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外国語学習法

『外国語上達法』読書ノート⑫ − まとめ

『外国語上達法』読書ノートの最終回です。

この連載では、岩波新書より出ている千野栄一先生の『外国語上達法』を読み、感じたこと、考えたことを一章ごとにまとめていきます。

目次はこちら。

1 はじめに
2 目的と目標
3 必要なもの
4 語彙
5 文法
6 学習書
7 教師
8 辞書
9 発音
10 会話
11 レアリア
12 まとめ(←本稿)

 

まとめ − 言語を知れば、人間は大きくなる

学習の習慣化

外国語の習得は始めたら規則正しく、たとえ短い時間でも毎日することが大切で、減食やジョギングと同じように少しずつでも毎日する方がいいことは明らかである。また残念ながら定期的な学習だけが、いささか記憶力の減退が感じられる人たちが若い人たちに対抗できる唯一の手段なのである。

P.199

外国語の学習を成功に導くために、最も大切なことは何でしょうか?

今の私なら、この質問に「学習を習慣化すること」と答えます。

以前なら、同じ質問に「モチベーションを保つこと」と答えていたかもしれません。

もちろん外国語の学習に限らず、何か新しいことに取り組む上でモチベーションは欠かせない要素です。

しかし外国語の習得には長い時間がかかります。その間には、どうしてもモチベーションが下がってしまう期間もあるでしょう。

日々の学習に取り組む上で、一日一日やる気を奮い起こしていたのでは、どうしても疲弊してしまいますし、いつか気持ちが折れてしまうかもしれません。

それよりは、歯を磨いたりシャワーを浴びたりするように、当たり前の習慣として語学の時間を日常生活に組み込めるようになれば、継続へのハードルもずいぶん下がるのだと思います。

 

なぜ外国語を学ぶのか

著者は、外国語を学ぶ人を「目的派」と「手段派」の二つのグループに分類しています。

「目的派」というのは、その言葉を学ぶこと自体が目的になっている人たちのことで、例えば純粋に言語学的な興味のためだけにラテン語を学ぶというようなケースを指します。

一方「手段派」というのは、その言語を実用的な目的で学んでいる人たちのことで、例えば仕事で海外とやり取りをする必要があるので英語を学んだり、ボサノヴァの歌詞を理解したいのでポルトガル語を学んだりと、様々なケースがあるでしょう。

英語のようなメジャーな言語では、大半の学習者は、手段派に分類されるのではないかと思います。

一方、サーミ語やエスキモー語のような少数言語では、目的派の比率が高くなるのかもしれません。

これはどちらか一方が優れているというような問題ではありませんが、筆者はやはり手段派の方が学習の成功率は高いと述べています。

私個人は、目的派の人にもシンパシーを感じるので、何とか頑張ってほしいという気持ちがあるのですが。。。やはり簡単ではないのでしょう。

 

どの外国語を学ぶのか

外国語を習得するとき、もしその外国語を選択できる場合、次のことは心掛けておかなければならない。英語に続いて、ドイツ語、フランス語、スペイン語、ロシア語などを習うのは辞書・学習書・講習会・会話など、あらゆる点で、あまり一般的でない言語を学ぶよりはるかに便利である。

P.210

日本人の場合、大半の人は第一外国語を選択したという経験がありません。気が付いたら英語を学んでいたというケースがほとんどでしょう。

おそらく大学の第二外国語の選択か、成人してから新しい外国語に取り組んでみようと思ったときに、初めて外国語の選択という問題と向き合うことになるのだと思います。

その際、ドイツ語・フランス語・スペイン語・ロシア語といったメジャーな言語を選ぶのか、それ以外の言語を選ぶのかによって、その先の経験はかなり異なるものになるでしょう。

前者の言語に取り組む場合は、何より教科書や辞書や学校を「選ぶ」という選択肢がありますし、それらの言語が使われている国の文化も様々な形で日本に入ってきます。ドイツ語に興味がなくても、ゲーテやニーチェの本を読むことはあるでしょうし、フランス語に興味がなくても、ルノワールやマティスの絵画を見ることはあるでしょう。

