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フィンランド語学習記 vol.14 − ウムラウトの憂鬱

ある日のフィンランド語クラスで、先生がこんなことを話しておりました。

学生の一人がノートにフィンランド語の作文を書いているのを見ていると、何とウムラウトの点(ä, ö などの点)がまったく書かれていません。不思議に思って理由を聞いてみると、その学生さんは「点は書かないことにしてるんです」とさらっと一言。

当然、先生は[ä]と[a]はまったく違う音なのに!と怒っておりました。

それはひどい話だなあと思いつつ、一方ではこんなことも思ってしまったのです。

その学生さんの気持ちわかる。

というのは、たしかにウムラウトを書くのはめんどうなのです。特にディクテーションなど速記をしているときに Hyvää päivää. なんて出てくると、もう身悶えしたくなってしまいます。とりあえず点は後で書く!ごめん!という感じで。

大変なのはノートに書くときだけではなく、例えばこのブログ。Macで書いているのですが、ウムラウト文字は、

[option]+[u]+[a]=[ä]

[option]+[u]+[o]=[ö]

と入力しなければなりません。[ä]や[ö]一文字を入力するのにキーボードを3回も叩かなければならないのです。

そんなこともあり、なんだか非効率な文字だなあと思っていたのでした。

しかしある日突然気付いてしまったのです。実は日本語にもあるのですね。このウムラウトが。

先生 「きみ、このかっこうって何?」
生徒 「あ、それはがっこうですね。」
先生 「すると、このハスってのは。。。」
生徒 「それはバスです。」
先生 「何で(゛)を書かないの?」
生徒 「点は書かないことにしてるんです。」
先生 (怒)

という訳で日本語に置き換えて考えてみると、先生の気持ちがよくわかったのでした。

結論:ウムラウトはきちんと書きましょう。

『外国語をはじめる前に』黒田龍之助著

第二言語習得におけるモチベーション研究の嚆矢となった Gardner and Lambert (1972) では外国語を学ぶモチベーションを integrative motivation と instrumental motivation の両面から分析しています。

おおまかに定義すれば、integrative motivation(統合的動機)とは、その外国語が話されているコミュニティ自体に帰属したいというモチベーション。一方、instrumental motivation(道具的動機)とは、その外国語を試験やビジネスに役立てたいというモチベーションと言えるでしょう。

これらは相反する要素という訳ではなく、一人の学習者の中に共存していることもあるはずです。

現代のモチベーション理論はもっと複雑で、必ずしも上記の二項に帰せられる訳ではありませんが、外国語学習のモチベーションを考える上ではしばしば言及される古典的な理論です。

しかし英語や中国語といった言語であれば、このような視点から学習者の胸中を忖度することもできるのですが、これがフィンランド語やエストニア語となるとどうでしょう?

そのような言葉を学んでいる人がいれば、なぜその言葉を選んだのですか?と真っ先に聞いてみたいところです。どんな気持ちで学習を続けているのですか?どんな目標を持っているのですか?ということも。

さて、そんなことを考えながら黒田龍之助さんの「外国語をはじめる前に」という本を読みました。

外国語をはじめる前に (ちくまプリマー新書)
黒田 龍之助
筑摩書房
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この本は中高生対象の新書シリーズ・ちくまプリマー新書の一冊で、外国語に興味がある中学生・高校生を対象に言語学の基礎を紹介するための本です。実際、ことばに興味がある人なら立ち止まって考えてみたくなるような言語学的なトピックがたくさん紹介されています。

そして、この本の特徴は著者の教え子である大学生の声(レポート)がたくさんのっていること。例えば、カンボジア語やウルドゥー語を専攻する学生が、自分の専攻言語について自分の言葉で様々な視点から語っています。これがとてもおもしろい。

ポルトガル語専攻の学生が[ç]の発音について巧みな比喩で説明したり、ラオス語専攻の学生が自作の辞書について語ったりする、そのこだわりや熱い語り口に共感してしまうのです。

外国語は英語だけじゃないよなと思っている学生さんや、少数言語(この言い方は好きではないですが)を学んでみたいと思っている人にはおすすめの一冊です。

また多言語学習を支持する本ではいわゆる「英語帝国主義」に対する批判がなされることも多いのですが、著者の英語に対するスタンスは非常にクールです。少々長いですが引用してみます。

世間では過剰なまでに重要視され、学校では試験や成績と関係してくる英語。外国語にはいろいろ興味があるけれど、この英語だけはどうも好きになれない。そういう人もいるだろう。

だが、英語を嫌ってはいけない。

冷静になってほしい。あなたが嫌いなのは、英語ができないと人生真っ暗のように脅迫する教師や、ちょっとばかり英語ができるだけで妙に威張るクラスメートではないか。・・・(中略)・・・

