『絵本の記憶、子どもの気持ち』山口雅子著
ある日、某大型書店でぶらぶらと書棚を眺めていると、児童書担当のおすすめ本というコーナーに『絵本の記憶、子どもの気持ち』という薄い本が立てかけてありました。
何となく惹かれるものがあり、手に取ってパラパラとめくってみると、絵本『おおきなかぶ』のこんな一節が引用されています。
「うんとこしょ どっこいしょ まだまだ かぶは ぬけません」
おおー懐かしい!
本書『絵本の記憶、子どもの気持ち』には、これ以外にも『ぐりとぐら』や『きかんしゃやえもん』など懐かしい絵本のタイトルがたくさん出てきます。
さっそく購入し、読んでみることに。
著者の山口さんは、長年児童図書館で勤務され、退職後も女子大で絵本に関する講義を担当されている方。
この本は、その山口さんが学生に書いてもらったこんなレポートがもとになっています。
課題 幼いころに好きだった絵本、あるいは思い出に残っている絵本について
- その絵本とどのように出会いましたか。
- どういう絵でしたか。
- 話のあらすじ。
- 何が印象に残っていますか。
- 今、おとなになって見直してみて、どう思いますか。
(1から4までは記憶をたどって書く。その後絵本を探し出し、5について書く)
『絵本の記憶、子どもの気持ち』P.18
学生たちは、このレポートを通して、子どもの頃、絵本を読んでもらったときの記憶を思い出していきます。
そうだ自分はあのとき、こんな風に感じていたんだ。という描写はどれもハッとするものばかり。タイムカプセルを掘り起こしたときのような感動があるのです。
みなさんは「幼いころに好きだった絵本」「思い出に残っている絵本」と言われて、どんな絵本を思い出しますか?
自分の場合は『三びきのやぎのがらがらどん』でした。
がらがらどんがトロールのいる橋を渡っていくシーンは鮮明に覚えています。
またさきほどの課題の中でおもしろいのが5番目の質問。
子供のころに好きだった絵本を、大人になった自分が読み返したとき、多くの人が「本が小さく感じる」と答えているのには、何だかせつない気持ちになりました。
すっかり忘れていても、絵本から本当にたくさんのものをもらっていたんだなあということに気付かせてくれる素敵な一冊です。
福音館書店
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