フィンランド映画祭2018で『ヴァイオリン・プレーヤー』を観てきました。

渋谷のユーロスペースで開催中のフィンランド映画祭2018もまもなく終わります。

フィンランド映画祭2018

今回は『ワンダーランド』と『ヴァイオリン・プレーヤー』の二本を観てきました。

一本目の『ワンダーランド』終了後、一旦ロビーに出て休憩。それからまた同じ席へ。

この『ヴァイオリン・プレーヤー』は今回の映画祭のラインアップを見た時に一番面白そうと感じた作品だったので楽しみです。

あらすじは映画祭の公式ホームページより。

ヴァイオリン・プレイヤー
Viulisti/The Violin Player

ヴァイオリン・プレイヤーは愛情、情熱、野心、音楽についての映画である。主人公カリンは車の事故で腕に傷を負ったため、楽器を演奏する能力を失った有名なバイオリン奏者だった。そして彼女はヴァイオリンを教える道へ戻ることを選択するのだが、そこで彼女よりほぼ20歳若い学生アンティと恋に落ちる…

本作品が長編監督デビューとなるパーヴォ・ウェステルバリはフィンランド国立劇場で活躍する劇作家であり、20作品ほどの演劇を執筆し指揮も務めている。またフィンランド映画祭2011にて上映された「プリンセス」の脚本を担当。2006年、2007年と2年連続してフィンランドアカデミー賞の最優秀脚本賞を受賞している。カリンを演じるマトゥレーナ・クースニエミはフィンランド映画祭上映作品では「マダム・ヘッラ」(11)、フィンランドアカデミー賞最優秀助演女優賞受賞「水面を見つめて」(14)、「サマー・フレンズ」(15)に出演している。

今、あらすじを見て初めてこの作品が監督のデビュー作であることを知りました。デビュー作でこの完成度はすごいですね。二時間強の上映時間をあっという間に感じる物語の推進力。ジェットコースターに乗っているように気持ちを揺さぶられながらドラマの終着点に向かってぐんぐん進んでいきます。

映画の冒頭で孔子の言葉が引用されていました。フィンランド語でどんな表現だったかは忘れてしまいましたが「人には二つの人生があり、二つ目の人生は人生が一度きりだと知った時に始まる」というような内容だったと思います。後から振り返ってみると、まさにこの言葉をなぞるようなストーリーだったのかなと思います。

物語を魅力的にしているのは何といっても主人公カリンのエゴイスティックな、それでいて人間味のあるキャラクター。彼女に共感できるかどうかで、この映画を好きになれるかどうかが決まるような気がします。

人生を動かしている原動力というのは、時に個人の意志であり、時に運命と呼ばれるような外部の力でもあります。カリンは不慮の事故によって彼女が望んだキャリアを奪われますが、その後にカーリンと周囲の人々を巻き込んだ運命は、彼女が選んだものだったのか、それともままならないものだったのか。ラストシーンの彼女の表情はそんな問いを私たちに投げかけているようにも思います。

本作はそんな人生に対する問いかけと濃密なドラマを味わえる、期待に違わぬ一本。映画祭だけではなくぜひ一般公開もしてほしいものです。