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『物語 フィンランドの歴史』を読んでみる

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昨日までフィンランド語の教科書に出ていたフィンランドの歴史に関する読み物を訳しながら、フィンランドの歴史を追いかけるエントリーを4回に分けて掲載しました。

教科書の読み物自体はとても短く、情報が少ないため、並行して先日発売されたばかりの『物語 フィンランドの歴史』という本を読む事で行間を埋めていました。

この本は新書という手軽なフォーマットで、フィンランドという国の成り立ちを概観することができます。目次は次のとおり。

序章 フィンランド人の起源 ー「アジア系」という神話

第1章 スウェーデン王国の辺境 ー13世紀~19世紀初頭

第2章 ロシア帝国下の「大公国」 ー19世紀~第一次世界大戦

第3章 揺れる独立国家フィンランド ー内戦~1930年代

第4章 二度の対ソ連戦争 ー第二次世界大戦下、揺れる小国

第5章 苦境下の「中立国」という選択 ー休戦~東西冷戦期

第6章 西ヨーロッパへの「接近」 ーソ連崩壊~21世紀

終章 21世紀、フィンランドという価値

内容はアカデミックというほどではないものの、ちょっと硬めの文章で書かれているので、最初のうちは読み進めるのに時間がかかりました。

しかしフィンランド人としてのアイデンティティが形成されていく19世紀頃から、ぐんぐん内容に引き込まれて、そこから最後までは一気に読み終えることができました。

いわゆる「世界史」の本が語る歴史というのは大国や偉人中心の歴史ですが、どんな国にもそれぞれの歴史があり、どんな人にもそれぞれの歴史があります。本書はそんな当たり前のことを再認識するきっかけにもなりました。

また読み終えての率直な感想はフィンランドというのは本当に新しい国なのだなということ。これからの世界において、フィンランドがどのような国として自らを位置づけていくのか、未来の歩みも気になります。

サンタクロースとムーミンだけではないフィンランドの姿を知るには絶好の入門書。ぜひ書店で手にとってみてください。

 

物語 フィンランドの歴史 - 北欧先進国「バルトの乙女」の800年 (中公新書)
石野 裕子
中央公論新社
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『なくなりそうな世界のことば』

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先日、新宿の紀伊国屋書店に行ったときに、書棚で見かけたのがこちらの本。

なくなりそうな世界のことば

これはずるい。一瞥しただけですぐにレジに持っていってしまいました。

『なくなりそうな世界のことば』は、世界の50の少数言語を選んで、その言語特有のユニークな表現を素敵な絵とともに紹介する一冊。

掲載されている50の言語は話者数の多いものから少ないものへと並べられています。その一覧を見てみましょう。

  • アヤクチョ・ケチュア語(900,000人)
  • ネワール語(830,000人)
  • バスク語(714,000人)
  • ジンポー語(650,000人)
  • ウェールズ語(562,000人)
  • シナー語(500,000人)
  • サハ語(450,000人)
  • ティディム・チン語(350,000人)
  • ブリヤート語(300,000人)
  • フィジー語(300,000人)
  • トゥバ語(280,000人)
  • ラマホロット語(200,000人)
  • コワール語(200,000人)
  • ヘレロ語(200,000人)
  • マテンゴ語(160,000人)
  • カルデラーシ・ロマニー語(150,000人)
  • アイルランド語(138,000人)
  • トク・ピシン(122,000人)
  • ラダック語(117,000人)
  • ブルシャスキー語(100,000人)
  • ダグール語(96,100人)
  • ドホイ語(80,000人)
  • ラワン語(62,000人)
  • ボントック語(40,000人)
  • サーミ語(35,000人)
  • アミ語(30,000人)
  • ワヒー語(30,000人)
  • ポポロカ語(20,000人)
  • シベ語(20,000人余り)
  • ドム語(16,000人)
  • セデック語(10,000人以下)
  • テオティトラン・デル・バイェ・サポテク語(5,000人)
  • カラーシャ語(5,000人)
  • メチェ語(4,500人)
  • コリャーク語(2,000人)
  • ハワイ語(2,000人)
  • ナーナイ語(500人)
  • サタワル語(460人)
  • ウルチャ語(100人)
  • ツィムシアン語(100人)
  • ニヴフ語(100人以下)
  • ハイダ語(100人以下)
  • ドマーキ語(100人以下)
  • ウデヘ語(100人以下)
  • ウイルタ語(10人)
  • スライアモン語(10人)
  • アルタ語(10人)
  • イテリメン語(10人以下)
  • アイヌ語(5人)
  • 大アンダマン混成語(0人)

