「モテる」の分析

Cow Grazing in Pasture

考えてみると日本語の「モテる」というのは、何だか不思議な動詞だなあと思いませんか。

その成り立ちについて、少し調べてみました。

 

「モテる」の成り立ち

まずは辞書の語義から。

[動タ下一]《持つことができる意の「も(持)てる」から》
1 保たれる。維持される。「座が―・てない」
2 人気がある。人から好意をもたれ、よい扱いをうける。「年上の女性に―・てる」

『大辞泉』より

これによると「モテる」というのは、もともと「持つことができる」から来ているようです。

だとすると、いったい何を持つことができるのでしょう?

少し検索などでも調べてみましたが、モテるための方法ばかり出てきて見つかりません。

推察すれば、人からの好意や愛情を「持つ」ことができるということでしょうか。

また調べたところ、現在のような意味の「モテる」の歴史は意外に古いようです。

もてるは古く江戸時代には既に使われており、持てるという書きも使われた。また、昭和中期辺りからモテるというカタカナを併用した表記も使われる。

日本語俗語辞書

江戸時代にはもう使われていたんですね。カタカナ表記は昭和中期からということですが、カタカナになった理由はよくわかりません。

現在では「もてる」と書いてしまうと「モテる」の意味なのか、他の意味なのか、ややあいまいになってしまいます。

 

「モテる」の活用

さきほどの語義にあった[動タ下一]とは、タ行下一段活用の動詞という意味。次のように活用します。

語幹
未然形 モテ(ない)
連用形 モテ(ます)
終止形 モテる
連体形 モテる(こと)
仮定形 モテれ(ば)
命令形 モテろ


一方、もとの「持つ」は五段活用の動詞。こちらは次のように活用します。

語幹
未然形 持た(ない)
持と(う)
連用形 持ち(ます)
持っ(た)
終止形 持つ
連体形 持つ(こと)
仮定形 持て(ば)
命令形 持て


日本語ではこのように五段活用の動詞が「可能」の意味を含んで、下一段活用の動詞に転じる例が多く、それらは可能動詞と呼ばれています。

可能動詞(かのうどうし)とは、現代日本語(共通語)において五段活用の動詞を下一段活用の動詞に変化させたもので、可能(行為をすることができること)の意味を表現する。「書く」に対する「書ける」、「打つ」に対する「打てる」の類をいう。

Wikipedia「可能動詞」より

果たして「モテる」がこのような可能動詞の仲間なのかどうかはわかりませんが、成り立ちが同じことは確かでしょう。

また Wikipedia にはこんな記述もあります。

可能動詞には命令形が用いられにくく、「読めろ」・「走れろ」などの命令的な表現は極めて稀である。

確かに「泳げろ」「飛べろ」など、様々な例を思い浮かべてみても可能動詞と命令形の相性は悪そうなのですが、命令形「モテろ」は成立しているような気がしませんか。

「モテろ!」と言われても、「わかりました。モテます!」とは答えられないかもしれませんが、それはまた別の話。