フィンランド語学習記 vol.183 − 入格の作り方
フィンランド語教室63週目のレポート。
今回は入格の作り方を扱いました。まずは例文から。
*menee(行く)
Helsinkiin はフィンランドの首都 Helsinki の入格の形。
[入格]Helsinkiin(ヘルシンキの中へ)
入格というのは、その字のとおり「〜の中へ」という意味を表すフィンランド語の格変化。
ヘルシンキへ行くということは、ヘルシンキという街の中へ行くということなんですね。
この入格の作り方は、フィンランド語の他の格とはやや異なります。
その手順を以下にまとめておきたいと思います。
1)語幹をもとめる
今回は以下の4つの単語を入格の形にしてみたいと思います。
Suomi(フィンランド)
maa(国)
huone(部屋)
まずはそれぞれの単語の語幹を求めるのが、最初のステップ。
語幹というのは、フィンランド語の単語を格変化させるためのベースになる形と思ってもらえればよいでしょう。
語幹をもとめる際には、以下のルールを適用します。
→主格(辞書形)がそのまま語幹になります。
語末が[-i][-e]、子音のとき
→語末の変化が起こります。
それではさきほどの単語を一つずつ見ていきましょう。
talo(家)
語末が[-o]なのでそのまま。
Suomi(フィンランド)
語末が[-i]のときは[-e]に変わります。(外来語は除く)
maa(国)
語末が[-a]なのでそのまま。
huone(部屋)
語末が[-e]のときは[-ee]に変わります。
結果、次のような形になりました。
主格 | 語幹 | |
---|---|---|
talo | → | talo |
Suomi | → | Suome |
maa | → | maa |
huone | → | huonee |
2)入格の語尾を付ける
続いて入格の語尾を付けていきます。
これまでに習った格変化は、例えば内格なら[-ssA]、接格なら[-llA]というように格語尾の形が決まっていました。
しかし入格はこのように決まった形を持っていません。
以下に場合分けをしながら語尾の形を見ていきましょう。
2−1)語幹の末尾が1つの母音
語幹の末尾が1つの母音のときには、その母音を重ねて末尾に[-n]を付けます。
Suome → Suomeen
2−2)語幹の末尾が2つの母音
語幹の末尾が2つの母音のときには、まずその単語が1音節か2音節以上かを確認。
1音節のときには、母音を重ねて末尾に[-n]を付け、重ねた母音の前に[-h-]を挟みます。
2音節のときには、末尾に[-seen]を付けます。
以上の手順をまとめると、次のようになります。
主格 | 語幹 | ( 語末のチェック) | 入格 | |
---|---|---|---|---|
talo | → | talo | →(1つの母音)→ | taloon |
Suomi | → | Suome | →(1つの母音)→ | Suomeen |
maa | → | maa | →(2つの母音+1音節)→ | maahan |
huone | → | huonee | →(2つの母音+2音節以上)→ | huoneeseen |
ようやく入格の形ができあがりました。
Suomeen(フィンランドの中へ)
maahan(国の中へ)
huoneeseen(部屋の中へ)
これでさまざまなものの中に入っていくことができそうです!
4月 29, 2014 @ 22:51:21
カレヴァラ時代の古語では現代語のように入格は分化しておらず,すべて
(単語語尾の母音)+h+(単語語尾の母音)+n ・・・・・の形でした。
例えば,以下のように。
現代語:Onni tulkoon uuteen tupaan! (新しい家に幸せがきますように!)
古 語:Onni tulkohon uutehen tupahan! (これは新婚夫婦への祝の贈り物に添えるカードの言葉)
カレヴァラの中からちょっと拾い出してみても以下のようにあります。
左:現代語,右:古語
saareen(島へ) saarehen
uuteen(新しい) uutehen
tupaan(家へ) tupahan
omaan(自分の) omahan
hiihtämään(スキーをしに) hiihtämähän
ところが母音の間に「h」が入る形は発音しにくく,次第に発音しやすい形に変化したため,現代人はどれを使ったらいいか,フィンランド人自身も迷っているようです。その一端をブログからご紹介しましょう。
スレ主:Espoohon って言う?それとも Espooseen。
回答者:Espooooooooohonだろ。
回答者:Espoohon?
回答者:Espooseenに決まってるだろ。
Espooseen:グーグルヒット数69,400件
Espoohon:グーグルヒット数27件
回答者:ESPOOSEEN
回答者:なぜ?
回答者:普通Espooseenと言うけどKorsooseenとは言わず,Korsoonと言うよ。正確には何が正しくて何が間違いか,誰も分からないんじゃないの。
回答者:そう,多くの人はタイに行くときはThaimaaseenというね。私はThaimaahanと言うけど。国内の地名はEspooseenと言うよ。
回答者:Thaimaaseenは笑っちゃうね。だとするとAhvenanmaaseenって言うかい?。
回答者:俺たちゃEspoohonって言うぜ。
4月 30, 2014 @ 11:32:04
Jussiさん
コメントありがとうございます。
入格の[-h-]は古い用法に由来しているんですね。「tupaan」と「tupahan」だと、たしかに前者の方が発音しやすいですが、フィンランドの人は tupahan の方がきちんとした言い方だと感じるのでしょうか。
「Espoohon/Espooseen」のやりとりはおもしろいですね! 外国語としてある言語を学んでいると、どうしてもきっちりとしたルールを求めたくなりますが、実際にはゆらぎの中にある使い方も多いんだろうな、と改めて思いました。