フィンランド語学習記 vol.111 − 存在文のつくり方

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フィンランド語教室45週目のレポート前編です。

まずは前回習った「A olla B」構文の復習。

[参考]フィンランド語学習記 vol.107 −「A olla B」構文における補語の格変化 | Fragments

続いて存在文のつくり方を習いました。

存在文とは「〜に〜がある」という意味を表す文。英語の「there is〜.」構文をイメージしてもらうとよいでしょう。

There is a book on the table.(テーブルの上に本がある。)

同じ意味をフィンランド語で表すと、いったいどのようになるでしょうか。

Pöydällä on kirja.(テーブルの上に本がある。)
*pöytä(テーブル)、kirja(本)

冒頭の単語 pöydälla は、pöytä が格変化した形。

[主格]pöytä(テーブルは)
[接格]pöydällä(テーブルの上に)

接格というのは「〜の上に」を表すフィンランド語の格変化。語尾に[-lla/llä]を付けて表します。

ここまでは特に問題なし。

もう一つの文を見てみましょう。

Lasissa on vettä.(グラスの中に水がある。)
*lasi(グラス)、vesi(水)

冒頭の単語 lasissa は、lasi が格変化した形。

[主格]lasi(グラスは)
[内格]lasissa(グラスの中に)

内格というのは「〜の中に」を表すフィンランド語の格変化。語尾に[-ssa/ssä]を付けて表します。

また文末の単語 vettä は、vesi が格変化した形。

[主格]vesi(水は)
[分格]vettä(水は)

分格というのは、幅広い意味を表すフィンランド語の格変化。語尾に[-a/ä][-ta/tä][-tta/ttä]のいずれかを付けて表します。(*分格の意味は後述します。)

わかりやすくするため、もう一度二つの文を並べてみましょう。

1)Pöydällä on kirja.(テーブルの上に本がある。)
2)Lasissa on vettä.(グラスの中に水がある。)

1の文では kirja は主格のままですが、2の文では vesi は分格(vesi → vettä)に格変化しています。これは次のようなルールによるもの。

存在文においては、主語が数えられる名詞(可算名詞)のときは主格、数えられない名詞(不可算名詞)のときは分格になる。

ここでの分格は、グラスの中に水の「一部分」が入っているというイメージでとらえるとよいと思います。一方、テーブルの上にあるのは本の「一部分」ではありません。

ここまでを見ると、存在文をつくる際には、数えられない名詞は数えられる名詞より扱いが難しいという印象があります。

しかしこの難易度はすぐにひっくり返ってしまいます。

主語が数えられる名詞であっても、分格になるケースを二つ紹介しましょう。

3)Pöydällä ei ole kirjaa.(テーブルの上に本はない。)
4)Pöydällä on kirjoja.(テーブルの上に本が何冊かある。)
[単数分格]kirjaa
[複数分格]kirjoja

3の文では kirja は分格(kirja → kirjaa)、4の文では複数分格(kirja → kirjoja)に格変化しています。これは次のようなルールによるもの。

存在文においては、主語が数えられる名詞(可算名詞)であっても否定文のときは単数分格、また主語が複数のときは複数分格になる。

本のあるなしを話しているだけなのに一筋縄ではいきませんね。

分格のつくり方は、フィンランド語の他の格変化とは異なる独自のルールを持っているため、覚えるのがやや大変。

ただし最近習った単元ではあらゆるところに分格が登場するため、もう一度つくり方をきちんと復習しなければなりません。

分格という概念が、フィンランド語を学ぶ上での一つの鍵のように思えてきた今日この頃です。