われらはなすべきことをなさずにすまし
『物語 英語の歴史』という本を再読していたら、そこで紹介されていたイングランド国教会の『祈祷書(The Book of Common Prayer)』の英文が目に留まりました。
祈祷書というのは、キリスト教の祈りの言葉を収めた書物のこと。
宗教的な詳細はよくわからないのですが、ここに出てくる英文はシンプルでとても美しく、読んだ後に静かな余韻を残します。
有名なのはこの一節。
Earth to earth, dust to dust, ashes to ashes.
土は土に、塵は塵に、灰は灰に
そして特に印象に残ったのはこの一節。
We have left undone those things which we ought to have done; And we have done those things which we ought not have done; And there is no health in us.
われらはなすべきことをなさずにすまし、なすべきでなかったことをなす。身のうちに健全なる部分は何もなし。
− The Book of Common Prayer
『物語 英語の歴史』(悠書館)より
難しい単語は一つも使われていないのに、説得力を持って心に迫る英文だと思います。
なぜ多くの人は、なすべきことをなさずにすまし、なすべきでなかったことをなしてしまうのか。
人間の不思議をたった三文で表現した祈祷文の一節。他の部分も読んでみたくなりました。