『熟語本位英和中辞典』で北欧の国々を調べてみる

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久しぶりに書棚から『熟語本位英和中辞典』を引っ張りだして、思い付くままに好きなページを読んでいます。
この『熟語本位英和中辞典』は、明治・大正時代の英語学界の巨人、斎藤秀三郎先生が独力で書き上げた英和辞書の古典。
奥付を見ると第一版の発行は1933年3月15日。今から80年前の辞書ですので、語義は基本的に旧漢字・旧仮名遣いで書かれています。
そんな昔の辞書で、北欧の国々はどのように紹介されているのか調べてみることにしました。
Norway[nɔ’ːwei]【固名】諾威。
ノルウェーは漢字表記をすると「諾威」。
この辞書が出た頃はまだ漢字表記の方が一般的だったんでしょうね。
Sweden [swíːdn]【固名】瑞典。
スウェーデンは漢字表記をすると「瑞典」。
Finland [fínlənd]【固名】露西亜の西北部にある獨立共和國。
フィンランドはさきほどのノルウェー・スウェーデンと異なり、説明的な語義になっています。
フィンランドという国がそれだけマイナーだったということなのでしょうか?
真偽のほどはわからず。いちおう「芬蘭」という漢字表記はあるんですけどね。
Denmark[dénmɑːrk]【固名】丁抹國。
*Something is rotten in the state of Denmark. 何か間違つてゐる。
デンマークは漢字表記をすると「丁抹」。それはよいとして、気になるのはその次の例文。
調べてみると、これはシェークスピアの『ハムレット』に出てくる台詞。ハムレットはデンマークの王室が舞台になっています。
ただし慣用句として使われるときには、デンマークそのものに特に意味はないようです。
Iceland[áislənd]【固名】氷國。(-moss, -lichen)[植物]一種の苔、依蘭苔(食用)。
アイスランドは漢字表記をすると「氷國」。これはわかりやすいですね。
その隣の Iceland moss というのは何だろう?と思い調べてみると、これは「エイランタイ」という苔の一種。
食材としてだけでなく、生薬としても利用されているようです。
以上、今回は1933年初版の『熟語本位英和中辞典』で北欧の国々を調べてみました。
この80年で北欧というのは、私たちにとってぐっと身近な存在になったのでしょう。
なにせ、フィンランドが「露西亜の西北部にある獨立共和國」だったくらいなのですから。
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12月 11, 2014 @ 20:30:50
こんにちは!
斎藤和英大辞典しか知りませんでしたが,斎藤秀三郎さんはこんな素晴らしい辞書も作ってらしたんですねぇ.こういう辞書が主流だったら良かったのに…,なんて思ってしまいました.
Muuten,トナカイさんの好物がハナゴケという話しをお聞きになったことがありますか?それでは,ハナゴケはコケではないというのはどうでしょう.ハナゴケは地衣類という菌類と藻類の共生生物なんです.lichenは地衣類のことなので気になってWikipediaを見たんですが,やはりエイランタイも地衣類でコケではないようです.
1933年の辞書にそんな細かいこと噛みついてもしょうがないんですが,地衣類ってなんとなく不思議ちゃんな感じがして好きなのでこだわってしまいました.飛躍しすぎだけど種から生まれるニョロニョロにつながる感じがするかななんて(うわ,恥ずかしい).m(_ _;)m
12月 14, 2014 @ 13:11:12
Ohikulkijaさん
『熟語本位英和中辞典』は、読んで楽しめる素晴らしい辞書だと思います! ただ今の時代、一人で辞書を執筆するということがそもそも現実的ではないんでしょうね。
ハナゴケについては、全く存じませんでした。「○○ゴケ」のような名前が付いていても苔類ではないこともあるんですね。共生生物というカテゴリーもなんだかすごいなあと思います。植物の分類は難しい!
それにしてもニョロニョロはそもそも何者なんでしょう?