「空」は何と読む?

17072201

この前、鎌倉の長谷寺へ行ったときの話。

階段を上った観音堂の中に、般若心経の中から好きな一字を選んで、石に書いて納める「一字一石経」を体験できるコーナーがありました。

般若心経に詳しい訳ではないのですが、文字を見ながら「この文字はどんな意味だろう?」と考えていると、あっという間に時間が過ぎ去ってしまいます。

みなさんなら、どの一字を選ぶでしょうか?

摩訶般若波羅蜜多心経

観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 空即是色 受想行識 亦復如是 舎利子 是諸法空相 不生不滅 不垢不浄 不増不減 是故空中無色 無受想行識 無眼耳鼻舌身意 無色声香味触法 無眼界乃至無意識界 無無明 亦無無明尽 乃至無老死 亦無老死尽 無苦集滅道 無智亦無得 以無所得故 菩提薩埵 依般若波羅蜜多故 心無罣礙 無罣礙故 無有恐怖 遠離一切顛倒夢想 究竟涅槃 三世諸仏 依般若波羅蜜多故 得阿耨多羅三藐三菩提 故知般若波羅蜜多 是大神呪 是大明呪 是無上呪 是無等等呪 能除一切苦 真実不虚 故説般若波羅蜜多呪 即説呪曰

羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶 般若心経

どれも捨てがたい字が並んでいますが、敢えて一つ選ぶなら「空」でしょうか。

この「空」という字。文脈の支えなしに読めば「そら」と読む人がほとんどでしょう。ただ実際には三通りの読み方があります。

そら[空](名)

①雲がうかび、昼はいちめんに青く見える、高いところ。

「三省堂国語辞典 第七版」

から[空]

(名)中に何もはいっていないこと。からっぽ。

「三省堂国語辞典 第七版」

くう[空](名)

①空間。空中。

④〘仏〙(心以外に)実体というものは何も存在しない、ということ。
「ー即是色」

「三省堂国語辞典 第七版」

「空」という文字には sky と emptiness の意味があるせいか、具体的なイメージと抽象的なイメージの両方が重なり合っているように感じます。

「空」は頭上に広がるものであり、また無そのものでもある。

そんな漢字のあり方というのは本当に面白いもの。

お寺に行ったら建築や彫刻や花だけでなく、そこにある文字を観察するというのも楽しみ方の一つだと思います。

 
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