「眠い」と「眠たい」の違いとは?(3)

18012201

昨日・一昨日のエントリーでは「眠い」と「眠たい」の違いについて考えてみました。

「眠い」と「眠たい」の違いとは?

「眠い」と「眠たい」の違いとは?(2)

昨日の投稿の後にもう一つだけ調べたいテーマを思いついたので、しつこく(3)に突入します。

そのテーマというのは、

「眠い」と「眠たい」の他に「〜い」と「〜たい」のペアになる形容詞はあるのか?

あるとすれば、そのペアに意味の違いはあるのか?

ということ。

国語辞書アプリの後方一致検索で拾っていくと、見つけたのは「重い・重たい」と「煙い・煙たい」の二組でした。

もっとたくさんあると思っていたので、これは意外な結果。

今回はこのうち「重い・重たい」のペアに注目します。

おもい[重い](形)

①目方が多い。

②動かしたりはたらかせたりするのが〈困難/おっくう〉だ。

③大切だ。

④〔病気・けがなどが〕ひどくて大変だ。

⑤おしつけられるような(いやな)感じだ。

⑥〔味が〕濃厚だ。

⑦〔コンピューターで〕処理や反応がおそい。

「三省堂国語辞典 第七版」

おもたい[重たい](形)

重く感じるようすだ。

「三省堂国語辞典 第七版」

今回は中核的な意味における「重い」と「重たい」の違いを知りたいので、「重い」の派生的な意味(②〜⑦)は一旦脇に置いておきます。

ここでは「重い①」と「重たい」の語釈を比較してみましょう。

単語 重い 重たい
意味 目方が多い 重く感じる

 

ここからわかるのは「重たい」が感情の言葉であるということ。例文で検証してみます。

A:この箱は重たい。

この場合は、Aさんがこの箱を重く感じており、おそらくはそのことによって困っている(運ぶのが大変)という気持ちに焦点があります。

B:この箱はあの箱より重い。

この場合は、Bさんの気持ちではなく、二つの箱の比較が主題になっています。

もちろん「この箱はあの箱より重たい」と言うこともできますが、その場合は比較だけでなく、Bさんの気持ちも浮かび上がってくるのではないでしょうか。

この「重い・重たい」のポイントを「眠い・眠たい」に重ね合わせてみると、「眠たい」も「重たい」と同じ感情の言葉なのではないか?と思えてきます。

C:今日は早起きしたのでもう眠たい。

この場合は、Cさんが何よりも眠たく感じており、文脈によりますが、今すぐにベッドに行きたいという気持ちに焦点があります。

D:今日は普段より早起きしたのでもう眠い。

この場合は、Dさんの気持ちではなく、普段と今日の比較が主題になっています。

とはいえ、文脈や声のトーンなどによっては「今日は普段より早起きしたのでもう眠い!」のように感情の言葉として使うこともできるでしょう。

結局、眠気というのは重量のように客観的に測定できるものではないので、「重い・重たい」の関係を「眠い・眠たい」の関係にそのまま重ね合わせることはできません。

それでも両者を比較することによって「眠い・眠たい」の本質にほんの少し近づいたような気はします。

 
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