『カラマリ・ユニオン』アキ・カウリスマキ監督
フィンランドの映画監督アキ・カウリスマキの作品を集めた Blu-ray Box が3月に発売されました。
デビュー作の『罪と罰』から、2006年の『街のあかり』まで、何と長編16作品+短編8作品!
まずは未見の作品から観てみようと思い、最初に選んだのが1985年の作品で、デビュー二作目に当たる『カラマリ・ユニオン』。
物語の冒頭、カメラは場末のレストランに集まった15人の男たちを映し出します。男たちの名前は全員フランク(!)。
「我々はもうこの街では生きていけない」というリーダー格の男(もちろん名前はフランク)。
彼らは街の反対側にあるという理想郷エイラを目指して出発することを決意します。
打ち合わせが終わり、建物の外を歩いていく男たちの姿に音楽が重なるシーンは『レザボア・ドッグス』のオープニングシーンを思い出しました。
とにかく映像の切り取り方がスタイリッシュでかっこいい。
物語はその後、15人のフランクと1人のペッカが、それぞれのやり方で理想郷に向かう、そのおかしな道行きを、モノクロームの美しい映像で追いかけていきます。
全体を貫くストーリーはあってないようなもの。
この作品をナンセンス、笑えないコメディと称することもできるでしょうが、それ以上のキラリと光る何かが一つ一つのシーンに鏤められているような気がします。
笑ってしまったのは、物語の中盤、3日間飲まず食わずのマッティ・ペロンパーがスーパーのウインドウ越しに見た魚の缶詰について言うこんなセリフ。
缶はウインドウに
ウインドウは警察に
警察は恐怖に守られてる
たかが6匹のイワシにそれだけのバリケードだ
現実離れしたシークエンスから、物語に寓話的な意図を読み取ることもできると思いますが、それは観る人の自由に委ねられている感じ。
いずれにせよ映画の全編を通して、監督が好きなように撮っているということが、ひしひしと伝わってきます。
理想郷エイラへの道は険しく、フランクたちは途中一人また一人と脱落していきます。最後に残ったフランクたちはエイラに辿り着くことができたのか? それはぜひ本編でご確認ください。
ところで、タイトルのカラマリ・ユニオン(Calamari Union)いうのは、どんな意味なのでしょう?
これはフィンランド語ではなく英語で、calamari というのは「イカ」のこと。
calamari
[複数扱い]イカ(squid)<特にイタリア料理での呼び名>
『ジーニアス英和大辞典』
すなわち Calamari Union は「イカ同盟」という意味になります。
これだけだと全然意味がわからないのですが、おそらくは北欧の歴史に出てくるカルマル同盟(Kalmar Union)のもじりなのではないでしょうか。
カルマル同盟(カルマルどうめい)は、1397年にデンマーク・ノルウェー・スウェーデンの3王国間で締結された同盟(物的同君連合)。締結場所が現スウェーデンのカルマルであったので、カルマル同盟と呼ばれる。
Wikipedia「カルマル同盟」より
カルマル同盟とイカ同盟。
- Kalmar Union
- Calamari Union
並べてみると、たぶんこの説で間違いないと思うのですが。。。どうでしょう??
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