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光彩陸離

サリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』を読み返していたら、登場人物の会話の中に出てきたこんな表現が目にとまりました。

「留守番の子守りに聞いたのさ。その子と電話で光彩陸離たる会話を交わしたからね。…」

J・D・サリンジャー「ナイン・ストーリーズ 愛らしき口もと目は緑」野崎孝訳

光彩陸離という言葉の意味がわかりません。さっそく辞書を引いてみました。

こうさいりくり[光彩陸離]

〔文〕まぶしく光りかがやくようす。

「ーとした宝石」

「三省堂国語辞典 第七版」

きれいな日本語だなあと思いつつ、いったい原文ではどのような表現だったのか気になります。

手元に原書もあったので、確認してみました。

Their baby-sitter. We’ve had some scintillating goddam conversations.

J.D.Salinger “Nine Stories – Pretty Mouth and Green My Eyes”

原文では scintillating という単語になっています。

ただこの単語の意味もわかりません。こちらも辞書を引いてみました。

scintillating

ADJECTIVE

1 Sparkling or shining brightly.

‘the scintillating sun’

2 Brilliantly and excitingly clever or skillful.

‘the audience loved his scintillating wit’
‘the team produced a scintillating second-half performance’

Oxford Dictionaries

scintillating は「きらめく、才知あふれる」の意味。

ここから考えると、光彩陸離という訳語はもしかしたら凝りすぎなのかもしれません。

ただ scintillating という単語から光彩陸離という言葉を発想するその力技はすごいなとも思います。

 

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piano vs pianoforte

Wiktionary で piano という単語を調べると、次のような語源が出ています。

Short form of pianoforte, from Italian pianoforte, from piano (“soft”) + forte (“strong”).

「Wiktionary」

ここからわかるのは次の三点。

  1. piano はもともと pianoforte という単語の短縮形である。
  2. 英語の pianoforte はイタリア語の pianoforte に由来する。
  3. pianoforte の piano は soft(弱音で)、forte は strong(強音で)を意味する。

英語でピアノは piano、イタリア語でピアノは pianoforte。

それなら他のヨーロッパの言語ではどうなっているのだろう?と思い、『13か国語でわかるネーミング辞典』を引いてみました。

ピアノー piano
ピアノ piano
クラヴィーア Klavier
ピャノフォルテ pianoforte
西 ピアーノ piano
ピアーノ piano
ピアノ piano
ピアノ πιάνο
ファルテピヤーナ фортепиано
ガンチン 钢琴
ピアノ 피아노
ビャーノゥー بيانو

 

なんとなく piano vs pianoforte の構図になるのかと思ったら、ドイツ語の Klavier という単語が異彩を放っています。

調べてみると Klavier は key を意味するラテン語 clavis に由来するのだそう。

ドイツ語 Klavier piano
フランス語 clavier keyboard
ラテン語 clavis key

 

この Klavier を除けば、ヨーロッパでは piano が多数派。

ただ pianoforte はイタリア語だけなのかなと思いきや、ロシア語の фортепиано も順番こそ逆なもののイタリア語の仲間と呼べそうです。

しかしさらに調べてみると、現代のイタリア語では正式名称の pianoforte ではなく単に piano と呼ばれるケースも多いとのこと。

となると、pianoforte は未来において絶滅に向かう単語ということになるのでしょうか?

 

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鳥が空を

この前、鎌倉の由比ヶ浜あたりを自転車で走っていたときのこと。

冬空をすーっと一羽の鳥が飛んでいくのを見て、頭の中にこんな文が浮かびました。

A bird is flying in the sky.
フィン Lintu lentää taivaalla.
鳥が空を飛んでいる。

 

「空を」の部分を英語では in the sky と表すのに対して、フィンランド語では taivaalla と表します。

taivaalla は「空」を意味する名詞 taivas の接格[-llA]の形。

フィンランド語の接格はもともと「〜の表面に」を意味するので、英語に直訳すれば on the sky という感じでしょうか。

空の中ではなく表面を飛ぶというのは面白い感覚だなあ、、、などと考えていたときのこと。

日本語の「空を」というのもかなり不思議な表現なのではないかと思い始めました。

ロジカルに考えれば、鳥は「空を」飛ぶのではなく「空で」飛ぶのではないでしょうか?

