フィンランド語学習記 vol.602 − puuttua

先日のフィンランド語教室でこんな表現を習いました。

Minulta puuttuu rahaa.(私はお金がない。)
Häneltä puuttuu sisua.(彼は/彼女は勇気がない。)

フィンランド語の動詞 puuttua は「欠く、足りない」の意味。

動詞の左側に来ている minultä, häneltä は「出格」の形に、右側に来ている rahaa, sinua は「分格」の形になっています。

どうしてこういう形になるのだろう?と思い、フィンランド語の語法書『Tarkista Tästä』を調べてみました。

PUUTTUA(verbi, intransit)

puuttua + N ela/abl Takista puuttuu nappi.
Minulta puuttuu 7 markkaa.
Pojalta puuttuu kokemusta.

『Tarkista Tästä』P.110

各例文を訳してみるとこんな感じでしょうか。

Takista puuttuu nappi.
(コートのボタンがなくなっている。)

Minulta puuttuu 7 markkaa.
(私の7マルッカが見当たらない。)

Pojalta puuttuu kokemusta.
(少年は経験が足りない。)

この中の Takista puuttuu nappi.(コートのボタンがなくなっている。)という文を見てみましょう。

なくなったのは takki(コート)ではなく nappi(ボタン)なので、文の主語は動詞の右側に来ている nappi。

その nappi が動詞の左側に来ている takki からなくなっているという構造になっています。

動詞 主語
Takista puuttuu nappi
コートから なくなっている ボタンが

 

この種の文を見ると、よく順番を逆にしたらダメなのかな?と思ってしまいます。

主語 動詞
Nappi puuttuu takista
ボタンが なくなっている コートから

 

ただフィンランド語のネイティブスピーカーにとってはおそらく Takista puuttuu nappi. の方が自然なのでしょう。

改めて考えてみると、Nappi puuttuu takista. というのは英語的な語順であって、日本語の語順(感覚)に近いのはむしろ Takista puuttuu nappi. の方。

ただ外国語としてフィンランド語を学んでいると英語的な語順の方を自然に感じるというのは不思議な現象だと思います。