Mondegreen − 聞き間違いのはなし

photo credit: final gather via photopin cc

ふと、隣からこんな話が聞こえてきます。

I work every day for better health.(私は健康のために毎日働いています。)

仕事で健康に? 訝しく思って耳をそばだてていると、こちらの聞き間違いだったようです。

I walk every day for better health.(私は健康のために毎日歩いています。)

英語には、このような聞き間違い(mishearing)を表す「mondegreen」という単語があります。

mondegreen

1. A form of error arising from mishearing a spoken or sung phrase

2. (rare) A misunderstanding of a written or spoken phrase as a result of multiple definitions.

「Wiktionary」

今回はこの「mondegreen」にまつわる話を紹介してみたいと思います。

 

mondegreen の例

mondegreen の実例として、よく挙げられるものの一つにポピュラー・ソングの歌詞があります。

◯ There’s a bad moon on the rise.

× There’s a bathroom on the right.

“Bad Moon Rising” by Creedence Clearwater Revival

「不吉な月」を眺めるよりは「お風呂場」でのんびりする方がよさそうですね。

◯ ‘Scuse me while I kiss the sky.

× ‘Scuse me while I kiss this guy.

“Purple Haze” by Jimi Hendrix

「空にキスをする」のと「男にキスをする」のでは、ずいぶんムードが違います。

◯ The answer, my friend, is blowin’ in the wind.

× The ants are my friends, blowin’ in the wind.

“Blowin’ In the Wind” by Bob Dylan

有名な「友よ、その答えは風に吹かれている」の一節が、「アリたちは友人だ」になってしまいました。

以上、3つの例をご紹介しましたが、実際にこのように聞こえるものでしょうか? 気になる方は試してみてください。

http://www.youtube.com/watch?v=rpAn1tbqDfQ

 

mondegreen の語源とは?

ところで気になるのは mondegreen という単語の成り立ちです。なぜ green なのでしょう?

mondegreen の初出は1954年。アメリカの Sylvia Wright という作家が、ある雑誌に紹介したスコットランドのバラッド(物語詩)がきっかけなのだとか。

Ye Highlands and ye Lowlands,
Oh, where hae ye been?
They hae slain the Earl O’ Moray,
And Lady Mondegreen.
高地の人々、低地の人々
ああ、あなたたちはどこに?
彼らはマレー伯を殺した
そしてモンダグリーン夫人も

 
Wright さんが子どものころ、お母さんがこの詩を朗読してくれたのだそうです。

そしてその朗読は、上記のように聞こえたそうなのですが、この4行目が実は And laid him on the green.(そして彼を芝生の上に横たえた)の聞き間違いだったというのです。

ここから mondegreen という単語が聞き間違いを表すようになったのだとか。

これはなかなかおもしろい話ですね。

こういった新語が次々に生まれてくるところが、ことばの魅力の一つなのかもしれません。