フィンランド語学習記 vol.673 − kaikki(2)

昨日に続いて、フィンランド語の単語 kaikki について。

フィンランド語学習記 vol.672 − kaikki(1)

まずは kaikki の全体的な意味と用法をおさらいしましょう。

kaikki

  1. (indefinite, in singular, without a main word) Everything.
  2. (indefinite, in plural, without a main word) Everyone, everybody.
  3. (indefinite, in singular and plural, as a modifier) All.

「Wiktionary」

  1. (名詞的)「すべて」の意味では単数扱い
  2. (名詞的)「みな、全員」の意味では複数扱い
  3. (形容詞的)「すべての」の意味では単数・複数扱い

昨日はこのうち1と2の区別について考えました。今日は3の用法について考えてみます。

3は kaikki を形容詞的に(後続の名詞とともに)使う場合。Wiktionary から例文を拾ってみました。

1)Kaikki sukkani löytyivät.
(すべての私の靴下は見つかった。)

2)Yhtäkkiä kaikki vesi vyöryi huoneistoon.
(突然すべての水がアパートになだれ込んだ。)

1)の kaikki は後続の sukkani が複数なので複数扱い、

2)の kaikki は後続の vesi が単数なので単数扱いであることがわかります。

(1の sukkani は所有接尾辞の[-ni]が付いているので、これだけで単複はわかりませんが、動詞の löytyivät が自動詞の複数形なので複数主格と判断できます。)

ここで思うのは、kaikki という単語には昨日紹介した分格のように複数形の格変化もあるのだから、1の kaikki は kaiket という形に変化してもよいのではないかということ。

単数 複数
主格 kaikki kaikki
→ kaiket?
分格 kaikkea kaikkia

 

と思ったら、Wiktionary にこんな注釈がありました。

Usage notes

The pronoun has also a nominative plural form kaiket which is used only in some phrases, e.g. kaiket päivät, “day after day” / “for days on end”.

これによると kaiket päivät(日々)のような定型表現においては kaiket という形も現れるとのこと。

単数 複数
主格 kaikki kaikki
(kaiket)
分格 kaikkea kaikkia

 

本来なら kaiket が文法規則通りの変化で、kaikki が例外ということになるはずなのですが、出現頻度を元に考えると kaiket を例外と考えた方が収まりがよいということなのでしょう。

これは面白い逆転現象。

結局、生きている言葉というのは「そのように使われるからそのように使われる」としか説明できない例を数多く含んでいます。そこを楽しめるかどうかが語学のポイントの一つなのかなと思いました。