北欧のラップランドで話されているサーミ語からは「太陽の出ない季節」を意味する skábma(スカーマ)という単語が取り上げられていました。

上記の話者数は各ページの端にも書かれており、ページをパラパラマンガのようにめくると900,000から0へ数字がカウントダウンされる体裁になっています。

現在世界には約7,000の言語があるとされていますが、一説によるとその半分は今世紀中に消滅してしまうとのこと。

そういう意味で、私たちが今生きている21世紀というのは消えゆく言語の世紀と言えます。

今私たちにできることは、せめてそれらの言語が持つ豊かな世界に思いを馳せ、想像を膨らませてみること。本書はそのきっかけを与えてくれる素敵な一冊です。

 

なくなりそうな世界のことば
吉岡 乾
創元社
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2016年に読んで面白かった本10冊

photo credit: cszar A Lifetime Of Reading via photopin (license)

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気が付けば2016年も大晦日になりました。どんな年の瀬をお過ごしでしょうか?

今回のエントリーでは今年読んで面白かった本10冊を紹介してみたいと思います。

今年発売された本ではなく、あくまで今年読んだ本ですので、古い本も入っています。

それではさっそくいってみましょう。

 

『正直』松浦弥太郎著

『暮しの手帖』の前編集長で現在は cookpad の「くらしのきほん」の編集長をされている松浦弥太郎さんのエッセイ集。今年はこの他にも松浦さんの本をずいぶんたくさん読みました。

松浦さんの本からは、日々の仕事や人間関係の迷いに対してどのように向き合ったらよいか、さまざまなヒントと原理原則を得ることができるように思います。

 

正直
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松浦 弥太郎
河出書房新社
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『今日も珈琲日和』鶴巻麻由子著

小金井界隈で「出茶屋」というコーヒーの屋台を出している鶴巻さんのエッセイ集。

屋台で出会った人のこと、これまでの人生のこと、何気ない日常のこと。波瀾万丈なドラマがある訳ではないのですが、描かれた一つ一つのエピソードがとても素敵なものに思えます。

人とかかわりながら生きていくことの面白さ・豊かさを感じられる一冊でした。

 

今日も珈琲日和 (かもめの本棚)
鶴巻 麻由子
東海教育研究所
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『ユーコン川を筏で下る』野田知佑著

カヌーイストの野田知佑さんによる、北米ユーコン川の筏による川下りの記録。

昔から野田さんのエッセイを愛読してきた身としては、今も野田さんの新刊が読めるというだけで嬉しいこと。しかもユーコン川ふたたびというのですから、興奮せずにはいられません。

 

ユーコン川を筏で下る
ユーコン川を筏で下る

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野田 知佑
小学館
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『まじめに生きるって損ですか?』雨宮まみ著

女性投稿者の愚痴に雨宮さんがとことん付き合うという体裁の人生相談風エッセイ集。

愚痴の内容は男性が読んでも共感できるものから、えっ?と思うものまで様々ですが、みなの心の底の底に降りていって、もやもやの本質を言葉にしてしまう雨宮さんの豪腕に驚嘆。

もっと新作を読みたかったのですが、雨宮さんは今年の10月にお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りいたします。

 

まじめに生きるって損ですか?
雨宮まみ
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『コンビニ人間』村田沙耶香著

今年上半期の芥川賞受賞作。日常と紙一重の狂気の世界を描きつつ、それでも主人公が感じる周囲への違和感は私たちの中にも覚えのあるものではないでしょうか。

SF小説のような手触りに、学生時代によく読んでいた安部公房の小説を思い出しました。

 

コンビニ人間
コンビニ人間

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村田 沙耶香
文藝春秋
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『不屈の棋士』大川慎太郎著

