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言語を比較する

春のイメージ

気がつけば、すっかり春。

花粉さえ飛んでいなければ自転車でツーリングに行きたいところですが、もう一か月くらいは我慢しなければなりません。

「春」は英語で spring、フランス語で printemps(プランタン)、イタリア語で primavera(プリマヴェーラ)。知っている単語にはどれも p の音が入っています。

破裂音の p には春のイメージがあるのでしょうか?

『13か国語でわかるネーミング辞典』で、他の言語についても調べてみました。

スプリング spring
プランタン printemps
フリューリング Frühling
プリマヴェーラ primavera
西 プリマベーラ primavera
プリマヴェーラ primavera
レンテ lente
ウェール ver
エアル εαρ
ヴィスナー весна
チュンティエン 春天
ボム
ラビーゥ ربيع

 

調べてみると、どの単語にも p の音が入っている。。。ということはありませんでした。

ただ何となく明るい印象のことばが多いかなと思うのは、単なる先入観でしょうか?

個人的にはオランダ語の lente(レンテ)という単語の響きが好きです。

なおラテン語の ver はひとりぼっちのようですが、英語の語彙にこんな形で入り込んでいます。

vernal [və́ːrnl]

adj.

1 春の

vernal sunshine
春の日差し

4 ⦅詩語⦆青春の、若々しい

vernal years
青春時代

語源

1534.<ラテン語 vernālis〔vernus「春の」(vēr「春」より)の派生語〕
vernally adv.

「ランダムハウス英和大辞典 第2版」

「春分」は英語で vernal equinox。まもなくやって来る「春分の日」は Vernal Equinox Day。一年に一度、vernal という形容詞のことを思い出す日でもあります。

 

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北欧のチョコレート

バレンタインデーの今日は北欧やバルトの言葉で「チョコレート」を何と言うのか調べてみました。

アイスランド語 súkkulaði
スウェーデン語 choklad
デンマーク語 chokolade
ノルウェー語 sjokolade
フィンランド語 suklaa
エストニア語 šokolaad
ラトビア語 šokolāde
リトアニア語 šokoladas

 

北欧の中では仲間外れになりがちなフィンランド語ですが、今回の suklaa は周辺国の言葉によく似ています。

互いの関係性を確認するため、Wiktionary でそれぞれの語源を調べてみました。

アイスランド語 súkkulaði デンマーク語の chokolade より
スウェーデン語 choklad
デンマーク語 chokolade スペイン語の chocolate より
ノルウェー語 sjokolade スペイン語の chocolate より
フィンランド語 suklaa スウェーデン語の choklad より
エストニア語 šokolaad
ラトビア語 šokolāde
リトアニア語 šokoladas

 

断片的な情報ですが、こうして見ると各国のチョコレートはスペイン語から伝わった言葉であることがわかります。

またスペイン語の chocolate は現在のメキシコの地に住んでいたアステカ民族の古典ナワトル語に由来するという説が有力なようです。

古典ナワトル語からスペイン語、そして世界の言語へ。

今や世界で知らない人のいないチョコレートという言葉には壮大な旅の軌跡があるんですね。

光彩陸離

サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』を読み返していたら、登場人物の会話の中に出てきたこんな表現が目にとまりました。

「留守番の子守りに聞いたのさ。その子と電話で光彩陸離たる会話を交わしたからね。…」

J・D・サリンジャー「ナイン・ストーリーズ 愛らしき口もと目は緑」野崎孝訳

光彩陸離という言葉の意味がわかりません。さっそく辞書を引いてみました。

こうさいりくり[光彩陸離]

〔文〕まぶしく光りかがやくようす。

「ーとした宝石」

「三省堂国語辞典 第七版」

きれいな日本語だなあと思いつつ、いったい原文ではどのような表現だったのか気になります。

手元に原書もあったので、確認してみました。

Their baby-sitter. We’ve had some scintillating goddam conversations.

J.D.Salinger “Nine Stories – Pretty Mouth and Green My Eyes”

原文では scintillating という単語になっています。

ただこの単語の意味もわかりません。こちらも辞書を引いてみました。

scintillating

ADJECTIVE

1 Sparkling or shining brightly.

‘the scintillating sun’

2 Brilliantly and excitingly clever or skillful.

‘the audience loved his scintillating wit’
‘the team produced a scintillating second-half performance’

Oxford Dictionaries

scintillating は「きらめく、才知あふれる」の意味。

ここから考えると、光彩陸離という訳語はもしかしたら凝りすぎなのかもしれません。

ただ scintillating という単語から光彩陸離という言葉を発想するその力技はすごいなとも思います。

 

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piano vs pianoforte

Wiktionary で piano という単語を調べると、次のような語源が出ています。

Short form of pianoforte, from Italian pianoforte, from piano (“soft”) + forte (“strong”).

