煮詰まる

この頃、言葉の正しい意味って何だろう?と考えることがよくあります。

言葉には意味があり、意味があるから人間同士のコミュニケーションツールとして使われる。

ただどんな言葉においても、意味というのは固定されたものではなく、時代とともに移り変わっていく。それは避けられないこと。

ある時点において「本来とは違う意味」とみなされた用法も、別の時点においては正しい用法として認められることもある。

そう考えると、言葉の正しい意味というのは、私たちが思っている以上に捉えどころのないものなのかもしれないとも思います。

例えば「煮詰まる」という日本語があります。

みなさんは普段どんな意味で使っているでしょう?

につまる 【煮詰(ま)る】

(自五)

㊀煮えて鍋(ナベ)の中の水気が(ほとんど)無くなる。

「汁が煮詰まったところで火を止める」

㊁会議などで、議論が出尽くして、結論が出せる状態に近づく。

「話合いがー」

〔問題の解決処理に行き詰まる意に用いることもあるが、誤り〕

「新明解国語辞典 第七版」

「話合いが煮詰まる」などと言うときの「煮詰まる」は本来「結論に近づく」の意味。

ただし現在では「行きづまる」の意味で使っている人も多いのではないでしょうか。

新明解ではこの用法を明確に誤りとしています。他の辞書ではどうでしょう?

☆☆につまる[煮詰まる](自五)

①煮えて水分が なくなる。煮えつまる。

②議論・交渉をかさねて、〈結論/終わり〉に近づく。

「問題が━」

③〔俗〕考えが行きづまって、頭が はたらかなくなる。

「三省堂国語辞典 第七版」

三国はもう少し柔軟で「行きづまる」の意味も〔俗〕として認めています。

この煮詰まるの例で面白いと思うのは「結論に近づく」と「行きづまる」が、ほぼ正反対の意味であるということ。

意味が移り変わるのは仕方ないとしても、真逆になってしまうのはさすがに行き過ぎだろうと思ってしまいます。いかがでしょうか?

 
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