光彩陸離
サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』を読み返していたら、登場人物の会話の中に出てきたこんな表現が目にとまりました。
「留守番の子守りに聞いたのさ。その子と電話で光彩陸離たる会話を交わしたからね。…」
J・D・サリンジャー「ナイン・ストーリーズ 愛らしき口もと目は緑」野崎孝訳
光彩陸離という言葉の意味がわかりません。さっそく辞書を引いてみました。
こうさいりくり[光彩陸離]
〔文〕まぶしく光りかがやくようす。
「ーとした宝石」
「三省堂国語辞典 第七版」
きれいな日本語だなあと思いつつ、いったい原文ではどのような表現だったのか気になります。
手元に原書もあったので、確認してみました。
Their baby-sitter. We’ve had some scintillating goddam conversations.
J.D.Salinger “Nine Stories – Pretty Mouth and Green My Eyes”
原文では scintillating という単語になっています。
ただこの単語の意味もわかりません。こちらも辞書を引いてみました。
scintillating
ADJECTIVE
1 Sparkling or shining brightly.
‘the scintillating sun’2 Brilliantly and excitingly clever or skillful.
‘the audience loved his scintillating wit’
‘the team produced a scintillating second-half performance’
scintillating は「きらめく、才知あふれる」の意味。
ここから考えると、光彩陸離という訳語はもしかしたら凝りすぎなのかもしれません。
ただ scintillating という単語から光彩陸離という言葉を発想するその力技はすごいなとも思います。
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