フィンランド語学習記 vol.139 − 所有接尾辞のはなし

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フィンランドで『となりのトトロ』は、Naapurini Totoro[ナープリニ トトロ]と訳されているそうです。

こんな予告編動画を見つけました。

日本語とフィンランド語の混ざり具合がおもしろいですね。

Naapurini Totoro の Naapuri は「隣人」の意味。それでは語尾の[-ni]は何を意味するのでしょう?

調べてみると、これは所有接尾辞と呼ばれているもののようです。

時折見かけてはいたのですが、きちんと用法を調べたことはなかったので、今回調べてみました。

この接尾辞の意味を明らかにするために、まずはフィンランド語の人称代名詞の属格を押さえておきましょう。

これらは英語で言う所有格(my, our, your, his, her, their)に当たる単語です。

単数 複数
一人称 minun[ミヌン]
(私の)
meidän[メイダン]
(私たちの)
二人称 sinun[スィヌン]
(あなたの)
teidän[テイダン]
(あなたたちの)
三人称 hänen[ハネン]
(彼/彼女の)
heidän[ヘイダン]
(彼ら/彼女らの)

 
これを使って「○○の隣人」と言いたいときには、次のような形になります。

単数 複数
一人称 minun naapuri
(私の隣人)
meidän naapuri
(私たちの隣人)
二人称 sinun naapuri
(あなたの隣人)
teidän naapuri
(あなたたちの隣人)
三人称 hänen naapuri
(彼/彼女の隣人)
heidän naapuri
(彼ら/彼女らの隣人)

 
ここまでは英語と同じ。ただ並べただけです。

これだけならそう難しくはないのですが、正式なフィンランド語では naapuri に接尾辞を付けて次のように言うのだそうです。

単数 複数
一人称 minun naapurini
(私の隣人)
meidän naapurimme
(私たちの隣人)
二人称 sinun naapurisi
(あなたの隣人)
teidän naapurinne
(あなたたちの隣人)
三人称 hänen naapurinsa
(彼/彼女の隣人)
heidän naapurinsa
(彼ら/彼女らの隣人)

 
例えば「私の隣人」と言いたいとき、代名詞 minun に加えて、naapuri の語尾にも[-ni]という接尾辞を付けます。

この[-ni]は「私の」の意味。つまり minun naapurini の中には「私の」を意味する標識が二回出てくるということになります。

二回出てくるということは、どちらか片方があれば所有者は分かるので、一方が省略されることもあります。

Minun Naapurini Totoro = Minun Naapuri Totoro = Naapurini Totoro

ということは「となりのトトロ」のフィン語訳 Naapurini Totoro は、 minun が省略された形だったのですね。

今までこのような仕組みを持った言語に触れたことはなかったのですが、こういった接辞を持つ言語は世界に数多くあるそうです。

所有接辞を持つ言語の例としては、ウラル語族の多くの言語(ハンガリー語、フィンランド語など)、トルコ語、アラビア語、ペルシャ語、アイヌ語などがあり、世界的には少なくない。

Wikipedia「所有接辞」より

またひとつおもしろいルールを学ぶことができました。言語の世界は奥深いですねー。