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カディブックス『馬語手帖』

言葉についてあれこれ考えているときに思い浮かぶ疑問の一つは「動物に言葉はあるのか?」というもの。

人間のような言葉はないとしても、動物と動物の間に、あるいは動物と人間の間に何らかのコミュニケーションはあるはず。だとすれば、その仕組みはいったいどのようになっているのでしょう?

今回紹介する『馬語手帖』はそんな素朴な疑問に答えてくれるユニークな一冊。

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多くの人にとって、馬の言葉と言うと、まず思い浮かぶのはあの「ヒヒヒーン」といういななき声かもしれません。

本書にはそのような馬の声についての解説もありますが、ページの多くが割かれているのは馬のさまざまなボディーランゲージについて。

馬という動物が、その身体を通してこんなにもさまざまな感情を表現していると知って、新鮮な驚きがありました。

その中でも特に面白いと思ったのは、馬の耳と馬の気持ちの関係について。

例えば、馬の耳が少し開いているときには馬はくつろいでいるとか、馬の耳がピクピク動いているときには馬の気持ちがざわめいているとか、馬の耳を見ると馬の気持ちがわかるのだそう。

そんな視点から馬を見たことはなかったので「なるほど」と思うとともに、人間もそんな風に耳を見るだけで相手の気持ちを推し量ることができたら便利なのに、などと考えてしまいました。

そんな『馬語手帖』を出版しているカディブックスは、日本の最西端、与那国島在住の河田桟さんという方が一人でやっている出版社。

よって、本書を取り扱っている書店はかなり限られているよう。自分は池袋のジュンク堂で入手しましたが、カディブックスのホームページから直接注文することもできるようです。

与那国島から本を送ってもらうというのも、考えてみるとめったにできない体験ではありますね。

 
kadi books | はしっこの島の小さな出版社

『珈琲とエクレアと詩人』橋口幸子著

photo credit: Amapolas via photopin (license)

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『珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎』という本を読みました。

珈琲とエクレアと詩人 スケッチ・北村太郎

北村太郎は田村隆一や鮎川信夫などと並ぶ、荒地派の詩人の一人です。

本書はその北村太郎と交流のあった著者による、詩人の晩年の生活の記録。

北村太郎という人について特に知識があった訳ではなく、ふとしたきっかけで手に取ったに過ぎないのですが、読み進めるにつれて、その人となりにすっかり魅了されてしまいました。

晩年の北村太郎は勤めていた朝日新聞社を退職し、鎌倉や横浜のアパートを転々とします。慎ましい暮らしの中で、身の回りの人とたわいのない話をしたり、翻訳の仕事をしたり、猫をかわいがったり。

市井の片隅で人が生きていくその息づかい。一日一日のいとおしさのようなものが静かに伝わってきます。

「校正の仕事、わたしに向かないと思うんですよね」とある日わたしは、自分に自信のないことを訴えた。

「自分に向いていると思って、校正の仕事をしているひとこそ向いていないと思うよ」

著者と詩人のさりげない会話や気持ちのやりとりの中に、大げさに言えば、生きていく意味のようなものが透けて見えたり。

本は100ページ少々ですぐに読めてしまうのですが、何度でも繰り返し読みたくなる素敵な一冊です。

また巻頭に引用された「天気図」という詩がとても印象的。

夜中に台所でネギを切っていたら、そのあまりの白さに誰もいない後ろを振り返ってしまうという内容。

本書の次にはぜひ詩集を読んでみたいと思いました。

 

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フォスフォレッスセンス

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太宰治の「フォスフォレッスセンス」という短編小説を読みました。

 

 

物語の主人公は夢と現実の世界を行き来する男。

男は夢の中で出会った憧れの女性とこんな会話を交わします。

「あたし、花束を戴いたの。」

「百合でしょう。」

「いいえ。」

そうして私のわからない、フォスフォなんとかいう長ったらしいむずかしい花の名を言った。私は、自分の語学の貧しさを恥かしく思った。

物語の最後、男は雑誌の編集者といっしょにその女性の家を訪ねます。女性は不在でしたが、亡くなったご主人と思われる写真の下に花束が飾られていました。

「綺麗な花だなあ。」

と若い編輯者はその写真の下の机に飾られてある一束の花を見て、そう言った。

「なんて花でしょう。」

と彼にたずねられて、私はすらすらと答えた。

「Phosphorescence」

物語はこの「Phosphorescence」の行でぷつんと終わってしまいます。

突然、アルファベット表記になったこの Phosphorescence というのはいったいどんな花なんだろう?と思って調べてみました。

phosphorescence

  1. 燐光(りんこう)性:光を当てたあと、光を取り去っても発光する性質
  2. 青光り
  3. 燐光:ある物質から光を出させていた刺激を除いてもまだ出ている光

「ランダムハウス英和大辞典 第2版」

調べた限り、この Phosphorescence というのはどうも花の名前ではないよう。

もしかしたらどこかにそういう花があるのかもしれませんが、そんな花は実在しないという方が、この小説には似つかわしいような気もします。

実際はどうなのでしょう?

