フィンランド語学習記 vol.237 − 感情使役文
前回のエントリーで、
*minua(私を)、väsyttää(疲れさせる)
というおもしろい形の文を紹介しました。
フィンランド語学習記 vol.236 − 疲れる/疲れさせる | Fragments
その後『フィンランド語文法ハンドブック』を調べてみると、このようなタイプの文に感情使役文という名前が付いていることがわかりました。
フィンランド語では感情や感覚に関わる話をする際に、人間を分格の目的語において表現することがしばしばあります。
Minua jännittää.(私はどきどきする。)
(中略)
Sinua hermostuttaa.(あなたは緊張している。いらいらしている。)
Häntä huolestuttaa.(彼は心配する。)
『フィンランド語文法ハンドブック』P.244-245
それぞれ直訳をすれば、
‘Minua jännittää.’ は「私をどきどきさせる」
‘Sinua hermostuttaa.’ は「あなたを緊張させる」
‘Häntä huolestuttaa.’ は「彼を心配させる」
という構造の文になっています。
それにしても感情使役文という命名はなかなか言い得て妙。
使役文というと、英語をやっていた人なら、let や make などの使役動詞を使った文を思い浮かべる人もいるでしょう。
このように使役文には時に強制的な色合いがあります。(もちろんそうではない文もありますが。)
そのため感情使役文という名前は、私たちが何らかの感情を感じているとき、自分が主体的にその感情を味わっているのではなく、感情の操り人形になっていることもあるということを思い出させてくれます。
なかなか深みのある命名だなあと思いました。