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フィンランド語 /

このところ、フィンランド語教室で扱っているのが、いわゆる「複数語幹」と呼ばれる形。
この作り方が複雑で苦戦しています。
そこで今回のエントリーでは、この複数語幹の作り方を整理してみたいと思います。
複数語幹とは?
複数語幹というのは、フィンランド語の名詞・形容詞の複数格変化を作る際にもとになる形のこと。
例えば talo(家)の語幹は次のようになります。
talo(家)
[単数語幹]talo
[複数語幹]taloi
原則としては、単数語幹の末尾に[i]を付けることで複数語幹を作ります。
そしてこの複数語幹をもとに、さまざまな複数格変化を作ることができます。
|
|
単数 |
複数 |
主格 |
〜は/が |
talo |
talot |
属格 |
〜の |
talon |
talojen |
分格 |
〜を |
taloa |
taloja |
内格 |
〜の中で/に |
talossa |
taloissa |
出格 |
〜の中から |
talosta |
taloista |
入格 |
〜の中へ |
taloon |
taloihin |
接格 |
〜の表面で/に |
talolla |
taloilla |
奪格 |
〜の表面から |
talolta |
taloilta |
向格 |
〜の表面へ |
talolle |
taloille |
様格 |
〜として |
talona |
taloina |
変格 |
〜に(なる) |
taloksi |
taloiksi |
欠格 |
〜なしで |
talotta |
taloitta |
具格 |
〜を使って |
taloin |
共格 |
〜と共に |
taloine- |
*表は『フィンランド語文法ハンドブック』P.24 より
すなわちフィンランド語の複数の印は[i]なのですが、この[i]を置くことによって直前の母音に変化が起こることがあります。
今回のエントリーでは、そのルールを順番に見ていきたいと思います。
まずは複数の印[i]の前に来る母音の数で場合分けをします。
1)[i]の前に来る母音が1つの場合(例、talo)
2)[i]の前に来る母音が2つの場合(例、maa)
1)[i]の前に来る母音が1つの場合
フィンランド語には全部で8つの母音があります。これらの母音を以下の5つのパターンに分類して見ていきます。
1ー1)[i]の前に来る母音が[u][y][o][ö]のとき
1ー2)[i]の前に来る母音が[e]のとき
1ー3)[i]の前に来る母音が[i]のとき
1ー4)[i]の前に来る母音が[ä]のとき
1ー5)[i]の前に来る母音が[a]のとき
1ー1)[i]の前に来る母音が[u][y][o][ö]のとき
[i]の前に来る母音が[u][y][o][ö]のときには、それらの母音は変化しません。
karhu(熊)
[単数語幹]karhu
[複数語幹]karhui
1ー2)[i]の前に来る母音が[e]のとき
[i]の前に来る母音が[e]のときには、その[e]は消えます。
saari(島)
[単数語幹]saare
[複数語幹]saari
1ー3)[i]の前に来る母音が[i]のとき
[i]の前に来る母音が[i]のときには、その[i]は[e]に変わります。
baari(バー)
[単数語幹]baari
[複数語幹]baarei
【注】1ー2の saari は古くからのフィンランド語なので単数語幹は saare と[-e]で終わる形になりますが、1ー3の baari は外来語なので単数語幹は baari とそのまま[-i]で終わる形になります。
1ー4)[i]の前に来る母音が[ä]のとき
[i]の前に来る母音が[ä]のときには、その[ä]は消えます。
pöytä(テーブル)
[単数語幹]pöytä
[複数語幹]pöyti
ただし! 三音節以上の単語の場合は例外あり。以下の(1ー5ー2)のパターンに合流します。
1ー5)[i]の前に来る母音が[a]のとき
単語の音節の数によって変化が異なります。
1ー5ー1)単語が二音節
1ー5ー2)単語が三音節以上
1ー5ー1)単語が二音節
単語の最初の母音によって変化が異なります。
1ー5ー1ー1)単語の最初の母音が[u][o]のとき
1ー5ー1ー2)単語の最初の母音が[u][o]以外のとき
1ー5ー1ー1)単語の最初の母音が[u][o]のとき
単語の最初の母音が[u][o]のときには、単数語幹末尾の[a]は消えます。
kuva(絵)
[単数語幹]kuva
[複数語幹]kuvi
1ー5ー1ー2)単語の最初の母音が[u][o]以外のとき
単語の最初の母音が[u][o]以外のときには、単数語幹末尾の[a]は[o]に変わります。
laiva(フェリー)
[単数語幹]laiva
[複数語幹]laivoi
1ー5ー2)単語が三音節以上(語尾が[a]または[ä])
このパターンはかなり複雑で、[a/ä]が消えるものと[a/ä]が[o/ö]に変わるものに分かれます。
『フィンランド語文法ハンドブック』に書いてある原則は次のとおり。
-a/-ä で終わる3音節以上の語では、原則として名詞であれば -a/-ä は -o/-ö に変化し、形容詞であれば -a/-ä は消えてしまいます。
『フィンランド語文法ハンドブック』P.143
一方、教室では語尾の形を細かく分類し、[a/ä]が消えるものと[a/ä]が[o/ö]に変わるものを区別しました。
例えば[-la/-lä]で終わる単語の場合は[a/ä]が[o/ö]に変わるというようなルール。
kahvila(カフェ)
[単数語幹]kahvila
[複数語幹]kahviloi
ただこの部分は自分自身もまだ全貌をわかっていないので、詳細は別項へ持ち越したいと思います。
まとめ
長くなってしまったので、今回はここまで。(2)の母音が2つの場合は明日のエントリーで取り上げます。
1)[i]の前に来る母音が1つの場合
1ー1)[i]の前に来る母音が[u][y][o][ö]のとき
1ー2)[i]の前に来る母音が[e]のとき
1ー3)[i]の前に来る母音が[i]のとき
1ー4)[i]の前に来る母音が[ä]のとき
1ー5)[i]の前に来る母音が[a]のとき
1ー5ー1)単語が二音節
1ー5ー1ー1)単語の最初の母音が[u][o]のとき
1ー5ー1ー2)単語の最初の母音が[u][o]以外のとき
1ー5ー2)単語が三音節以上
2)[i]の前に来る母音が2つの場合
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