彼はその名をつとに知られている。
この頃、本を読んでいるときに、何となくあいまいなまま理解していたことばがあればなるべく辞書を引くようにしています。
(読書のペースが落ちてしまうのが悩みのタネですが。)
この前、気になったのはこんな表現。
「つとに」ってどんな意味?と聞かれたらはっきり答えられないなということに気づいて、その場で辞書を引いてみました。
☆☆つとに[(×夙に)](副)
〔文〕
①朝早く。
②(ずっと)以前に。早くから。
「ー名高い」
③幼いときから。
「三省堂国語辞典 第七版」
「つとに」は「朝早く」という意味なんですね。おそらくそこから②③の意味が派生したということでしょうか。
これを見たときに思い出したのが枕草子の「冬はつとめて」という一節。
あの「つとめて」も早朝を意味する古語だったはずです。だとすると「つとに」と「つとめて」の間に何か関係はあるのでしょうか?
調べてみると、日国に次のような説明がありました。
つとめて 〘名〙
①前夜から引き続いた翌早朝。前夜に何か事があったその翌日の早朝。その翌早朝。…
②早朝。夜明けがた。…
*枕(10C終)一 「冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず」
補注 早朝を表わす「つと(夙)」から派生した語。同根の「夙に」が漢文訓読調であるのに対して平安朝の和文に多く用いられている。
「精選版 日本国語大辞典」
補注に「つとめて」と「つとに」が同根であるとの記述があります。
「つとめて」はすでに現代日本語からは消えてしまっていますが、「つとに」の方はかろうじて生き残っているという感じでしょうか。
ただ若い人にとってもう馴染みのない表現になっているのだとすれば、こちらもやがては消えてしまう運命なのかもしれません。
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