大切なのは、英語で必要な情報が得られることである。本でも辞書でも、あるいはインターネットでもいいけれど、英語を読んで理解する実力がほしい。

P182

このくだりを読んで、そうそう確かに英語自体は何も悪くないのだ、と思いました。

現代の日本における英語の位置付けはどこかいびつなものではあるけれど、それは英語自体とは何の関係もないことです。一介の言語好きとしては、英語も他の言語と同じように愛すべき対象であり、英語ができればそこから他言語へのアクセスも格段に便利になるということもまた事実。過度に英語一極主義になったり、アンチグローバリズムを英語批判に結びつけたりすることなく、このように冷静なスタンスでいたいものだと思い直したのでした。

フィンランド語学習記 vol.13 − 踊りましょう

先日のフィンランド語のクラスで、宮崎あおいさんの earth music&ecology のCMが話題になっていたので、遅ればせながら見てみました。

これはどこからどう見てもカウリスマキ風の作品ですね。もしかしてパロディなのでしょうか? そのあたりはよくわかりませんが、こういう世界観は好きです。(カウリスマキって誰?という方はこちらへ)

フィンランド人の先生曰く最後の tanssitaan の発音がわかりにくく、最初に見たときは意味がわからなかったそうです。まあそれはよい(?)として、この単語はどこかで聞いたことがあるなと思い調べていたら、先日読んだ「フィンランド語のしくみ」に出ていました。

動詞の語形変化の説明でこの語が使われています。

Minä tanssin.(私は踊ります)
Sinä tanssit.(あなたは踊ります)
Hän tanssii.(彼/彼女は踊ります)

主語の人称によって、動詞が語形変化します。実際には各人称の複数形もそれぞれ独自の形を持つので、全部で6種類に。

En tanssi.(私は踊りません)
Et tanssi.(あなたは踊りません)
Hän ei tanssi.(彼/彼女は踊りません)

否定動詞(en, et, ei)を使うと、動詞は語幹の(tanssi)になります。一人称主語の minä と二人称主語の sinä は省略してもよいとのこと。省略しても動詞の形で主語はわかります。

Tanssi!(踊りなさい)
Tanssitaan!(踊りましょう)

冒頭の tanssitaan も紹介されていました。「フィンランド語文法ハンドブック」で調べてみると、この形は「受動形」と言うようです。英語の受動形とはずいぶん違いますが、なぜ受動と呼ぶのでしょう?

そのあたりはよくわかりませんが、この「〜しよう」の形は日常会話でもよく使われるらしく、こんな表現ものっていました。

Syödään paljon!(たくさん食べましょう)
Opiskellaan!(勉強しましょう)
Tavataan!(また会いましょう)

それではまた。

 

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英和辞書を読んでみる − with の場合

わからない単語があれば辞書を引く。これは当然。しかしわかる単語だって辞書を引いてもよいのです。

例えば with と聞いて、みなさんはどのような意味を思い浮かべるでしょうか?

多くの人は「〜といっしょに」という意味を思い浮かべるのではないかと思います。

このような基礎単語を辞書で調べる機会はあまりないと思いますが、あえて辞書を引いてみると、例えば次のような語義が出てきます。

  1. [対立]〜と、〜を相手に
    fight with [against] the enemy
    敵と戦う
  2. [随伴・同伴]〜と共に、〜と一緒に
    tea with lemon
    レモンティー

「ジーニアス英和大辞典」

現代では with の主要な意味は、2の[随伴・同伴]なのでしょうが、ジーニアスではあえて[対立]の意味を最初にのせています。

ちなみにジーニアスの凡例を見てみると下記の記述がありました。

語義を掲げる順序は、現代の使用頻度順を原則としながら、意味の関連・展開がわかりやすい順序となるように工夫した。

つまり with の場合、使用頻度以外に[対立]の意味を最初に持ってくる理由があったということになります。

これは種明かしをすれば簡単で with のもともとの意味が against であったという歴史的な流れに基づいているのだと思います。

一方、リーダース英和辞典では、最初に出てくるのは[同伴]の意味です。

このあたりは各辞書のこだわりが感じられて面白いところではないでしょうか。

また with といえば、柳瀬尚紀さんの『辞書はジョイスフル』というエッセイで、何と with 一語に11ページ(!)を割いている辞書というのが紹介されています。