 
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『ブルックリン・フォリーズ』ポール・オースター著

photo credit: the wood via photopin (license)

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ポール・オースターの『ブルックリン・フォリーズ』という小説を読みました。

心に残るとても素敵な小説だったので、簡単に紹介しておきます。

物語の語り手は59歳で元保険外交員のネイサン・グラス。

妻と別れ、仕事を引退し、肺ガンを患ったネイサンは、生まれ故郷のブルックリンに戻ってきます。

私は静かに死ねる場所を探していた。誰かにブルックリンがいいと言われて、翌朝ウェストチェスターから偵察に出かけていった。ブルックリンに戻るのは五十六年ぶりで、まったく何も覚えていなかった。私が三つのときにわが家はブルックリンを離れたが、私は本能的に、かつて一家で住んでいた界隈に帰っていった。傷ついた犬のように、生まれた場所へと這い戻っていったのだ。

P.3

死に場所を探しにやってきたブルックリンで、ネイサンを待っていたのはさまざまな人との出会いでした。

ネイサンの甥で、かつてはアカデミズムの世界で将来を嘱望されながら今は古書店員として働いているトム・ウッド、

物語の主要な舞台となるブライトマンズ・アティックという古書店を営むハリー・ブライトマン、

トムの姪で、謎めいた雰囲気の少女ルーシー。

『ブルックリン・フォリーズ』はそんな登場人物をめぐる一種の群像劇。

ネイサンがブルックリンに戻ってくることがなければ、決してつながることのなかった人たち、その人間模様がとても魅力的に描かれています。

また社会という規範から思いがけずはみ出してしまった、さまよえる人々を暖かく受け入れてくれるブルックリンという街もこの物語のもう一つの主人公なのかもしれません。

ややありきたりな言い方になってしまいますが、人の温かさ、生きる希望のようなものが、底の方にゆっくりと流れているそんな小説です。

何となく八方塞がりな気持ちになったとき、どうしようもないくらいの絶望に襲われたとき、静かにページをめくって、物語の世界に心を浸せば、いつのまにか思いがけない光が見えているかもしれません。

 

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『声に出して読みづらいロシア人』松樟太郎著

photo credit: dscn0683.big via photopin (license)

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松樟太郎さんの『声に出して読みづらいロシア人』(ミシマ社)という本を読みました。

政治・芸術など、さまざまなジャンルで活躍したロシア人を紹介する本なのですが、その選定基準は基本的に名前の響きが面白いかどうかという一点のみ。

軍人のポチョムキン、元首相のチェルノムィルジン、作曲家のラフマニノフなどの名前の響きを楽しんだり、

ロケットの父と呼ばれたコンスタンチン・エドゥアルドヴィチ・ツィオルコフスキー、チェリストのムスティフラフ・レオポリドヴィチ・ロストロポーヴィチ、作家のミハイル・エヴグラフォヴィチ・サルトゥイコフ=シチェドリンなどの名前の長さにびっくりしたり、

要はロシア人の名前で遊んでしまおうという一冊。

ロシア語には全然詳しくないけど、ロシア人の名前って、何だか怪しげで魅力的な響きがあるよなあと思っていた自分のような人におすすめの一冊。

構成は一人につき見開き2ページで、名前だけではなく、それぞれの人物の略歴も紹介されているため、著名なロシア人の見本市としても楽しむことができます。

これまでにありそうでなかったユニークな切り口の本だと思います。

 

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ある仕事論 −『本屋になりたい』を読む

先日読んだ宇田智子さんの『本屋になりたい:この島の本を売る』という本を紹介したいと思います。

本屋になりたい: この島の本を売る (ちくまプリマー新書)

二年前に観光で石垣島に行ったとき、地元の書店で宇田さんの処女作『那覇の市場で古本屋 ー ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々』という本をたまたま購入して読み「これは面白い!」と思って、次の本を楽しみにしていました。

宇田さんは、沖縄・那覇国際通り近くの第一牧志公設市場の前で「市場の古本屋ウララ」という古本屋さんを営んでいる方。

本書では、そんな宇田さんの日常が綴られています。

序章 古本屋、始めました

一章 本を仕入れる

二章 本を売る

三章 古本屋のバックヤード

四章 店番中のひとりごと

五章 町の本を町で売る

普通に考えれば、本書は書店の仕事に興味がある人に読んでもらいたい本ということになるのかもしれません。

しかし読み進めながら思ったのは、これは書店で働く人だけではなく、その他の仕事に携わる人にも当てはまる一種の仕事論になっているということ。

宇田さんは新卒で書店への就職活動をした際、履歴書の志望動機の欄に「何かしたいと思っている人を、本を売ることで応援したい」と書いたそうです。

古書店の仕事というのは、おそらく他の多くの仕事と同じように、地道な作業が大半を占めるのだと思います。

本を仕入れる。重い本を運ぶ。値段を付ける。本をきれいにする。棚に並べる。本を売る。本を送る。そして絶え間ない本棚の整理。etc.

そんな一つ一つの仕事を、無理をする訳でもなく、手を抜く訳でもなく、淡々とこなしていくということ。

しかしそこには一本筋の通った自分なりの思いや哲学が流れているということ。

どんな仕事であっても、そこにきちんと向き合おうとすれば、自分自身のあり方が問われる瞬間があるということ。

本や書店に興味のある人だけではなく「仕事って何だろう?」とか「人はなぜ働くんだろう?」といった根源的な疑問に立ち止まってしまった人にもぜひ読んでほしい一冊です。

 

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