『外国語上達法』読書ノート④ − 語彙
『外国語上達法』読書ノートの第四回目です。
この連載では、岩波新書より出ている千野栄一先生の『外国語上達法』を読み、感じたこと、考えたことを一章ごとにまとめていきます。
目次はこちら。
1 | はじめに |
2 | 目的と目標 |
3 | 必要なもの |
4 | 語彙(←本稿) |
5 | 文法 |
6 | 学習書 |
7 | 教師 |
8 | 辞書 |
9 | 発音 |
10 | 会話 |
11 | レアリア |
12 | まとめ |
語彙 − 覚えるべき千の単語とは
大人になってから、英語以外の外国語を学ぼうとした場合、もっとも大変なのは基本語彙の習得でないでしょうか。
こればかりはショートカットの方法があるはずもなく、地道にコツコツ覚えて行くしか方法はありません。
語彙の習得がうまくいかない理由は、この語彙の習得が面白くないことと、語の数が多く学習に一見終りがないように見えること、どのような語彙を選択するかの自覚がないことに起因している。
P.49
これは語学に取り組んだことがある人なら、誰しも思い当たる挫折の理由ではないでしょうか。
しかし逆に考えると、
2)目標を設定すること
3)語彙の選択基準を決めること
これらさえできれば、語彙の習得を軌道にのせることができるはずです。
本章では、このうち2と3についての明確な指針が与えられています。
「目標」は基本語彙の1,000語を固めること。
そして「語彙の選択基準」は使用頻度の高い単語を選ぶこと。
言語にもよりますが、使用頻度の高い基本語彙1,000語を覚えれば、その言語の60〜70%が理解でき、3,000語を覚えれば、90%が理解できるようになるそうです。
ただしこの1,000語や3,000語というのはうろ覚えではなく、いつでも取り出して使えるような状態でなければなりません。
英語のハードルは低い?
ここまでの内容を踏まえると、大人になってから英語を学ぶときのハードルは、他の言語に比べてかなり低いと言えるでしょう。
中学/高校時代にどんなに英語が嫌いだった人でも、犬を dog、本を book と言うことは知っているはずです。
一方、マレー語やベトナム語で犬や本を何と言うのか知っている人は少ないでしょう。
すなわち英語を学習の対象として選択した時点で、私たちは基本語彙1,000語のうち、かなりの割合をすでに知っていることになるのです。
ジャンルの広さと頻度数
それでは基本語彙1,000語を習得した後は、どうしたらよいのでしょうか。
本章では、新聞の語彙に関する先行研究を引用し、語彙をジャンルの広さと頻度数によって4つのカテゴリーに分類しています。
ジャンルの広さ | |||
広い | 狭い | ||
頻度数 | 高い | A | C |
低い | B | D |
B)広いジャンルの文章に登場し、使用頻度の低い語
C)狭いジャンルの文章に登場し、使用頻度の高い語
D)狭いジャンルの文章に登場し、使用頻度の低い語
こうしてみると、
D=必要なときに辞書を引けばよい単語
C=自分に必要なジャンルのみ覚えるべき単語
よって基本語彙1,000語(A)を習得した後は、様々なジャンルの文章を読んでいった方がよいということになるのでしょう。
覚えた単語を記録する
英語であれ、その他の言語であれ、語彙の学習で最後に立ちはだかってくるのは「モチベーションを維持するためにはどうしたらよいのか」という壁ではないでしょうか。
もちろん単語の学習は単調で退屈な作業であると割り切ってしまうこともできます。しかし楽しく学習できるならそれに越したことはありません。
この問題に対する私なりの回答は、覚えた単語を記録することです。
私の場合は、学習中のフィンランド語において、デジタルの単語カードを作成するため、これまでに学んだ単語をcsvファイルにまとめています。
ファイルを見ると現在の語数は約500。これを iPhone の単語カードアプリにアップロードして練習すると、500語のうち何語覚えているのかすぐに知ることができます。
これによって、これまでに覚えた語数と進歩が目に見えてわかるので、日々の学習のモチベーションを維持しやすくなります。
そして、秋頃には最初の目標である1,000語に達することができるだろうという目処を立てることもできるのです。
本章のまとめ
語彙習得のポイントは、使用頻度の高い基本語彙1,000語を楽しく覚えること。
一行ですっきりまとまりました。