一方、それ以外の言語に取り組む場合は、教材は選ぶというより、与えられたもので何とかしなければなりませんし、その国の文化を知ろうと思ったら能動的に情報収集に行かない限り、なかなか向こうから飛び込んでくることはありません。

とはいえ、後者には後者なりの楽しみがあるのもまた事実です。

身の回りにものが溢れているからといって、人は必ずしも幸福になる訳ではありません。それは語学においてもまた事実であると言えるでしょう。

 

本章のまとめ

外国語の学習を成功に導くには、学習を習慣化することが必要。

なぜ外国語を学ぶのかを見極め、それからどの外国語を学ぶのかを吟味する。

最後に本書の末尾の文章を引用して、本稿を締めくくりたいと思います。

Čím více kdo zná jazyků, tím vícekrát je člověkem.− いくつもの言語を知れば知るだけ、その分だけ人間は大きくなる。

P.212

『外国語上達法』読書ノート⑪ − レアリア

『外国語上達法』読書ノートの第十一回目です。

この連載では、岩波新書より出ている千野栄一先生の『外国語上達法』を読み、感じたこと、考えたことを一章ごとにまとめていきます。

目次はこちら。

1 はじめに
2 目的と目標
3 必要なもの
4 語彙
5 文法
6 学習書
7 教師
8 辞書
9 発音
10 会話
11 レアリア(←本稿)
12 まとめ

 

レアリア − 文化・歴史を知らないと・・・

レアリアとは?

チェコ語に「レアーリエ」(reálie)という語があり「ある時期の生活や文芸作品などに特徴的な細かい事実や具体的なデータ」という説明がついている。これは本来ラテン語から来た語で、英語にも realia、ドイツ語にも Realien、ロシア語にも реалии という形で姿を留め、これらの語はいずれも複数扱いされている。

P.178

外国語を学ぶ際には、ことばそのものだけではなく、その背後にある文化についても合わせて学んでいきます。

例えば、

A: How are you?
B: I’m fine.

というやり取り一つにしても、単に「調子はどう?」「元気だよ」という意味を学ぶだけではなく、日常友人・知人と会ったときにはこのような挨拶を交わすのが習慣であるということを背景知識として学ばなくてはなりません。

そういう意味では、語学というのは一種の文化人類学であるとも言えるでしょう。

本章では、チェコとイギリスにおける「お茶」の飲み方の違いが紹介されています。

それによれば、イギリスではミルクを入れて飲むのが一般的ですが、チェコではレモンやラムやコニャックを入れて飲むのだとか。

つまりイギリスの人がチェコに行き、何も知らずにカフェで「お茶」を注文すれば、思いもよらない飲み物が出てくるということになります。

このような例というのはそれこそ無数にありますし、そもそも異なる言語の異なる単語同士(お茶と tea など)が完全なイコールで結ばれるということは決してないとも言えるでしょう。

 

コーヒー一つをとってみても

coffee という単語から、真っ先に連想するのはどんな飲み物でしょうか?

私の場合、学生の頃はコーヒーがあまり好きではなく、本格的に飲み始めたのは、社会人になってからでした。

よって中学や高校の頃は coffee といっても、想像するのは、家にあったインスタントコーヒーくらいなものです。

その後、社会人になって、どういう訳かコーヒーが大好きになり、様々なカフェでドリップコーヒーやカフェオレなどを飲むようになりました。

ニュージーランドやオーストラリアにいたときには、フラットホワイト(flat white)というエスプレッソベースのコーヒーをよく飲んでいたので、そのときの味を懐かしく思い出すこともあります。

つまり coffee という単語一つをとってみても、私自身の経験とともに、そこから連想する視覚的・味覚的なイメージはどんどん広がっているということになるのです。

 

年を取れば取るほどに。。。

筆者は、スポーツ選手と外国語学習者を比較し、前者はおおむね20代・30代が実力のピークであるのに対して、後者はそれ以降も実力が伸びていく理由を次のように述べています。

