忘れん坊
先日、ある約束を忘れてしまった知り合いの人が「私、忘れん坊なんですよ」と言っていました。
忘れん坊って何だか素敵な日本語ではないでしょうか。
これは辞書にのっている言葉なのだろうか?と思い、調べてみるときちんと出ていました。
わすれんぼう[忘れん坊](名)
〔俗〕ものごとを忘れやすい人。わすれんぼ。
「三省堂国語辞典 第七版」
日本語にはこの「忘れん坊」の他にも[ーん坊]の付く言葉がたくさんあります。
辞書からざっと拾ってみました。
- あかんぼう[赤ん坊]
- あばれんぼう[暴れん坊]
- あまえんぼう[甘えん坊]
- あわてんぼう[慌てん坊]
- いやしんぼう[卑しん坊]
- おこりんぼう[怒りん坊]
- かくれんぼ[隠れん坊]
- きかんぼう[利かん坊]
- くいしんぼう[食いしん坊]
- くろんぼう[黒ん坊]
- けちんぼう[けちん坊]
- さくらんぼ[桜桃・桜ん坊]
- しわんぼう[吝ん坊]
- たちんぼ[立ちん坊]
- とおせんぼ[通せん坊]
- わすれんぼう[忘れん坊]
これらの[ーん坊]に共通する意味は何でしょう?
三国ではこの[ーん坊]という造語成分そのものも見出し語になっているので、そちらを参照してみました。
ーんぼう[(ん坊)](造語)
①困った性質の人を呼ぶことば。
「あまえー・あわてー・けちー・忘れー」
②そういうすがたやかっこう、行動(をしている人)。
「赤ー〔=赤ちゃん。赤いから言う〕・はだかー・立ちー・かくれー」
③動植物をしたしんで言うことば。
「あめー・さくらー・つくしー」
…
▽んぼ。
「三省堂国語辞典 第七版」
さきほど並べた[ーん坊]の付く言葉の多くは、上記の分類で①の「困った性質の人を呼ぶことば」に当たります。
ただ「怒りん坊」と言われると「短気な人」より柔らかい感じがしますし、「慌てん坊」と言われると「そそっかしい人」より愛嬌があるような気がします。
そういう意味で[ーん坊]というのは、私たち人間のマイナスな一面を暖かく受け入れてくれる、貴重な日本語なのではないでしょうか。
三省堂国語辞典 第七版
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カテゴリ: 辞書/辞典/その他, 教育
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