『外国語上達法』読書ノート② − 目的と目標
『外国語上達法』読書ノートの第二回目です。
この連載では、岩波新書より出ている千野栄一先生の『外国語上達法』を読み、感じたこと、考えたことを一章ごとにまとめていきます。
目次はこちら。
1 | はじめに |
2 | 目的と目標(←本稿) |
3 | 必要なもの |
4 | 語彙 |
5 | 文法 |
6 | 学習書 |
7 | 教師 |
8 | 辞書 |
9 | 発音 |
10 | 会話 |
11 | レアリア |
12 | まとめ |
目的と目標 − なぜ学ぶのか、ゴールはどこか
私たちは物を買いにいくとき、何をどれだけ買うか、慎重に吟味する。たとえそれがどんなによい物であっても、必要としないものは買わないし、必要とするものであっても、必要以上にはそれを買わない。お金が無駄だからである。
P.18
ある外国語の学習を始めるとき、本来ならそこにはその言葉を学ぶ目的があるはずです。
しかし日本人の場合は、そういった自覚のないままに英語を始めているケースがほとんどではないでしょうか。
そして多くの人は、学生という身分を終えるとともに英語の学習も終了します。
あるいは社会人になった後も自分の意志で英語や他言語の学習に取り組んでいるのであれば、そこには何らかのビジョンがあるはずです。
もしもそれが明確でないのなら、なぜその言語が必要なのか、一旦立ち止まって考えてみる時間を設けてみてはどうでしょうか。外国語学習の長い道程を考えたとき、その時間は決して無駄にはならないはずです。
実務的な目的が思い浮かばない人は、その言語を習得した後の理想の自分を思い浮かべてみるとよいかもしれません。理想の自分になりたいという、それもまた立派な目的であるはずです。
そして外国語を学べば学ぶほど、骨身に沁みて分かってくるのは、外国語の学習に決して「完成」はないということ。
それだけに外国語を学ぶ人は、自分自身で目標を設定する必要に迫られます。
ネイティブスピーカーとすらすら話す必要があるのか、あるジャンルの文献が読めればよいのか、それによって英語に取り組む方法がまったく違ってくるのは当然のこと。
この目標設定が明確でないと、ネイティブスピーカーのように話すというようなハードルの高すぎる目標に向かって、終わりのない努力を続けることになりかねません。
外国語の学習はマラソンのような持久戦です。
そこでは自分自身を、世界記録に挑むアスリートではなく、サブ4などの自己目標を目指す市民ランナーと位置付けましょう。
世界記録は自分で設定できませんが、目標は自分で設定することができるのです。
私もこの機会にフィンランド語を学習する目的と目標を改めて考えてみました。
目的
- 新しい外国語の学習を通して、外国語習得のプロセスを学び、文章化すること。
- フィンランドの人々の文化や暮らしを知り、新しい友人と出会うこと。
目標
- フィンランドの映画や文学を、フィンランド語のまま理解できるようになること。
- カタコトでもよいので、フィンランドの人とフィンランド語でコミュニケーションができるようになること。
もちろんこの目的や目標は、学習を続ける過程で変わってしまうこともあるでしょう。
しかしそれはそれでよいのだと思います。
学習を続ける中で、新しい世界が開けてくるのなら、それもまた外国語学習の一つの成果と言えるのではないでしょうか。
本章のまとめ
外国語の学習をスタートさせる際に大切なのは、
- 学ぶ目的をはっきり決めること
- どのくらいのレベルまで学ぶのか、目標をはっきり決めること
当たり前のようでありながら、日本人の英語学習においては、この目的と目標が明確でないことが多いのではないでしょうか。
ここをはっきりさせない限り、その挑戦はゴールのないマラソンになってしまいます。
どこへ向かって走るのか、道に迷う前にまずはゴールの場所を確認しておきましょう。