確かに長年にわたってある外国語をたしなんでいれば、知っている単語の数も増し、イディオム(慣用句)にも通じ、一にらみすれば文法構造もたちどころに分かるというようになる。しかし、このような経験というか慣れというものでは説明しきれない何物かがあると感じていたが、実はそれがレアリアの知識の量の蓄積なのである。

P.191

自分の身を振り返ってみても、英語を学んでいた学生時代とフィンランド語を学んでいる現在を比較すると、記憶力や集中力といった面ではずいぶん落ちているのだろうなと思います。

しかしそれ以上に、フィンランドを含む欧米の文化に関する知識はかなり増えていますし、言葉というものに対する理解もすすんでいるため、現在の方が外国語の学習に有利な面もあるでしょう。

そんな風に、選手寿命が長いというのも外国語学習の素晴らしい面の一つなのではないでしょうか。

 

本章のまとめ

外国語学習に書かせないレアリアとは、この世界に関する広範な背景知識の集積である。

ことばそのものの学びが語彙や文法を使って建物を組み立てることだとすれば、レアリアの集積はその土台として学習を下支えする大切な役割を担う。

 

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『外国語上達法』読書ノート⑩ − 会話

『外国語上達法』読書ノートの第十回目です。

この連載では、岩波新書より出ている千野栄一先生の『外国語上達法』を読み、感じたこと、考えたことを一章ごとにまとめていきます。

目次はこちら。

1 はじめに
2 目的と目標
3 必要なもの
4 語彙
5 文法
6 学習書
7 教師
8 辞書
9 発音
10 会話(←本稿)
11 レアリア
12 まとめ

 

会話 − あやまちは人の常、と覚悟して

Learning & Use

外国の人と流暢に会話をかわしている人をみて、自分もああいう風に話せたらなと願うのは自然な感情であろう。

P.162

会話というのは日常のありふれた技術でありながら、外国語の学習においては「日常会話ができる」ということがしばしば最終目標になることすらあります。

「日常会話ができる」というのは、本当にそれほど高いハードルなのでしょうか?

英語の例で言うと、日本人の多くはすでに一定の会話力を身に付けています。

義務教育を終えた人なら、外国人を前にして、少なくとも自己紹介をしたり、相手の名前や出身を訪ねたりすることはできるでしょう。

しかしそれをフランス語やポルトガル語でやろうとしても、ほとんどの日本人はできないはずです。

そういう意味で日本人に足りないのは、よい意味での開き直りではないでしょうか。

外国語の習得プロセスにおいて、学ぶこと(learning)と使うこと(use)は一対を成しています。

特に語学の中級以降では、学習における use の割合を意識することで、上級への道が見えてくると言えるでしょう。

*ここで言う use というのは、会話だけではなく、読書・映画鑑賞・メールのやり取りなど様々な言語活動の総称を指しています。

学んだだけで使わない外国語というのは、購入しただけで演奏しない楽器のようなものではないでしょうか。

そういう意味で英語の授業というのは、音楽や美術や体育と同じ実技教科であるべきだというのが、私の考えです。

 

会話に伴う二つの困難

外国語で書いたり話したりできるようになるためには、これまでバラバラに習得されて来たその外国語の知識を、一つのまとまりのある全体へと組み上げていくプロセスを学ばねばならない。

P.163

会話が持つもう一つの大きな困難は、会話は翻訳と違って、短い時間しか考慮のための時間が与えられていないことである。

P.167

外国語を”使う”ということは、その知識を断片的にではなく統合的に使うということを意味しています。

さらに会話のようなリアルタイムコミュニケーションにおいては、瞬間的に相手の話していることを理解し、瞬間的に自分の考えを伝える必要があります。

こうして書いてみると、日常会話のハードルが高いというのも頷ける気がします。

なお外国語の会話が苦手という場合には、相手の話していることが聞き取れないケースと、伝えたいことが上手く言葉にできないケースがあるでしょう。

後者を克服するための実戦的な練習としては、通訳の訓練に使われるクイック・レスポンスがあります。

みなさんの中には、単語カードを作って、語彙の暗記に取り組んでいる人もいるでしょう。

普通のやり方では、片面に日本語、片面に英語を書いておき、日本語を見て英語に直すことができたらOKという風に、覚えている単語と覚えていない単語を選り分けていくのだと思います。

