国語辞書の中のアイヌ語

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アイヌ(名)〔アイヌ Ainu= 人〕

現在、北海道を中心に住んでいる日本の先住民族。

「三省堂国語辞典 第七版」

アイヌの血を引く人は日本にまだ数多く住んでいますが、その言語であるアイヌ語を話す人の数は減少の一途をたどっています。

2009年に発表されたユネスコの消滅危険度評価では、アイヌ語は「極めて深刻(critically endangered)」のカテゴリーに分類されました。この次のカテゴリーはもう「消滅(extinct)」しかありません。

それにも関わらず、もしあなたがアイヌ語を学びたいと思えば、書店で簡単にアイヌ語の教科書を購入することができます。

 

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これは日本の書籍文化の素晴らしいところ。

ただアイヌ語を学ぶ若い人が増えたとしても、一定数の母語話者を維持できなければ、生きた言語として未来の世代へ受け継ぐことは難しいのかもしれません。

しかしもしアイヌ語が本当に消滅してしまったとしても、その痕跡は私たちが使う日本語の中に生きています。

シシャモ(名)〔アイヌ susam= 柳葉魚〕

〘動〙北海道釧路川などでとれる、小形の さかな。多く干物にして食べる。

「三省堂国語辞典 第七版」

トナカイ(名)〔アイヌ tonakkai= 馴鹿〕

〘動〙ユーラシア・北アメリカなどの、寒い地方にすむシカの一種。つのが大きく、そりを引かせるのに使う。

「三省堂国語辞典 第七版」

ラッコ(名)〔アイヌ rakko= 猟虎〕

〘動〙北太平洋にすむ、中形のけもの。形はタヌキに似て、足はひれの形をしている。毛はこい茶色。海面にあお向けにうかび、腹にのせた石に貝をたたきつけて割って食べる。

「三省堂国語辞典 第七版」

シシャモ、トナカイ、ラッコは私たちにとって馴染みのある動物の名前。

国語辞書を眺めていると、この他、あまり馴染みのないアイヌ語由来の言葉も見つかります。

コタン(名)〔アイヌ kotan〕

集落。村落。「カムイー〔=神の住む地〕」

「三省堂国語辞典 第七版」

コロボックル(名)〔アイヌ koropokkuru= フキ(蕗)の下の人〕

アイヌの伝説に出てくる小人。コロポックル。

「三省堂国語辞典 第七版」

シャモ(名)〔アイヌ shamo〕

〔アイヌから見た〕アイヌ以外の日本人。和人。

「三省堂国語辞典 第七版」

ハスカップ(名)〔アイヌ haskaop〕

〘植〙北海道にはえる落葉樹。青むらさき色の実を食べる。

「ーのジャム」

「三省堂国語辞典 第七版」

ユーカラ(名)〔アイヌ Yukar〕

アイヌにつたわる、叙事詩。

「三省堂国語辞典 第七版」

ルイベ(名)〔アイヌ ruipe〕

〘料〙こおらせたサケのさしみ。ルイペ。

「三省堂国語辞典 第七版」

こんなに多くのアイヌ語由来の言葉が国語辞書の中にあるというのは、今回調べてみるまで全く知りませんでした。

アイヌ語の未来がどのようなものになるのかはわかりませんが、日本語の辞書の中にこんな楽しい響きの言葉が生きているというのは、それだけで素敵なことだと思います。

 
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カテゴリ: 辞書/辞典/その他, 教育
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