その辞書の名前は『熟語本位英和中辞典』。11ページもの説明があるとはいえ、核となる説明はいたってシンプルです。

主なる意味は第一、合同、共同(誰と共に遊ぶなど)。(より)第二、所持、所有(金を持てる人など)。(より)第三、道具、機關(金を以て買ふなど)。

まず合同の意味があり、そこから所持の概念が派生し、次に所持したものを道具として用いるという解説の流れは非常にわかりやすいです。

この辞書の素晴らしさは、何と言ってもその日本語表現の豊かさにあります。パラパラと読んでみるだけでも、こんな風に訳すのか!という驚きがたくさんあります。

『熟語本位英和中辞典』の奥付を見ると第一刷は1933年となっています。80年も前の辞書が未だに残っているというだけで、この辞書への評価がわかると思います。

前述の柳瀬さんのエッセイでも強調されていますが、英語を身に付けるには前置詞をきちんと理解することが欠かせません。深い鉱脈が眠っているこの前置詞という分野、じっくりと辞書を読み込んでみれば、知っていると思っていた単語の中にも意外な発見があるかもしれません。

 

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フィンランド語学習記 vol.12 − 街を歩けばフィンランド語?

フィンランド語教室7週目のレポート。

今回は基本文のディクテーションからスタート。

先生がすごいスピードで文章を読み上げて行きます。

「こんなスペルだったかな」なんて考えているヒマはないので、あやふやな知識でもどんどん書いていきます。

日本語からフィンランド語へ、フィンランド語から日本語へという翻訳練習はときどきやっているものの、ディクテーションは初めて。かなり間違ったかなとも思ったのですが、答え合わせをしてみると、思いのほかよく出来ていました。

フィンランド語は基本的にローマ字読みで、音と文字の組み合わせをイメージしやすい言語なので、なんとなくこうかなあと思って書いた単語でも当たることが多いです。

これが英語となると「オフン」が often になったり「イナフ」が enough になったりする訳ですから、フィンランド語は恵まれていますね。

 

ディクテーションが終わった後は、街中で見られるフィンランド語の話題に。

あまり意識したことはなかったのですが、ファッションブランドやお店の名前などに、けっこうフィンランド語が使われているのだとか。例えば、

ehkä söpö

女性向けのファッションブランド。「たぶんかわいい」の意味だとか。たぶんでいいのかな?

otan tämän

上の ehkä söpö と同じ系列のファッションブランド。「これにします」の意味だそうです。語感がおもしろいですね。オタンタマン。

minä perhonen

こちらもファッションブランド。minäは「私」、perhonenは「蝶」の意味。動詞はないので「私、蝶」って感じでしょうか。

これはほんの一例で他にもいろいろあるようです。

今度街を歩くときはもっと注意して見てみたいと思います。今の知識ではフィンランド語かどうか識別する力はないのですが、ウムラウトの有無や単語の雰囲気(?)で少しはわかりそうな気がするのです。たぶん。

フィンランド語の隣人「エストニア語」を少しだけ訪ねてみる

Kalle Id / CC-BY-SA-3.0

フィンランド語は、北ヨーロッパの言語の中で、ひとつだけ別系統に属する言語であると言われています。

例えばスウェーデン語とノルウェー語の母語話者はおたがいの言葉をある程度理解できるらしいのですが、フィンランド語に限っては、そういうことはないようです。

そのことや文法の複雑さもあいまって「悪魔の言語」などと呼ばれることもあるフィンランド語ですが、言語的に全く孤立しているという訳ではなく、もっとも近い言葉の一つにエストニア語があります。

エストニアの首都タリンは、ヘルシンキからフィンランド湾を挟んでわずか80km。フェリーで3時間ということで買い物で訪れるフィンランド人も多いのだとか。

実際、エストニア語とはどんな言語であるのか? 何だか気になったので、フィンランド語のとっかかりに使った iPhoneアプリ「Euro Talk」のエストニア語版を購入。単語をいくつか比較してみました。

 
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全然似ていない。。。しかも[o]の上にくねくねが乗っている文字が初登場。スペイン語/ポルトガル語に見られる文字ですね。調べたところ鼻音を表すマークで「チルダ/ティルデ」と呼ぶのだそう。

フィンランド語と似ている単語はないのかなと調べていくとありました。

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「緑」など似ていない単語もありますが、おおむね似ています。これなら初見でも相手の言葉を理解できそうですね。そして数の単語はさらに似ています。

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それにしても、このように言葉が似ている隣人がいるというのは楽しいことではないでしょうか。日本語は言語系統としてほとんど孤立語であるため、お互いが自分の言葉を話してわかりあえるような関係の隣人は残念ながらいません。

しかし書き言葉に限っては漢字の使用という点で中国語は隣人と言えるかもしれません。数年前、韓国に行ったときは看板など街中の文字がまったく理解できず心細い思いをしましたが、その後、台湾に行ったときは少しは文字が理解できるので安心感がありました。

目に入ってくる文字が少しもわからないというのは、それだけでかなりストレスになるものです。

そんな訳で言葉の隣人がいるということは心強いことだというお話でした。

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