3月 13, 2014
whitebear /
フィンランド語 /
フィンランド語教室のテキストを読んでいたら、こんな表現が出てきました。
He istuvat sohvalla käsi kädessä .(彼らは手をつないで ソファーの上に座っています。)
*he(彼らは)、istua(座る)、sohva(ソファー)、käsi(手)
käsi kädessä は「手をつないで」の意味。
käsi が「手」の意味であることはわかるものの、kädessä の意味は何だろう?と思い、調べてみることに。
kädessä の語末についている[-ssä]は、「〜の中に」を表すフィンランド語の格語尾。
よって käde という単語があるのかと思い、辞書を引いてみたものの見つからず。
käde(?)
格語尾[-ssä]を付ける
→
kädessä(?の中に)
??
考えること数分。。。わかりました!
フィンランド語では、語幹の中に[k, p, t]の文字が含まれているときは[-ssä]のような格語尾の接続に伴って、語幹の[k, p, t]部分が変化することがあります。
下記の[k, p, t]変化表を参照すると、下から4行目の[t←→d]という変化が目にとまります。
kk
←→
k
k
←→
×
uku
←→
uvu
yky
←→
yvy
nk
←→
ng
lke
←→
lje
rke
←→
rje
hke
←→
hje
pp
←→
p
p
←→
v
mp
←→
mm
tt
←→
t
t
←→
d
nt
←→
nn
lt
←→
ll
rt
←→
rr
すなわち格語尾[-ssä]の接続に伴い、語幹部分が、
käte → käde
と変化したと考えられます。
それなら kate という単語があるのだろうと思い、辞書を引いてみたもののやはり見つからず。
käte(?)
[k, p, t]の変化を適用
→
käde
käde
格語尾[-ssä]を付ける
→
kädessä(?の中に)
??
ふたたび考えること数分。。。今度こそわかりました!
さきほどの[k, p, t]の変化を適用する前に、フィンランド語にはさまざまな語幹変化のルールがあります。例えば、
語末が[-si]の単語は、語幹をもとめる際に語末が[-te]に変化する。
vesi → vete(水)
käsi → käte(手)
つまり「手」を意味する単語 käsi が次のような段階を経て kädessä に変化したということなんですね。
käsi(手)
語幹をもとめる
→
käte
käte
[k, p, t]の変化を適用
→
käde
käde
格語尾[-ssä]を付ける
→
kädessä(手の中に)
これですっきり。
冒頭に挙げた文の käsi kädessä はいわゆる英語の hand in hand に当たる表現だということもわかりました。(*フィンランド語の内格[-ssä]は英語の in に当たる。)
He istuvat sohvalla käsi kädessä .(彼らは手をつないで ソファーの上に座っています。)
ということで今回のエントリーは kädessä という謎の単語の辞書形が、すぐ左隣にある käsi であることに気付くまで10分以上もかかったというお話でした。
おそるべし、フィンランド語。