現在、最もホットなトピックの一つである人工知能。

その人工知能に対して人間はどのように向き合っていくべきなのか? 将棋ファンにとっては現在の将棋界を通して理解するのがわかりやすい、そんなところもあります。

変わらざるをえないという気持ちと、変わってほしくないという気持ち。10年前にこんな時代が来るとは全く想像できませんでした。

 

不屈の棋士 (講談社現代新書)
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『四人の交差点』トンミ・キンヌネン著

フィンランドでベストセラーになった、あるフィンランド人家族の年代記。ストーリー上のある謎が、物語の最終章で明かされる一種のミステリー仕立てになっています。全編読み終わった後に、また最初からページをめくりたくなる構成の妙。

そしてフィンランドの昔の暮らしを垣間見ることができるのも魅力の一つです。

 

四人の交差点 (新潮クレスト・ブックス)
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『ガケ書房の頃』山下賢二著

2015年まで京都にあった書店「ガケ書房」の店主で、現在は同じ京都にある「ホホホ座」の店主である山下さんのエッセイ集。

ガケ書房という書店経営の記録としても、書店論としても読めますが、それ以上に一つの青春小説として面白く読むことができました。

 

ガケ書房の頃
ガケ書房の頃

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山下賢二
夏葉社
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『夜と霧』ヴィクトール・E・フランクル著

ナチスの強制収容所から生還したオーストリア人精神科医の手記。

今年はこの本を読み、そしてアウシュヴィッツを訪れたということが一番のハイライトだったかもしれません。

「私たちが生きることからなにかを期待するのではなく、むしろ生きることが私たちから何を期待しているかが問題なのだ」という一節が心に残ります。

 

夜と霧 新版
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ヴィクトール・E・フランクル
みすず書房
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『かなわない』植本一子著

写真家の植本一子さんによるエッセイ集。今年はこの本にやられた!という人は多いのではないでしょうか。

子育てのこと、家族のこと、生きていくことのひりひりした痛みに身悶えしつつ、それでもページをめくる手が止められない。そんな生々しさに満ちた一冊。

本の後半、恋人との関係がおかしくなり、メールでカウンセリングを受けるくだりでは、人の心の深淵を突きつけられているような恐怖と、それでもその先を見たいという好奇心を両方抱えたまま、ぐいぐい引っ張られていきます。

 

かなわない
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植本一子
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まとめ

以上、今回のエントリーでは今年読んで面白かった本10冊を紹介してみました。

みなさんのおすすめ本などありましたら、コメント欄に書いていただけると嬉しいです。

それではよいお年をお迎えください。

「にこにこ」と「にやにや」の違いとは? −『日本語擬態語辞典』を読んでみる

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「にこにこ笑っている」と「にやにや笑っている」の違いは何ですか?

もし日本語を学んでいる人からそのように聞かれたら、いったいどのように答えたらよいのでしょう?

日本語というのは世界でも類を見ないオノマトペの豊かな言語。

そんな日本語のオノマトペを扱った楽しい本を読んだので、紹介してみたいと思います。

日本語擬態語辞典 (講談社+α文庫)

本書『日本語擬態語辞典』は日本語のオノマトペを日本語と英語の二か国語で解説し、そこに絵本作家・五味太郎さんの楽しいイラストを添えた一冊。

例えば、さきほどの「にこにこ」と「にやにや」は次のように説明されています。

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niko niko

Describes someone smiling happily. All smiles.

にこにこ

うれしそうにほほえむさま。

16102803

niya niya

Describes smiling in a a faint, meaningful manner. Grinning.

にやにや

意味ありげに薄笑いする様子。

 

英語と日本語の説明も「なるほど」と思うのですが、やはりこの本の真骨頂は五味太郎さんのイラスト。

言葉で説明するのが難しい表現でも、たった一枚のイラストでニュアンスがすっと頭に入ってきます。

そういう意味では日本語を外国語として学んでいる人に特におすすめしたい一冊です。

それにしても、これだけのオノマトペを無意識に使い分けている日本語ネイティブの頭の中というのはいったいどうなっているのだろう?と自分のことながら不思議な気持ちになりました。

日本語の奥深さ、言語の深淵に触れることのできる一冊でもあります。

なお個人的に一番インパクトがあったのはこのページ。びんびん伝わってきます。

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uja uja

Describes many small things gathered together and moving, such as a swarm of insects or a crowd of people seen from a distance.

