ヴィクトル・シェストレム監督『風』@渋谷区総合文化センター大和田
今日は渋谷区総合文化センター大和田・さくらホールにて、ヴィクトル・シェストレム(Victor Sjöström)監督のサイレント映画『風』を見てきました。
思い返してみても、劇場でサイレント映画を見るのは初めて。
この日はアキ・カウリスマキ監督の『白い花びら』と合わせてサイレント映画の二本立てという企画。
正直カウリスマキ作品の方がお目当てだったので、初めは「どんなものかな?」と半信半疑だったのですが、結果見に来て大正解!でした。
『風』(原題:The Wind)は、1928年のアメリカ映画。
監督のシェストレムは、当時のスウェーデン映画界の巨匠。ハリウッドに招かれてこの作品を監督しました。
リリアン・ギッシュ演じる主人公のレティは故郷のバージニアから、いとこのビバリーを頼って風の吹きすさぶテキサスへやってきます。
行きの列車で出会ったお調子者のロディに騙されたり、近くに住むカウボーイのライジと気の進まない結婚をしたり。。。
物語自体はよくあるメロドラマのよう。しかしこの映画の本当の主役は全編を通して吹き続ける風・風・風。
なんとカリフォルニアの砂漠に8台のプロペラ機を持ち込んで撮影されたのだとか。この風が映画全編に異様な迫力を与えています。
また今回の上映では、サイレント映画ピアニストの柳下美恵さんによるピアノの生演奏(伴奏)も行われました。
サイレント映画を見たことがなかったので、何となく「映画は映画、音楽は音楽」で流れて行くというイメージがあったのですが、実際には柳下さんが物語の展開を見ながら即興で音を付けていきます。
物語が盛り上がるところは音楽も盛り上がり、沈黙すべきところは沈黙するという具合で、これにはびっくり。すごいテクニックです!
ところで監督のヴィクトル・シェストレムという名前を聞いたことがない人でも、イングマール・ベルイマン監督の『野いちご』に主演していた老紳士と言えば、古い映画好きなら「ああ、あの人!」と思い出す人も多いのではないでしょうか。
『野いちご』の撮影当時はすでに78歳で、映画の完成後2年ほどで亡くなってしまったとのこと。最後の作品は役者として残したんですね。