フィンランド映画祭2014で『コンクリートナイト』を観てきました。

photo credit: timo_w2s via photopin cc

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11/29(土)よりフィンランド映画祭2014が始まりました。

フィンランド映画祭

さっそく初日に『コンクリートナイト』『水面を見つめて』の二本を観てきました。

会場の「TOHOシネマズ 六本木ヒルズ」に来るのは、去年に続いて二度目。

去年はものすごい人だかりの中、チケットを発券するだけでも一苦労だったのですが、今年はスイスイと手続きすることができました。

アイスティーを購入し、会場のスクリーン6へ。180席くらいのサイズのよう。

まずは最初に観た『コンクリートナイト』の感想から。

率直に言いますと、暗い! 難しい!

そんな映画ですので、普通に楽しい映画が観たいという人にはあまりオススメできません。

映画祭の公式ホームページにのっているあらすじは次のとおり。

コンクリートナイト
原題:Betoniyö
英題:Concrete Night

ヘルシンキの都心部に住む、年の離れた兄弟、イルッカとシモ。24時間後には刑に服することになる兄イルッカと、世間知らずの14歳の弟シモ。シモは、そんな兄のことを愛し、崇拝していた。残された最後の1日を、兄とともに過ごすことにしたシモ。その夜、兄弟は運命的な光景を目撃。シモはそれを理解することができずに、自分を欺くことができず、見たままを受け止めてしまう。ありのままの世界は、驚くべきものであった。そこを、偶然であったひとりの写真家が、彼らに別の受け止め方を提示してゆく──。

映画の冒頭は、主人公シモの悪夢から始まります。

川に架かった橋の上を走っていく電車。突如、橋が崩れ落ち、電車は頭から川の中に転落。車両の中に容赦なく注いでくる大量の水。そこから逃げようとするシモ。

凄惨な場面なのに、流れる水の描写がとても美しく印象的。

アンドレイ・タルコフスキー監督の『ストーカー』という、水の描写が有名な映画を思い出しました。

物語そのものはあまり説明的に描かれないため、いったい何が起こっているのかよくわからない場面も多々あり。

それでも印象に残ったのは、モノクロームの美しい映像と箴言的なセリフの数々。

「希望(toivo)のない人間こそが最強である」とか、

「人類が滅亡した後はサソリの時代になる」とか、

(サソリは放射能にも耐えられるというのは本当なのでしょうか?)

ネガティヴでありながら、イメージ喚起力の強いセリフが印象に残っています。

映画を貫くテーマは若者の絶望感ということになるのでしょうが、最終的に悲劇的な行動に至る主人公の心情をあまり理解できず、共感することのないままに映画は終了してしまいました。

そんな『コンクリートナイト』をおすすめするのは、

  • タルコフスキーの映画を好きな人
  • とんでもなく絶望している人(?)

といったところでしょうか。

*これから観たいという人は、12/2(火)の18:45より本作の上映があります。

また映画の上映後には、ピルヨ・ホンカサロ(Pirjo Honkasalo)監督と原作のピルッコ・サイシオ(Pirkko Saisio)さんによるティーチインもありました。

監督が女性だったのはびっくり!

そして監督曰く「この作品はやや難解なので、本来なら上映後に夜道を一人で歩きながら考える時間が必要なのに、その時間を奪ってしまってすみません」などとおっしゃっていたのも、さもありなんという感じ。

またちょっと残念だったのは、このティーチインが英語で行われていたこと。フィンランド語を通訳できる人がいなかったのでしょうか?

映画の中のフィンランド語については、さすがに去年の映画祭のときよりは理解できるセリフの数が増えた気がします。

まれにまるごとセリフが聞き取れたりすると、それだけで嬉しくなってニヤニヤしてしまいました。来年の映画祭に向けて、また精進しようと思います。