beget − 連鎖するもの
「ランダムハウス英和大辞典」の bear の項にこんな記述があります。
bear[bέər]
(1)〈女性・雌が〉〈子を〉産む.
◆男性が子をもうける場合は beget
「ランダムハウス英和大辞典 第2版」
(1)の意味はよいとして、気になったのはその次の部分。
男性が子をもうけるという意味の beget という動詞があるんですね。
この単語は初めて見ました。さっそくそちらも調べてみましょう。
beget[biɡét]
1 〈通例、父親、時に両親が〉〈子を〉もうける
2 (文語)生じさせる;(結果として)招く
「ランダムハウス英和大辞典 第2版」
日本語でも、子どもを「産む」ことができるのは女性だけですが、子どもを「もうける」ことは男女両方ともに可能です。
そういった意味で「もうける」というのは beget の上手い訳語なのでしょう。
また beget には、子ども以外のものを「生じさせる」という意味もあり、’X begets X’ という反復の形で使われることが多いようです。
a belief that power begets power(力が力を生むという信念)
Money begets money.(金は金を生む。)
「ランダムハウス英和大辞典 第2版」
A lie begets a lie.(うそはうそを生む。)
Cruelty begets cruelty.(残忍は残忍を生む。)
Disease begets disease.(病が病を生じさせる。)
「英和活用大辞典」
Violence begets violence.(暴力が暴力を生む。)
「ウィズダム英和辞典 第3版」
暴力の連鎖というのは、今の世界において断ち切ることが最も難しいものの一つでしょう。
それにしても beget の例文を調べていると、このように悪い意味の例文ばかりが出てきます。
一つくらい良い意味の例文はないのかな?と思い、あちこち探していたら一つだけ見つかりました。
Enthusiasm begets enthusiasm.(熱意は熱意を生むものだ。)
「英辞郎」
確かに熱意を持って何事かに取り組んでいる人を見ると、自分もやってやろうという気持ちになりますよね。
願わくば、こんな風に周囲の人にプラスの影響を与えられる存在でありたいものです。