ただ「鳥が空で飛んでいる」というのはもちろん不自然な日本語です。

辞書で格助詞の「を」を調べてみました。

(格助)

①動作・作用の対象をあらわす。

「犬が人ーかむ・風が木ー倒す・本ー読む・生徒ー教える・ペンキーかべにぬる」

②その結果にするものをあらわす。

③出発・分離する所をあらわす。から。

④経由する場所をあらわす。

「道ー行く・空ーとぶ・門ーはいる」

⑤経過する時間をあらわす。

⑥ある状態(にあるもの)を、動作・作用の対象のように言う。

⑦感情の対象をあらわす。

「三省堂国語辞典 第七版」

今回の「を」は④の意味。空を飛ぶという用例も出ています。

多くの人が「を」という格助詞から最初に連想するのは①の意味だと思いますが、実際にはずいぶん幅広い意味があるんですね。

日本語を外国語として学ぶ人はこんな風に「を」を分類して理解しているのだろうかと想像すると、外国語を学ぶというのは大変なことだと改めて思います。

 
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雪片と粉雪

気がつけば2018年もあとわずか。

毎年、この時期に聴きたくなる曲の一つにパルムグレンの「粉雪」があります。

「粉雪」の英題は snowflakes。

ただ改めて考えてみると、snowflake は「雪片(雪のひとひら)」という意味ですし、粉雪は「こまかな雪」という意味。似ているようで別のものだということに気が付きます。

粉雪の英訳としては、powdery snow, fine snow のような表現が一般的でしょうか。

では、そんな「雪片」と「粉雪」はフィンランド語で何と言うのでしょう?

調べてみると、こんな単語が見つかりました。

フィン
lumihiutale snowflake 雪片
puuterilumi powdery snow
fine snow
粉雪

 

lumihiutale の hiutale は「薄片」、puuterilumi の puuteri は「粉」の意味。

なおパルムグレンの「粉雪」のフィンランド語タイトルは英題の snowflakes と同じ lumihiutaleita となっているようです。

*lumihiutaleita は lumihiutale の複数分格の形

 

まとめ

フィンランド語の lumihiutale、英語の snowflake と日本語の粉雪は次のように意味が異なります。

フィン
lumihiutale snowflake 雪片
puuterilumi powdery snow
fine snow
粉雪

 

snowflakes という曲のタイトルから連想するのは、空から無数の雪のかけらが舞い落ちているイメージ。

それは粉雪かもしれないし、もっと大粒の雪かもしれません。

ただそのイメージを適切に写し取る日本語を見つけるのは案外難しいなとも思います。

机の上の本

いわゆる複数形のある言語を母語とする人が日本語を学ぶと、日本語に複数形の概念がないということにびっくりするようです。例えば、

「机の上に本があります」というフレーズを聞いて、日本語のネイティブは何冊の本を想像しているの?

というような質問をされたことがあります。

まあ一冊かなあ。。。と思いつつ、自信がなかったので Google 翻訳で英訳してみると、

机の上に本があります。
→ There is a book on the desk.

と変換されました。

ただ改めて考えてみると、英語のように複数形があったとしても結局わかるのはそのものが「1」か「2以上」かということ。

  • There is a book on the desk.
  • There are (some) books on the desk.

上の文で本は一冊に決まっていますが、下の文では本は三冊かもしれないし五冊かもしれません。そういう意味では、

There are (some) books on the desk. というフレーズを聞いて、英語のネイティブは何冊の本を想像しているの?

という逆質問も成り立つのではないでしょうか。

結局、日本語を母語とする人は「複数形なんてなぜあるの?」と言い続けるでしょうし、複数形のある言語を母語とする人は「なぜ複数形がないの?」言い続けることになるのでしょう。

いつの日か、この両者がわかり合える日は訪れるのでしょうか?

りんごとメロン

今日11月5日は「いいりんごの日」。

りんごは一年中スーパーにあるので、これまであまり旬を意識することがありませんでした。

ただ調べてみると今の時期がまさに旬のよう。

それなら「いいりんごの日」というちょっと無理のある語呂も許してあげたくなります。

今回はそんなりんごを世界の言葉で何というのか『13か国語でわかるネーミング辞典』 で調べてみました。

アップル apple
ポム pomme
アップㇷェル Apfel
メーラ mela
西 マンサーナ manzana
マッサ maça
アッポル appel
マールム malum
メーロン μηλον
ヤーブラカ яблоко
ピングオ 苹果
サグァ 사과
トゥッファーハ تفاح

 

ヨーロッパの言語では、英語の apple に音や綴りが似ているものが多いですが、スペイン語のマンサーナ(manzana)のように全く異なるものもあります。

そしておもしろいのはギリシア語のメーロン(μηλον)でしょうか。

メロン?

イタリア語のメーラ(mela)とラテン語のマールム(malum)も何となくメロン寄りな感じ。

このあたり、りんごとメロンの間には何か隠された関係があるのでしょうか?

 

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