そこで単語を選り分ける基準を、英語に直すことができたらOKではなく、2秒以内に英語に直すことができたらOKというようにスピードを意識したものにしてみましょう。

さらに慣れてきたら、単語ではなくフレーズや文の単位で同様の練習を行っていきます。

これはアウトプットのための基礎訓練としては、かなり有効な方法だと思います。ぜひお試しください。

 

Beyond Accuracy

アウトプットを困難にするもう一つの要因に、間違いへの恐怖心があります。

日本人の場合は、特にこの要因が大きいのかもしれません。

しかし下記のような文は、学校のテストでは減点されるかもしれませんが、相手に過不足なく意味を伝えることはできています。

*My sister like tennis.(三単現の s がない)
*Yesterday we play tennis.(過去形の ed がない)

科学的な根拠はないのですが、英語というのは比較的、文法が間違っていても通じやすい言語なのではないかと思います。(格変化などの語形変化が豊富な言語ではおそらくこうはいかないでしょう。)

それでもどうしても間違いが怖くなってしまう人は、外国の人にカタコトの日本語で話されたときにどう感じたか思い出してみてください。

きっと「ほほえましい」とか「頑張っているな」とは思っても、あまり不愉快になったということはないのではないでしょうか。

 

本章のまとめ

会話力アップのために必要なのは、

  • 学んでいる言葉を”使う”こと
  • アウトプットのスピードを意識すること
  • そして何よりも間違いを恐れないこと!

『外国語上達法』読書ノート⑨ − 発音

『外国語上達法』読書ノートの第九回目です。

この連載では、岩波新書より出ている千野栄一先生の『外国語上達法』を読み、感じたこと、考えたことを一章ごとにまとめていきます。

目次はこちら。

1 はじめに
2 目的と目標
3 必要なもの
4 語彙
5 文法
6 学習書
7 教師
8 辞書
9 発音(←本稿)
10 会話
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12 まとめ

 

発音 − こればかりは始めが肝心

耳のよい人 vs 普通の人

語学学校に行くと、必ず一人や二人、いわゆる「耳のよい」人に出会うことがあります。

他の生徒がみな訛りのある英語を話しているのに、一人だけネイティブのようなリズムとイントネーションを身に付けている人に会ったことはありませんか。

彼らの語彙や文法のレベルは、他の生徒と案外変わらなかったりします。しかしこと発音となると、一人だけ違う世界に属しているのです。

文法の習得や語彙の習得と比べて発音の練習に人気がないのには、いくつかの理由がある。その一つは、神様の不公平である。

(中略)

何の努力もなしにあっという間に外国人と見分けられないくらい上手に発音のできる人もいれば、いつまでたってもたどたどしい人もいる。そして、一つの外国語の発音のいい人は次の外国語の発音までいいのであるから、始末が悪い。

P.148

こうして見ると、発音の善し悪しには「継続」や「努力」では追いつけない才能というものがあるのかもしれません。

私自身は、この種の才能?は全くない人間ですので、現実的なところで、

  1. 相手にきちんとメッセージが伝わるレベル
  2. 長時間会話を続けていても、相手が不愉快にならないレベル

以上の二つを目標として設定しています。レベル1は最低限の必達目標。レベル2は努力目標といったところでしょうか。

 

[l]と[r]の区別というハードル

私自身は長い間英語を勉強してきて、例えば[f/v]や[th]の音は意識しなくても自然に出せるようになりました。

しかし[l]と[r]の区別は未だに高いハードルです。

語頭に[l/r]が来るときはまだよいものの、語中に[l/r]が混在する thrilling などの単語はゆっくり発音することすら大変です。

また[l/r]の聞き分けに関しては、こんな iPhone アプリが出ています。
 
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このアプリは、ネイティブスピーカーの発音を聞いて[l]と[r]を聞き分けるというもの。

例えば「ライト」と言われたら、light と right のどちらが発音されたのかを選択します。

これがなかなか難しく、場合によっては正答率が5割くらいになります。二択問題で5割ということは、当てずっぽうで答えているのと同じですね!

