものにどんどん付箋を貼って英語名を暗記しているという人に会ったことがあります。抽象的概念に付箋を貼るのは無理だとしても、身近なものの名前を覚えるにはよい方法なのかもしれないですね。
(単語ノートをつける)
Metacognitive Strategies(メタ認知ストラテジー)
外国語の学習が1日で終わるものでない限り、私たちは学習のプロセスを意識的に分析・評価し、より効果的な学習方法を模索していくことができるでしょう。
(英語のメディアを利用する)
この21世紀に外国語学習を行う最大のメリットは、インターネット上などにある膨大なリソースを利用することができるということだと思います。
ただしこれだけ情報が多くなると、信頼できるキュレーターを見つけ、情報を絞り込むためのリテラシーも欠かせません。
(空欄に単語を埋める練習をする)
(単語テストで知識の確認をする)
(新出単語を飛ばす)
多読・多聴では未知の単語を飛ばすというのも立派なストラテジーだと思います。完璧主義になってはいけません。
(長い期間、学習を継続する)
最後に王道の学習法が登場しました。これがストラテジーと呼べるのかどうかわかりませんが、この重要性を否定する人はいないでしょう。
継続こそ最高のストラテジーということで、本稿を締めくくりたいと思います。
Cambridge University Press
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