フィンランド語学習記 vol.820 − He ovat sisarukset/sisaruksia.

前回のエントリーで扱った複数主格・複数分格の使い分けについてもう少し考えてみます。

フィンランド語学習記 vol.819 − Oletteko te sisarukset?

「兄弟姉妹」を意味する単語 sisarus を使って「彼らは兄弟だ/姉妹だ」と言いたいとき、

  • He ovat sisarukset.(複数主格)
  • He ovat sisaruksia.(複数分格)

という二つの表現があることを前回確認しました。

このあたりの文法事項を再確認するため『フィンランド語文法ハンドブック』を読み直していると、次の説明を発見。

(2)主語が「分けられる名詞」であれば補語は分格

文の主語が「分けられる名詞」である場合には、何かの「部分」が話題になっていることになりますので、補語は分格となります。

Maito on valkoista.
牛乳は白い。
Tämä on tuoretta maitoa.
これは新鮮な(tuore)牛乳だ。

「分けられない名詞」は複数形になれば分けることができます。したがって、主語が複数形の場合には補語は分格になるのがふつうです。

He ovat suomalaisia.
彼らはフィンランド人だ。
Suomalaiset ovat ujoja.
フィンランド人たちは恥ずかしがり屋だ(ujo)。

「フィンランド語文法ハンドブック」P.182

そういえば「彼らはフィンランド人だ」と言いたいとき、フィンランド語では複数分格(suomalaisia)を用いると習ったことを今更ながら思い出しました。

冒頭の「彼らは兄弟だ/姉妹だ」も構造は同じ。一人一人に分けることができるので分格になるという理屈なのでしょう。

ただそれならなぜ He ovat sisarukset. という複数主格の形も許容されているのでしょうか?

さきほどのハンドブックの説明は次のように続きます。

ただし、複数形でも1つのまとまりを表すような語が主語となっている場合には、「分けられない名詞」と解釈されるので補語は複数主格になります。

Sakset ovat pienet.
そのハサミ(sakset)は小さい。
Liisan silmät ovat siniset.
リーサの目(silmä)は青い(sininen)。
Häät olivat ihanat.
その結婚式(häät)はすばらしかった(ihana)。

「フィンランド語文法ハンドブック」P.182

ここから推察するに He ovat sisarukset. という表現においては兄弟姉妹が上記のハサミや目や結婚式のように1つのまとまりとして捉えられているのかもしれません。

いずれにせよ He ovat sisarukset/sisaruksia. のように二つの形が示されているということは単一のルールで割り切れないあいまいなケースもあるということ。このあたりが言葉の難しいところでもあり、また面白いところでもあります。

 

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