宮川幸久編著/山岸和夫・西世古柳平著『中学英語Q&A実用指導事典』

ゴールデンウィークに帰省した折、本棚を物色していると『中学英語Q&A実用指導事典』(教育出版)という本が出てきました。

その名の通り、中学生に英語を教える先生のためのQ&A集です。パラパラとめくっていたら、以前英語を教えていたときのことを思い出しました。

少し中身を紹介してみましょう。

英語はなぜつづりどおりに発音しないのか

Q 英語の勉強を始めて間もない中学1年生などは、haveを「ハベ」、someを「ソメ」などと発音してしまいます。英語ではなぜつづりと発音が一致しないのかを、わかりやすく説明するにはどうしたらよいでしょうか。

A つづりと発音のずれを説明するには英語の歴史をさかのぼるしかありません。そんな説明より、まず some, home, come などの基本語の発音をしっかり覚えさせることが大切です。

P.125

この突き放しっぷりが素晴らしいですね。しかし、これに続く解説では、きちんと英語史についての補足説明もありますので、ただ突き放している訳ではありません。

実際に英語を教えていると、クラスに1人くらいは言葉に非常に敏感な生徒がいて、鋭い質問を投げかけてくることがあります。

即答できないものは「次回の授業までに調べてくるね」と言って保留にする訳ですが、調べた結果妥当な答えが見つかっても、どこまで生徒に説明するかというのはなかなか難しい問題です。

本書はそういった先生の悩みに答えてくれる一冊と言えます。それからもう一つ気に入っているのが、こちらの質問と答え。

なぜ I だけが大文字か

Q 教室で生徒に「代名詞の中で、なぜ I だけがいつも大文字なんですか」と質問されました。いちおう、「小文字だとかっこう悪いからだ」と答えておきましたが、これでよいのでしょうか。

A そのとおりです。読みやすくするために、習慣上「私は」という代名詞の I はいつも大文字で書きます。

P.146

「かっこう悪いから」という理由は、何だかほほえましいですし、「そのとおりです」と言い切ってしまう著者のスタンスもまた素敵です。

なおこれに続く解説では、英語の一人称代名詞の歴史的変遷と大文字の I を使うようになった経緯についてもきちんと触れています。

この他に本書で扱っている質問の一部は下記のとおり。

  • 名詞の複数になぜ men などの例外があるのか
  • なぜ国や船などを she で受けるのか
  • 関係代名詞でなぜこんなに文を長くするのか
  • 最上級にはなぜ the が付くのか
  • must は過去形として用いられないか
  • 疑問文に do を使うのはなぜか
  • read の過去・過去分詞はなぜ[red]か
  • なぜ amn’t を使わないか

改めて聞かれてみると、なかなか答えが思い浮かばない質問が並んでいます。

初版が1986年とずいぶん古い本ではあるのですが、1テーマ1ページで非常に読みやすく、寝る前などにパラパラめくってみるのも面白い本だと思います。

 

中学英語Q&A実用指導事典
宮川 幸久 山岸 和夫 西世古 柳平
教育出版
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