オマーンの英語教科書を読んでみる

実家に帰省して、本棚を整理していたらオマーンの英語教科書が出てきました。いろいろと思い出すことがあったので、今日はその話題を。

数年前、オーストラリアの大学院に留学していたときのこと。私の専攻であった応用言語学のコースには、世界各国の英語教員が多く参加していました。

その中でも、特にサウジアラビアやオマーンといった中東諸国から来ている人たちは、特に英語が流暢だなと感じていました。

大教室の授業でも率先して質問しますし、少人数のチュートリアルでも積極的に議論を主導します。とにかくアカデミックな環境でのコミュニケーションに非常に慣れているという印象です。

一方、日本人(と、一括りにするのも申し訳ないですが)は、総じてこういった場でのコミュニケーションがあまり得意ではありません。

そこで夏休みに帰省するオマーンのクラスメイトに、オマーンで使っている英語の教科書を持ってきてくれないかとお願いしたのでした。どういう英語教育を行っているのか、その一旦がわかるかもしれないと思ったからです。

結論から述べますと、この教科書に何か特別な点がある訳ではありません。大半は日本の教科書と同じような例文や練習問題があるだけです。

ただし日本の教科書と決定的に違う点が二点あります。一つは全て英語で書かれているということ。もう一つはアウトプットの量を重視しているということです。

日本の公教育でオールイングリッシュの教科書が機能するかどうかは意見の分かれるところでしょう。ただオマーンのクラスメイトに日本の英語教科書を見せたときに、その日本語の量に驚かれたことはよく覚えています。ページによっては英語より日本語の方が多いくらいなのです。

またアウトプットについて、日本の中学の教科書(問題集)では一文単位の和文英訳がよく見られますが、オマーンの教科書では中学の段階から常にパラグラフを書かせているというのが目を引きます。

これは推測ですが、この段階では一文一文のaccuracy(正確さ)よりも、fluency(流暢さ)を重視しているのではないかと思います。量を多く書かせてaccuracyにこだわることは難しいので、多少単語や文法が間違っていても、内容が伝わっていればよしとしているのではないでしょうか。

なおライティングは「○○について自分の意見や感想を述べよ」という形式ではなく、複数の絵を元にストーリーを描写する形式が主流のようです。まずは「表現力」を身に付けさせようということなのでしょう。

こういったアウトプットの力を中等教育のうちからきちんと養成している国はやはり強いのだなと改めて思いました。もちろん日本の教科書はどれも非常に完成度の高いものですが、他国の教科書から学べる点もきっとあるはずです。