「rain cats and dogs」の語源とは?

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大雨を表すためのこんな英語表現があります。

It’s raining cats and dogs.(どしゃぶりの雨が降っています。)

なぜ猫と犬が土砂降りの意味になるのでしょう?

今回はこの表現の語源について、調べてみました。

まずは英辞郎の解説から。

【語源】北欧神話で、猫は雨を降らせる力があり、犬は風を起こす力があると信じられていた。

『英辞郎』

真偽のほどはわかりませんが、そういう神話があるのなら、そこに由来するという説明も妥当なものなのでしょう。

続いて、語源専門のオンライン辞書「Online Etymology Dictionary」を見てみましょう。

One of the less likely suggestions is pets sliding off sod roofs when the sod got too wet during a rainstorm. (Ever see a dog react to a rainstorm by climbing up on an exposed roof?) Probably rather an extension of cats and dogs as proverbial for “strife, enmity”.

(可能性が低い説の一つは、ペットたちが嵐の間、雨にぬれた芝の屋根からすべり落ちるというもの。(むき出しの屋根に登って嵐に反応する犬を見たことがあるか?)あるいは、争いや敵対の象徴としてことわざに出てくる「猫と犬」のイメージから来ているのかもしれない。)

「Online Etymology Dictionary」

*引用部の日本語は拙訳(以下も同様)

猫や犬が雨で屋根からずるずるとすべり落ちるというのは、(かわいそうですが)ユーモラスな光景ですね。

とはいえ、語源辞書自ら less likely(可能性が低い)と言っているので、この説にはあまり信憑性はなさそうです。

続いて、Wikipedia を見てみると、何と4種類もの説が紹介されています。順番に見ていきましょう。

An “explanation” widely circulated by email claimed that in 16th-century Europe when peasant homes were commonly thatched, animals could crawl into the thatch to find shelter from the elements, and would fall out during heavy rain.

(メールで広まったある説明によると、16世紀のヨーロッパでは、小作農の家は一般に草ぶき屋根だったため、動物たちは風雨からの避難場所を求めて草の中へもぐったものの、大雨の間にすべり落ちたとのこと。)

Wikipedia「Raining animals」より

この説は、前述の「Online Etymology Dictionary」のものと重なります。

ただしこちらは屋根に登る理由についても触れていますね。とはいえ、わざわざ屋根に登らなくても、他に雨よけの方法はなかったのでしょうか? しかも結果的に屋根から落ちてますし。。。

Drainage systems on buildings in 17th-century Europe were poor, and may have disgorged their contents during heavy showers, including the corpses of any animals that had accumulated in them.

(17世紀のヨーロッパでは建物の下水システムが貧弱だったので、大雨の間に、それまでに蓄積された動物の死骸を含め、様々なものを吐き出していた可能性がある。)

Wikipedia によると、ジョナサン・スウィフトの詩にこのような情景を描いたものがあるそうです。

ただしこの説を採ると、猫や犬よりネズミなどの方が、たくさん流されているような気もするのですが、実際はどうだったのでしょうか?

“Cats and dogs” may be a corruption of the Greek word Katadoupoi, referring to the waterfalls on the Nile

(Cats and Dogs は、ナイル川の滝を表すギリシャ語 “Katadoupoi” がなまったもの。)

The Greek phrase “kata doksa”, which means “contrary to expectation” is often applied to heavy rain

(「予想に反する」という意味のギリシャ語 “kata doksa” がよく大雨を表すのに使われていることから。 )

疑い深くていけませんが、これらのギリシャ語説もどうもこじつけのように聞こえます。

他の辞書やウェブサイトも見てみましたが、結局「これだ!」という語源はわかっていないというのが現状のようです。

とはいえ、今回紹介した説は「よく考えたなあ」というものばかり。

真相はわからなくとも、いろいろ想像を巡らしてみるのはおもしろい作業なのだと思います。