フィンランド映画祭2013で『すべては愛のために』を観てきました。

photo credit: Daniele Zanni via photopin cc

昨日に続いてフィンランド映画祭2013のレポート。

フィンランド映画祭

[昨日のレポート]フィンランド映画祭2013で『ミス・ジーンズ・フィンランド』を観てきました。 | Fragments

土曜の『ミス・ジーンズ・フィンランド』に続き、日曜は『すべては愛のために』という映画を観てきました。

この日はもともと行く予定はなかったものの、土曜の夜の段階で空席照会をすると、5席ほどの残席が。

これは行くしかないだろう!ということで2日連続の出陣となりました。

土曜は一番後ろの席だったのですが、日曜は前から2列目。こんなに前で映画を見るのは、いつ以来だろう?という感じ。

映画の冒頭は、写真家の主人公がラップランドの原野の中で、白い無人のベンチの写真を撮っているシーン。

シュールな絵柄とともに、荒涼としたラップランドの風景が強く印象に残ります。

内容は『ミス・ジーンズ・フィンランド』とは異なり、シリアスな大人のドラマという感じでした。

あらすじは映画祭のホームページより。

すべては愛のために
原題:Kaikella Rakkaudella
英題:Things We Do For Love

トイヴォは、内気でロマンチックなカメラマンだが、風変わりな芸術的趣向があった。彼は、人里離れた自然の公園で、空のベンチの写真を撮っているのだ。ある日、車ごと川にはまり抜け出せなくなっていたところ、通りがかったイスモに助けられる。翌朝、トイヴォの目の前に、下品で手に負えない女性アンサが突然現れ、その強烈な雰囲気に圧倒されてしまう。イスモは、あることから服役し、4年ぶりに故郷に戻って生活をやり直そうとしたが、身を寄せる兄一家の居心地は決して良いものではなかった。そして、元妻アンサにまだ未練をもっているかのようだ。一方で、トイヴォはアンサのノルウェー行きのため、車を出し出発するのだった。複雑な事情を抱えた彼ら、そして、狂気と騒乱、美しさと幸福の先に見えるものとは…。

登場人物同士の関係がなかなか明示されないので、最初は物語の背景がよくわからないものの、話が進行するに従ってさまざまな疑問が氷解していきます。

ちょっとスティーブ・ブシェーミ風(?)の主役の役者さんがとてもいい味を出していました。

この映画を監督したマッティ・イヤスという人は、フィンランド国内ではアキ・カウリスマキなどと並ぶ大御所なのだとか。もっと他の映画も観てみたいものです。

冬のシーンではラップランドの雪景色がとても美しいのですが、それと合わせて厳しい環境に住む人間の狂気のようなものも描かれていきます。

実際、このような環境に暮らしていたら、いつのまにか精神的に行き詰まってしまうこともあるのでしょう。

そんな雪と氷と人間のやりきれなさを描いたこの作品。

全体のトーンは、コーエン兄弟の『ファーゴ』や、クリストファー・ノーランの『インソムニア』といった「雪」の映画に似ているところもあります。そういえば『インソムニア』はノルウェー映画のリメイクでした。

上記の映画が好きな人には、ぜひおすすめの一本です!(といっても、おそらく一般公開はされないのでしょうね。。。)