フィンランド語学習記 vol.107 −「A olla B」構文における補語の格変化
フィンランド語教室43週目のレポート。
今日から新しい単元に入ります。
その前に動詞 olla の使い方をもう一度確認しておきましょう。
olla にはさまざまな使い方がありますが、その一つは英語のbe動詞と同じく「A=B」と言いたいときの「=」の意味を表すというもの。
*tämä(この)、kissa(ネコ)、pieni(小さい)
on は動詞 olla の三人称単数形。その他の活用は次のとおり。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | olen | olemme |
二人称 | olet | olette |
三人称 | on | ovat |
少々不規則ですが、もっともよく使う動詞なので、そのまま覚えてしまうのが得策です。
さて、この動詞 olla を使って、今回の授業では次のような文を習いました。
Maito on valkoista.(牛乳は白い。)
*valkoinen(白い)、maito(牛乳)
上下の文は同じような構造を有していますが、よく見ると文末の形容詞の語形が微妙に異なっています。
[分格]valkoista
フィンランド語では「A olla B」の文形において、主語が数えられる名詞のときには補語は「主格」、数えられない名詞の時には「分格」になるとのこと。これは補語が形容詞であっても、名詞であっても同じです。
すなわち牛乳は液体なので、一つ二つと数えられないということなのでしょう。
このルールはなかなか複雑ですねー。アタマで理解することはできても、実際に使うときにはすっかり忘れてしまいそうです。
別の例も見てみましょう。
Kahvi on mustaa.(コーヒーは黒い。)
*musta(黒い)、kahvi(コーヒー)
[主格]musta
[分格]mustaa
ここではコーヒーが数えられない名詞。
考えてみると、日本語にはそもそも名詞に「数えられる」「数えられない」という分類はありません。
しかし英語を習ったことがある人なら、この分類にそれほど違和感がないのではないでしょうか。英語でも coffee は一般に不加算名詞(uncountable noun)として扱われます。
テキストにはこんな例文ものっていました。
Elämä on joskus harmaata.(人生はときどき灰色だ。)
*ei A eikä B(AでもBでもない)、se(それは)、harmaa(灰色の)、elämä(人生)、joskus(ときどき)
[主格]harmaa
[分格]harmaata
人生はときどき灰色。。。
人生は良いことばかりでも、悪いことばかりでもないということなのか。あるいは、人生にはときどき憂鬱なことが降り掛かるということなのか。。。急にこんなことを言われると、いろいろと想像してしまいます。
さて、ここまでは内容はともかく(?)、文法的には納得できる例文でした。一方、文法的にやや奇妙に思えるのが次の例文。
Järvessä vesi on sinistä.(湖の水は青い。)
*taivas(空)、sininen(青い)、järvi(湖)、vesi(水)
[主格]sininen
[分格]sinistä
ここでは空が数えられる名詞、水が数えられない名詞として扱われています。
空が数えられるというのは、非常に不思議。
「雨空」と「晴れた空」、「昨日の空」と「今日の空」、「沖縄の空」と「東京の空」など、数える方法はいくらでもありますが、それなら水だって数えられるような気がします。
理屈では割り切れないこの分類。なかなか意味深ですね。
11月 02, 2013 @ 22:12:27
Hyvää iltää!
> 空が数えられるというのは、非常に不思議。
との疑問の答え(られるかどうか)を探してみました。
フィンランド語のtaivasの語源に3説あるとのことです。
(1) 古代バルト語にdeivasとありこれが語源という説。
現代リトアニア語ではdievas、現代ラトビア語ではdievsといい、意味はどちらも「jumala(神)」でこれが後に「空」を意味するようになった。
(2) 古代ドイツ語のteiwazから発し、スカンジナヴィア経由で入ったという説。
意味は「jumala(神)」。
(3) インドヨーロッパ語、その内インドイラン語の流れを汲むdeva’(aにアクサン・テギュ、といっていいのか?不明)、プラークリット語のde’va(eにアクサン・テギュ)を語源とする説。
deva’は「空の」を意味し、de’vaは「神、雲、空」を意味する。
また、ラテン語deusも「神」を意味する。
というようにどれも「神」を意味するようです。そうであればtaivasは自ずと可算名詞ですからTaivas on sininen ja järven vesi on sinistä. となるのでしょう。
11月 03, 2013 @ 18:48:12
Jussiさん
興味深い内容、ありがとうございます。なるほど、taivas はもともと「神」を意味する単語から来ているんですね。
日本語には加算・不加算という概念がないこともあり、空を加算的に認識したり、水を不加算的に認識したりするというのが、どういう感覚なのかどうもわかりにくいところがあります。
ちなみに英語の「god」は、キリスト教の神を意味する時には不加算名詞、神話の神々を意味するときには加算名詞になるそうです。フィンランドの神話にもきっとさまざまな神が出てくるんでしょうね。