ホンとフォン(2)

先日[-phone]の付く英単語を外来語として日本語に組み入れたとき、ホンとフォンのどちらで表記するのかというテーマの記事を書きました。

ホンとフォン

このテーマをもう少し一般化すると、英語の f の音をカタカナでどのように表すのかということになります。

この表記方法に関する共通のルールはあるのだろうか?と思い、調べてみることにしました。

 

NHK ことばのハンドブック 第2版

『NHK ことばのハンドブック 第2版』の「外来語のカナ表記」には次のようなガイドラインが示されています。

16(ファ・フィ・フェ・フォ)(ハ・ヒ・ヘ・ホ

原音[fa・fi・fe・fo]は次のように扱う。

(1)原音に近く書き表す場合は「ファ・フィ・フェ・フォ」と書く。

〈例〉ファン fan、フィールド field、フェルト felt、フォークダンス folk dance

(2)慣用により「ハ・ヒ・ヘ・ホ」と書くものがある。

〈例〉ヘッドホン headphone

〈注〉「ファ・フィ・フェ・フォ」の発音は原音のような歯と唇を使った発音でなく、両唇を使った日本語としての発音で差し支えない。

NHK放送文化研究所編『NHK ことばのハンドブック 第2版』P.227

ここで示されているのは、原則としては「ファ・フィ・フェ・フォ」と表記するというガイドライン。

一部、慣用表現として「ハ・ヒ・ヘ・ホ」も認めるという扱いになっています。

 

内閣告示第二号「外来語の表記」

1991年の内閣告示第二号「外来語の表記」には次のようなガイドラインが示されています。

5 「ファ」「フィ」「フェ」「フォ」は,外来音ファ,フィ,フェ,フォに対応する仮名である。

〔例〕 ファイル フィート フェンシング フォークダンス

バッファロー(地) フィリピン(地) フェアバンクス(地) カリフォルニア(地)

ファーブル(人) マンスフィールド(人) エッフェル(人) フォスター(人)

注1 「ハ」「ヒ」「ヘ」「ホ」と書く慣用のある場合は,それによる。

〔例〕 セロハン モルヒネ プラットホーム ホルマリン メガホン

注2 「ファン」「フィルム」「フェルト」等は,「フアン」「フイルム」「フエルト」と書く慣用もある。

文部科学省ホームページ「外来語の表記」より

こちらもさきほどの『NHK ことばのハンドブック 第2版』と同じく、原則としては「ファ・フィ・フェ・フォ」、慣用表現として「ハ・ヒ・ヘ・ホ」を認めるというガイドラインになっています。

ここでは「ハ・ヒ・ヘ・ホ」を用いる慣用表現として次の5つの単語が例示されています。

セロハン モルヒネ プラットホーム ホルマリン メガホン

これを試しに「ファ・フィ・フェ・フォ」で表記してみると、こんな感じに。

セロファン モルフィネ プラットフォーム フォルマリン メガフォン

個人的な感覚ではモルフィネ、フォルマリンの表記にはやや違和感あり。その他はありかなという気がします。

いずれにせよ f →「ハ・ヒ・へ・ホ」というのはそれなりに歴史のある外来語に見られる表記であって、これから生まれる外来語には通常「ファ・フィ・フェ・フォ」を当てることになるのでしょう。

だとすると短縮から生まれたという例外的な事情があるにせよ、スマホのように最新のテクノロジーに「ホ」を使うというのは非常に珍しいケースなのかもしれません。

 

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