 

普通の人が発音を良くするには?

筆者は、よい発音を身に付けるには初めが肝心と述べています。ひとたび間違った発音を身に付けてしまうと、後からそれを端正するのは非常に難しいとのこと。

だとすると大人になってから、発音を良くすることは不可能なのでしょうか?

筆者は音声学の知識が発音を良くするのに役に立つと述べています。例えば、本書にはこんな例がのっていました。

日本語のザで示される子音は、語頭では[dz]であるのに、母音間では[z]である。これは、「カザリ」、「アザミ」……といったとき、舌の先がどことも接触しないのに、「ザリガニ」、「ザブトン」といったときには舌の先が上の歯ぐきの裏のでっぱっているところにあたることで、違いが確認される。すなわち、日本人は[z]の音も、[dz]の音も持っているのに、それぞれ違った環境で使い分けているのである。

P.155

このような知識があれば、cars[ká:z]と cards[ká:dz]の発音の違いなども理解しやすいのではないでしょうか。

こんな風に知識から入るのも、普通の人のささやかな抵抗と言えるでしょう。

 

本章のまとめ

発音に関してはもともと「耳のよい」人というのが確かに存在します。

そうではない普通の人は、まずは相手に理解してもらうといった現実的な目標を立てつつ、音声学の知識で発音に関する理解を深めていきましょう。

『外国語上達法』読書ノート⑧ − 辞書

photo credit: Darren W via photopin cc

『外国語上達法』読書ノートの第八回目です。

この連載では、岩波新書より出ている千野栄一先生の『外国語上達法』を読み、感じたこと、考えたことを一章ごとにまとめていきます。

目次はこちら。

1 はじめに
2 目的と目標
3 必要なもの
4 語彙
5 文法
6 学習書
7 教師
8 辞書(←本稿)
9 発音
10 会話
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12 まとめ

 

辞書 − 自分に合った学習辞典を

初めて本格的に使った英和辞書は『アンカー英和辞典』でした。おそらく高校に入った頃に、英語教師だった祖父からプレゼントしてもらったのを覚えています。

その後、一番長く使ったのは『ジーニアス英和辞典』と『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』の2冊でしょうか。

ことばが好きな人にとって、辞書は宝の山。きっとみなさんもお気に入りの一冊があることでしょう。

書店に行けば英語の辞書は選び放題。それだけにどれにしたらよいのか迷ってしまいます。

そんな訳で、今回は辞書の選び方について考えてみましょう。

 

頻度数

著者が本書で繰り返し強調するのは、単語の使用頻度は、語彙の学習に取り組む上での大切な指針になるということ。

特に初学者の場合は、何よりもまず使用頻度の高い語彙を覚えていかなければなりません。

現在、日本で発売されているほとんどの学習英和/英英辞書には、この使用頻度への配慮がなされています。頻度の高い語は、太字や異なる色で表記されているケースが多いようです。

また一定以上の頻度数の語をまとめて見たい場合には、iPhoneアプリの辞書を利用するのが便利です。

例えば、私が使っている『ウィズダム英和・和英辞典』には、重要語の一覧が付いています。

先ほどの画面から、例えば「Aランク」をタップすると、中学必修相当語彙の約1,300語のリストを見ることができます。

もし知らない単語があれば、その単語をタップすると、すぐにその語義のページへ飛ぶことができます。

一定レベルの英語を学習し終えた段階で、この語彙リストを使って、覚えるべき単語に漏れがないかどうかのチェックを行うこともできるでしょう。

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逆引き

近年になって世界の有力な言語で揃ってできてきた辞書に、逆引き辞典がある。

普通の辞書では語のはじめの方から、a, aa, ab, aba, ……, x, y, za, zb, zx, zy, zz という風に語が並べてあるのに対し、a, aa, b, ab, bb, c, ac, bc, cc, ……, x, ax, bx, cx, y, ay, by, cy, z, az, bz, cz, xz, yz, zz, azz, zzz というように、語の終りから a, b, c 順に揃えてある辞書である。

