拍手をおくる

このブログを始めてから、国語辞書を引く機会が増えました。

それは必ずしもこのブログが言語をテーマにしているからということではなく、単に文章を書くときに似たような漢字の使い分けで迷うことが多いため。

例えば昨日の記事で使った「拍手をおくる」という表現。

「拍手を送る」と「拍手を贈る」のどちらを使うべきか迷ったので、辞書を引いてみました。

おくる[送る](他五)

①〔ある経路を たどって〕ちがった場所に〈移す/届かせる〉。

「マツタケをー」

②〔ある所まで〕その人に付きそう。

「駅まで送っていく・車でー」

③出発する人を、見送る。

「友をー」

④過ごす。

「日をー・余生をー」

⑤あたえる。

「拍手をー・声援をー」

「三省堂国語辞典 第七版」

おくる[贈る](他五)

①記念・感謝・お祝い・不幸など、改まったときに、おかねや品物をわたす。あげる。

「記念品をー・詩をー」

「三省堂国語辞典 第七版」

「送る」⑤に「拍手を送る」という用例が出ているので、この問題はすぐに解決。

ただ気になるのは「拍手を贈る」という表現が本当に間違いなのかということ。

「贈る」①の語釈には「おかねや品物をわたす」とあります。

ということは「贈る」というのは何か具体的なモノを渡すときに使う言葉なのでしょうか?

しかし用例の「詩を贈る」が具体的なモノに当たるのかどうかは微妙なところ。

「贈る」の語釈中にある「記念・感謝・お祝い・不幸」というシチュエーションを考慮すると、

  • 送る=淡々と送る
  • 贈る=気持ちを込めて贈る

という使い分けが成り立つような気がしますし、それならば「拍手を贈る」という表現もアリなのではないかと感じます。

ただ一方「拍手を贈る」という表現にはどこかおしつけがましいようなニュアンスも感じます。

拍手というのは必ずしも相手に受け取ってもらうために贈る訳ではないのだから、送るの方が奥ゆかしくて良いという考え方もありそうです。

以上、一通り考えた結果「拍手を送る」の方が日本人のメンタリティには合っているという結論になりました。

 
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カテゴリ: 辞書/辞典/その他, 教育
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