うじゃうじゃ

小さな虫などがたくさん集まってうごめいているさま。

 

日本語擬態語辞典 (講談社+α文庫)
五味 太郎
講談社
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『バーナード嬢曰く。』

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読書をめぐるギャグ漫画『バーナード嬢曰く。』全2巻を一気読み。本好きのツボをぐいぐい突いてくる傑作でした。

バーナード嬢曰く。: 1 (REXコミックス)
バーナード嬢曰く。: 2 (REXコミックス)

主人公の町田さわ子は、自分をいかにして読書家に見せるかに心血を注いでいる高校生。劇作家のバーナード・ショーをもじって、自分のことを「バーナード嬢」と呼んでほしいと周囲に言っているものの全く相手にされていません。

本書の前半は作家の名言を紹介する名言漫画。

人生とは、病人の一人一人が寝台を変えたいという欲望に取り憑かれている、一個の病院である。

ボードレール『パリの憂鬱』

そして途中からは、名言に限らず本に関する幅広いテーマを扱う読書漫画という体裁になっていきます。

誰もが一度は考えたことがあるような読書を巡る様々な自意識が言語化されていて、読み進めている間「わかるわかる」と思うことのオンパレード。登場人物たちの丁々発止のやり取りにはとにかく笑ってしまいます。

おそらく本好きの人なら、主人公が図書室で知り合うSF好きの友人・神林しおりに共感する人が多いのではないでしょうか。

本書で一番好きなのは『さまぁ〜ずの悲しいダジャレ』という本を一生懸命にすすめる主人公の町田さわ子に、「見栄とか関係なく好きなモノを純粋に好きって言えるのは素晴らしい」と神林しおりが感動するシーン。

ギャグ漫画なのに、本書を読み終わったあとには「本そのものともう一度真剣に向き合ってみよう」と思えてくるから不思議なもの。書店で見かけたら、ぜひ一度手に取ってみてください。

 

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ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』

人が一生の間に深く学ぶことのできる言語の数は限られています。

そういう意味では、外国語を学ぶときに「どの外国語を選ぶのか」というのは、とても大きな選択なのだと思います。

今回、紹介する『べつの言葉で』は、アメリカの作家ジュンパ・ラヒリによるイタリア語の学習についてのエッセイ。

べつの言葉で (新潮クレスト・ブックス)

ラヒリの両親はベンガル語を母語とするインド系移民。その娘である著者は家ではベンガル語、外では英語を話すバイリンガルとして育ちます。

その後、著者は学生の頃に訪れたイタリアに魅せられ、イタリア語の学習を始め、やがて夫と二人の子供とともにローマに移り住むことに。

そんな著者が母語であるベンガル語・英語ではなく、第三の言語であるイタリア語で書いたのがこのエッセイ。

もしも本書を原書で読むことができたなら、母語ではない言葉で書かれていることに伴う微妙なずれのようなものを感じることができたのかもしれません。ただ日本語訳ではそのようなディテールに触れることができないのは残念なところ。

それでも新しい経験に伴う喜びや苦労、繊細な気持ちの動きはストレートに伝わってきます。

新しい単語に出会うとき、それは決断のときだ。すぐ単語を覚えるためにちょっと止まってもいいし、メモしておいて先に進んだり、無視したりすることもできる。毎日道でみかける人たちのうち何人かの顔のように、いくつかの単語は何らかの理由で目立って印象を残す。ほかの単語は背景に紛れたままで注意を引かない。

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読後に感じた最も強い印象は、外国語を学ぶということが、人生そのものと重ね合わせになっているということ。

どれだけ道を進んでも、その先には必ずまた未知の世界が広がっているということ。いつになっても決して完成することはないということ。そんな外国語学習の世界に尽きせぬ魅力があるということを再発見できる素敵なエッセイでした。

またエッセイ群の中にそっと挟み込まれている二編の掌編小説「取り違え」「薄暗がり」も、よくある日常の風景からいつのまにか非日常の世界に連れて行ってくれるような魅力的な作品です。

イタリア語に興味のある人はもちろん、広くことばに好奇心を持ち続けている人におすすめの一冊です。

 

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