Wug Test − 子どもは文法をどのように習得するか

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大人になってから新しい言語を身に付けるには、文法の知識が欠かせないとよく言われます。
一方、子どもが母語を身に付ける過程においても、単に単語やフレーズを覚えるだけでなく、その言葉の中にあるルールを合わせて習得していきます。
そのことを証明するためのユニークな手法に、アメリカの心理言語学者 Jean Berko Gleason が作成した wug test というものがあります。
このテストは非常にシンプル。
例えば、次のイラストの下線部に入る単語は何でしょう?
初めてこの問題を見る人は、せっかくなので3歳の子どもになったつもりで答えを考えてみてください。

The Wug and Wug Test © Jean Berko Gleason 2006. All rights reserved. For individual and family use only. Commercial use prohibited.
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おそらく多くの人が wugs という単語を入れたのではないでしょうか?
実際、英語圏の子どもたちも wugs という単語を入れるそうです。
ただしこの wug/wugs というのは、現実には存在しない pseudoword(偽単語)。
よって wug/wugs という単語を実際に聞いたことのある子どもはいないはず。
それにもかかわらず wugs という形を作ることができるのは、子どもが普段聞いている英語の中に自ら「複数形」というルールを見出していることにほかなりません。
また英語の複数形には、
- /s/(e.g., books)
- /z/(e.g., pens)
- /iz/(e.g., boxes)
の3通りの音がありますが、みなきちんと音声ルールの通りに /wʌgz/ を選ぶのだとか。
子どもたちは、学校の先生に習うこともなく、文法書を読むこともなく、いつの間にかこうしたルールを身に付けているんですね。
これはよくよく考えてみると実に驚くべきことだなあと思います。
この他の wug test に挑戦してみたい方は、下記のホームページに original wug test の問題が掲載されています。
Sunday Morning Exercise: Take “The Wug Test” | On Being
カラフルな絵も素敵なので、気になる方はちょっと覗いてみてください。
子どもになったつもりで取り組んでみれば、あるいは思わぬ気付きがあるかもしれません。