P.131

逆引き辞書というのは、普通に語学に取り組んでいる分には、絶対に必要なものではありません。

しかし手元にあると、工夫次第でいろいろと面白い使い方をすることができます。

この逆引きに関しては、本書『外国語上達法』の初版が発売された1985年時点では想像もできなかった進歩が起こっています。

それが前述の iPhoneアプリなどを利用した後方一致検索機能です。

先ほども紹介した『ウィズダム英和・和英辞典』には、後方一致検索機能というものが付いており、例えば[-ism]で終わる単語にはどのようなものがあるか知りたければ、簡単に一覧を参照することができます。

なお本書によると、逆引き辞典というのは、もともと詩の韻を探すために作られたのだとか。だとすると現代の詩人は、昔の詩人に比べて、大変恵まれた環境にいるのかもしれませんね。

 

よい辞書の条件

また本章では、よい辞書の条件として以下の項目が挙げられています。

一、探している語が出ている辞書

二、その語に、自分の読んでいるテキストに合う訳の出ている辞書

三、訳の他にも、必要とする文法的事項が出ている辞書

四、熟語と一般にいわれている、語以上のレベルで現われる用法がよく出ている辞書

五、よい用例のあがっている辞書

六、読み易く、興味を持たせるように作られている辞書

七、引き易い辞書

八、持ち運びに便利な辞書

九、値段の安い辞書

P.133〜134

この中のいくつかの項目はそれぞれに矛盾する点もあります。例えば「探している語が出ている」ということと「持ち運びに便利」ということは、おそらく相反する要素でしょう。探している語がなるべく出ているようにするためには、収録語数を増やさなければならないからです。

要は学習の段階ごとに適切な辞書を選ぶべきであり、初心者は初心者向けの辞書を、上級者は上級者向けの辞書を使うべきなのだと思います。

ただしこれはあくまで英語やメジャーな言語の学習者に言える話であって、それ以外のマイナーな言語の学習者にとっては、辞書を選ぶという贅沢はほとんど許されていないということも付け足しておかなければなりません。

世界には、その言語の辞書が存在するというだけで、涙を流して感激しなければならないような言語の方が圧倒的に多いというのが現実です。

 

私が好きな辞書

最後に私が好きな辞書を2点挙げておきたいと思います。
 

1)熟語本位英和中辞典

初版が1933年という大変に歴史のある英和辞書です。

この辞書の最大の特徴は、豊富な用例とその訳文の素晴らしさにあります。英語が好きな方なら、ぜひ手元に一冊置いておきたい辞書と言えます。

この辞書については、以前のエントリーでも紹介しました。

[参考]英和辞書を読んでみる − withの場合 | Fragments

Amazon.co.jp を見ると、残念ながら現在は中古品のみの扱いとなっているようです。

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2)探検する英和辞典

翻訳者の飛田茂雄さんが、翻訳の過程で見つけた既存の辞書にはのっていない単語や表現をまとめた一冊。

また私たちがよく知っている単語が、思わぬ意味で使われているといった例も豊富に紹介されています。

実際の用例とともに筆者による解説がのっており、それぞれの項目をコラムのように楽しんで読むことができる一冊になっています。

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本章のまとめ

よい辞書の条件は、

  • 頻度数に配慮があること
  • 自分のレベルに合っていること

そして英語やフランス語に取り組んでいる人は、何よりも辞書を選ぶことができるという幸運を噛み締めましょう!

