フィンランド語学習記 vol.63 − 所有文のつくり方

フィンランド語教室26週目のレポート。

今回は所有文のつくり方を扱いました。

所有文とは「〜を持っている、飼っている」などの意味を表す文なのだとか。

これを聞いて、真っ先に連想したのはこんな文。

I have a car.
I have a cat.

英語の have に当たるものだろうから、きっと簡単に違いないと思ったのですが、フィンランド語の場合はそう簡単ではないようです。

以下にフィンランド語の所有文のつくり方を見ていきましょう。

 

所有文のつくり方

まずは実際の所有文を見てみましょう。

Minulla on kissa.(私は猫を飼っています。)
*kissa(猫)

冒頭の単語 minulla は、一人称単数の代名詞 minä が格変化した形。

[単数主格]minä(私は)
[単数接格]minulla(私の上に)

接格というのは、語尾に[-lla/llä]を付けて「〜の上に」という意味を表すフィンランド語の格変化の一つです。

すなわち上の文を逐語訳すると「私の上に猫がいます」となります。

この接格と「所有」という概念は一見すると結びつかないようにも思います。なぜこの形が「所有」の意味になるのでしょう?

これについて、先生は「私の手の上に◯◯がある→所有」というイメージで捉えてはどうかとおっしゃっていました。

自分という場所に、対象となる物があるというイメージなんですね。これは納得。

 

所有文の否定形

続いて、先ほどの文を否定形にしてみましょう。

Minulla on kissa.(私は猫を飼っています。)
Minulla ei ole kissaa.(私は猫を飼っていません。)

よく見ると、猫が分格の形(kissaa)になっています。

*分格の詳しい説明は、こちらをご覧ください。

[参考]フィンランド語学習記 vol.55 − 分格のつくり方 | Fragments

所有文の否定形では、「一つ、二つ」「一匹、二匹」と数えられる名詞は分格の形になるのだそうです。

いろいろと謎の多い分格がまた登場しました。

 

数えられるもの/数えられないもの

次の文章をご覧ください。

Minulla on vettä.(私は水を持っています。)
Minulla ei ole vettä.(私は水を持っていません。)

ここでは先ほどの猫の文と違い、水がどちらも分格の形(vettä)になっています。

[単数主格]vesi
[単数分格]vettä

さきほど所有文の否定形では、数えられる名詞は分格の形になると説明しましたが、水のように一つ、二つと数えられない名詞は、肯定文も否定文も分格の形になります

 

その他の慣用表現

これまでに見てきた所有文の形式を用いて、こんな表現もできるようです。

Minulla on nälkä.(私はお腹が空いています。)
Minulla on jano.(私はのどが渇いています。)
Minulla on kiire.(私は忙しい。)
*nälkä(空腹)、jano(のどの渇き)、kiire(忙しさ)

これらの文では、厳密には何かを所有している訳ではないのですが、所有文の形式を用いて、何らかの身体的な状況を表しています。

ここでは nälkä などの名詞は、肯定文も否定文も主格の形になります

 

まとめ

ここまでの内容をまとめてみましょう。

  • 所有文は、基本的に「接格+on+名詞」の組み合わせでつくる。
  • 所有対象の名詞の格は「肯定文/否定文」「数えられる/数えられない」の違いによって、下記のとおり決定。
肯定文 否定文
数えられる 主格 分格
数えられない 分格 分格
慣用表現 主格 主格

 
今回扱った所有文のつくり方は、英語の文法からは全く連想できないものであり、なかなか面白い領域だと思いました。

英語や日本語との共通点を見つけるのも楽しいですし、今回のように全く違うというのもまた楽しいものですね。

 

[注]所有者が接格以外の場合、動詞が on(olla)以外の場合、所有対象の名詞が複数の場合については、枝葉末節に入りすぎるため、今回のエントリーでは扱っていません。まずは幹となる部分から固めていきたいと思います。