「Wiktionary」

ここからわかるのは次の三点。

  1. piano はもともと pianoforte という単語の短縮形である。
  2. 英語の pianoforte はイタリア語の pianoforte に由来する。
  3. pianoforte の piano は soft(弱音で)、forte は strong(強音で)を意味する。

英語でピアノは piano、イタリア語でピアノは pianoforte。

それなら他のヨーロッパの言語ではどうなっているのだろう?と思い、『13か国語でわかるネーミング辞典』を引いてみました。

ピアノー piano
ピアノ piano
クラヴィーア Klavier
ピャノフォルテ pianoforte
西 ピアーノ piano
ピアーノ piano
ピアノ piano
ピアノ πιάνο
ファルテピヤーナ фортепиано
ガンチン 钢琴
ピアノ 피아노
ビャーノゥー بيانو

 

なんとなく piano vs pianoforte の構図になるのかと思ったら、ドイツ語の Klavier という単語が異彩を放っています。

調べてみると Klavier は key を意味するラテン語 clavis に由来するのだそう。

ドイツ語 Klavier piano
フランス語 clavier keyboard
ラテン語 clavis key

 

この Klavier を除けば、ヨーロッパでは piano が多数派。

ただ pianoforte はイタリア語だけなのかなと思いきや、ロシア語の фортепиано も順番こそ逆なもののイタリア語の仲間と呼べそうです。

しかしさらに調べてみると、現代のイタリア語では正式名称の pianoforte ではなく単に piano と呼ばれるケースも多いとのこと。

となると、pianoforte は未来において絶滅に向かう単語ということになるのでしょうか?

 

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鳥が空を

この前、鎌倉の由比ヶ浜あたりを自転車で走っていたときのこと。

冬空をすーっと一羽の鳥が飛んでいくのを見て、頭の中にこんな文が浮かびました。

A bird is flying in the sky.
フィン Lintu lentää taivaalla.
鳥が空を飛んでいる。

 

「空を」の部分を英語では in the sky と表すのに対して、フィンランド語では taivaalla と表します。

taivaalla は「空」を意味する名詞 taivas の接格[-llA]の形。

フィンランド語の接格はもともと「〜の表面に」を意味するので、英語に直訳すれば on the sky という感じでしょうか。

空の中ではなく表面を飛ぶというのは面白い感覚だなあ、、、などと考えていたときのこと。

日本語の「空を」というのもかなり不思議な表現なのではないかと思い始めました。

ロジカルに考えれば、鳥は「空を」飛ぶのではなく「空で」飛ぶのではないでしょうか?

ただ「鳥が空で飛んでいる」というのはもちろん不自然な日本語です。

辞書で格助詞の「を」を調べてみました。

(格助)

①動作・作用の対象をあらわす。

「犬が人ーかむ・風が木ー倒す・本ー読む・生徒ー教える・ペンキーかべにぬる」

②その結果にするものをあらわす。

③出発・分離する所をあらわす。から。

④経由する場所をあらわす。

「道ー行く・空ーとぶ・門ーはいる」

⑤経過する時間をあらわす。

⑥ある状態(にあるもの)を、動作・作用の対象のように言う。

⑦感情の対象をあらわす。

「三省堂国語辞典 第七版」

今回の「を」は④の意味。空を飛ぶという用例も出ています。

多くの人が「を」という格助詞から最初に連想するのは①の意味だと思いますが、実際にはずいぶん幅広い意味があるんですね。

日本語を外国語として学ぶ人はこんな風に「を」を分類して理解しているのだろうかと想像すると、外国語を学ぶというのは大変なことだと改めて思います。

 
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雪片と粉雪

気がつけば2018年もあとわずか。

毎年、この時期に聴きたくなる曲の一つにパルムグレンの「粉雪」があります。

「粉雪」の英題は snowflakes。

ただ改めて考えてみると、snowflake は「雪片(雪のひとひら)」という意味ですし、粉雪は「こまかな雪」という意味。似ているようで別のものだということに気が付きます。

粉雪の英訳としては、powdery snow, fine snow のような表現が一般的でしょうか。

では、そんな「雪片」と「粉雪」はフィンランド語で何と言うのでしょう?

調べてみると、こんな単語が見つかりました。

フィン
lumihiutale snowflake 雪片
puuterilumi powdery snow
fine snow
粉雪

 

lumihiutale の hiutale は「薄片」、puuterilumi の puuteri は「粉」の意味。

なおパルムグレンの「粉雪」のフィンランド語タイトルは英題の snowflakes と同じ lumihiutaleita となっているようです。

*lumihiutaleita は lumihiutale の複数分格の形

 

まとめ

フィンランド語の lumihiutale、英語の snowflake と日本語の粉雪は次のように意味が異なります。

フィン
lumihiutale snowflake 雪片
puuterilumi powdery snow
fine snow
粉雪

 

snowflakes という曲のタイトルから連想するのは、空から無数の雪のかけらが舞い落ちているイメージ。

それは粉雪かもしれないし、もっと大粒の雪かもしれません。

ただそのイメージを適切に写し取る日本語を見つけるのは案外難しいなとも思います。

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