 

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『外国語上達法』読書ノート⑦ − 教師

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『外国語上達法』読書ノートの第七回目です。

この連載では、岩波新書より出ている千野栄一先生の『外国語上達法』を読み、感じたこと、考えたことを一章ごとにまとめていきます。

目次はこちら。

1 はじめに
2 目的と目標
3 必要なもの
4 語彙
5 文法
6 学習書
7 教師(←本稿)
8 辞書
9 発音
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12 まとめ

 

教師 − こんな先生に教わりたい

語学力

まず第一に、語学教師は自身、その語学がよくできなければならない。

P.108

教師自身の語学力をどこまで求めるかは学習者のレベルにもよるでしょう。

しかしいくら初学者が相手でも、間違った内容を教えていたのではどうしようもありません。やはり一定の語学力は優れた語学教師であるための最低条件と言えます。

ただ最近の日本では、このことに厳しくなりすぎるあまり、過剰なネイティブ信仰になっているところもあるのではないでしょうか。

もちろん(特に中級以降)ネイティブの先生に習うメリットはあると思いますし、そのこと自体を否定するつもりはありません。

ただし私自身は、どんなに立派な経歴があったとしても、外国語の本格的な学習経験がない先生だけは困るなあという気持ちがあります。

日本人の先生であれ、ネイティブの先生であれ、語学の大変さや楽しさを共有できる先生がよいと思うのですが、いかがでしょうか?

 

指導技術

優れた語学教師の第二の資格は、教え方が上手であるということである。

P.113

昔、塾の講師をやっていたことがあるので、指導技術の大切さいうのは骨身に沁みて分かっているつもりです。

指導技術というのは、大学などで教えてくれるものではなく、各々が書籍を読んで研究したり、研修会に出席したり、生徒からのフィードバックを参考にしたりすることでレベルアップに努めるよりほかないものだと思います。
 

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私自身は、語学教室で教え方が上手な先生というのは、何よりも生徒を参加させること、アウトプットを促すことが上手な先生だと思います。

初学者が中心の教室では、先生が一番喋っているという状況はある程度やむを得ないのですが、その中でも生徒が喋る時間を確保するための工夫を凝らしている先生には非常に共感できます。

 

熱意と魅力

よい教師の第三番目の資格は、教えることに対する熱意というか、その先生の個人的魅力というか、この先生についていかないと損をするというような気持ちにさせる全人格というようなものである。

P.118

私自身が習っていて楽しい先生というのは、何よりもことばが好きでたまらないというオーラを出している先生です。

そういった先生というのは、例えば英語で三単現のSなどの文法項目を導入するときに、予め決められた規則として紹介するのではなく、それがいかに特別でおもしろい現象かということを延々と語ってくれたりします。

そういった先生のクラスからは、将来本格的に語学に取り組んでみようという生徒が多く出てくるのではないでしょうか。

 

究極の語学教師とは?

最後に、私が考える究極の語学教師像について書いてみたいと思います。

次のような状況を想像してみてください。

あなたは海外で日本語を教えている日本語教師です。あなたの生徒の1人は1年後に日本の大学への留学を考えています。その生徒があなたに次のように言ってきました。

「先生に言われたことはどんなことでもします。1年で日本語の日常会話をきちんと話せるようにしてください。」

これこそは語学教師に突き付けられる究極の要求ではないでしょうか。

もちろん万人に共通の学習法などある訳がないので、その学習者のバックグラウンド(年齢、学習歴など)を勘案しながら、いっしょに学習計画を立てていくことになるのだと思います。

そうではあっても、このような要求にきちんと向き合い、適切な方向に導くことができること。それが語学教師に必要な能力だと言ったら厳しすぎるでしょうか。

 

本章のまとめ

語学教師に必要な資質は以下の3点。

  • その言語をよく知っていること
  • 教え方が上手であること
  • 教育への熱意と人間的な魅力があること

一つずつ見ると当然のようにも思える3項目ですが、これを全て満たす先生というのをいったい何人思い浮かべることが出来るでしょうか。そう考えると、外国語を教えるということは究極の専門職なのだと思わずにはいられません。

 

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