『カラン・メソッド「英語反射力」を鍛える奇跡の学習法』坂本美枝著

photo credit: chotda via photopin cc

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外国語の学習法は選り取り見取り。大型書店に行けば、さまざまな学習法の本を見つけることができます。

そんな中、カラン・メソッドという、少し風変わりな英語学習法を紹介した本を読んだので、ここにシェアしてみたいと思います。

 

カラン・メソッドとは?

カラン・メソッドでは、講師が投げかける質問に一問一答形式でどんどん答えていきます。

例えば、本書に掲載されている質問・回答例は次のとおり。

Is Greece in Asia?

No, Greece isn’t in Asia; it’s in Europe.

Which’s the last letter of the alphabet?

Z’s the last letter of the alphabet.

ここでのポイントはフルセンテンスで答えること。

例えば一つ目の質問に No だけで答えたり、二つ目の質問に Z だけで答えるのはNGとなります。

つまり質問文の内容と形式を踏まえた上で、文法的に正しい文をきちんと発話しなければなりません。

私たちは外国語の聞き取りにおいて、往々にして質問のポイントだけを捉えがちです。

たとえ一語一句聞き取れていなくても、前後の文脈などから何が聞かれているのかわかってしまうことが多いのではないでしょうか。

もちろんそのこと自体は悪いことではありませんし、慣れない言葉でコミュニケーションを図る上では、むしろ必要な能力と言えます。

そのためさきほどの質問に No や Z と答えることはそれほど難しくないのですが、フルセンテンス必須となると、より一層の集中力が要求されますし、認知処理的な負荷も高まります。

つまりカラン・メソッドというのは、会話におけるレスポンスのスピードを上げるための訓練と解釈することができるでしょう。

ただし質問の内容が理解できないときには、先生が繰り返し問いかけてくれたり、ゆっくり言い直してくれたりということはあるようです。

またこちらの発音がおかしいときにも、止まって訂正してくれるのだとか。

いわゆる communicative なアプローチとはやや異なりますが、これはこれでおもしろい方法だと思いました。

 

カラン・メソッドのレベル

カランメソッドのカリキュラムは全部で12段階のレベル(Stage)に分かれており、Stage によって質問の難易度が異なります。(Stage 1が最も易しい。)

本書の中に Stage 1と Stage 10の質問・回答例がのっていたので引用してみます。(Stage 11, 12はケンブリッジ英検対策のカリキュラムなので、やや方向性が異なるとのこと。)

[Stage 1]

Is this a pen?

No, it’s not a pen; it’s a pencil.

[Stage 10]

What do we mean if we say we have a guilty of conscience?

(「良心の呵責を感じる」とはどういうこと?)

If we say we have a guilty of conscience, we mean that we have done something wrong and are worried about it. Usually we have not been found out or punished, but we still feel uncomfortable about it.

(「良心の呵責を感じる」とは、何かよからぬことをして、それが気になっている状態だ。発覚したり罰せられたりしなくても、自分がやったことに対して気持ちが落ち着かない)

こうして見ると、Stage 1は日本の中学1年レベルですが、Stage 10は相当難易度が高そうです。

この質問に答えがすらすらと出てくるようなら、かなりのレベルと言えるでしょう。あるいは日本語で聞かれたとしても、難しい質問ではないでしょうか?

 

カラン・メソッドへの批判とその回答

どんな学習法にも長所と短所はあるもの。

カラン・メソッドに対する批判としてありそうなのは、これだけで本当に自由な会話ができるようになるのか?というものでしょう。

結論から言えば、おそらくこれだけで自由に会話ができるようになることはないのかもしれません。

しかし多くの日本人のように単語と文法の知識がある程度あり、多読・多聴などのインプットも合わせて行っている人が、アウトプット強化のためにこのメソッドを利用するならば、それなりの効果があるような気がします。

もちろん実際にやってみた訳ではないので、うかつなことは言えませんが、一度試してみたいと思える内容であることはたしかです。

この本で紹介されている「QQ English」を始め、カラン・メソッドのレッスンを提供しているオンライン英会話サービスは複数あるそうなので、通学できる環境でなくても、気軽に始めることはできそうです。

 

まとめ

熟練した講師について、カラン・メソッドのレッスンを受ければ、様々なフィードバックやそれに伴う「気付き」を得ることができるでしょう。(特に発音など)

しかし学習効率は落ちるかもしれませんが、このような訓練を一人または学習者同士で行ったとしても、瞬間英作文などと同じくアウトプットのための反射神経は鍛えられるような気がするのですが、果たしてどうでしょうか?

なぜそんなことを思ったかというと、フィンランド語の学習にこのメソッドを応用してみたいと思ったからなのです。

いずれにせよ、この本を読んだ率直な感想は日本人と相性の良さそうな(日本人に必要な語学スキルを補ってくれる)メソッドであるというもの。

それだけにぜひ一度試してみたいものです。もし試したらこのブログでまた報告したいと思います!

カラン・メソッド 「英語反射力」を鍛える奇跡の学習法
東洋経済新報社 (2013-12-20)
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